税金は利用国で払いましょう。最低税率導入とGAFAの課税逃れの穴塞ぎでG20がタッグ

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税金は利用国で払いましょう。最低税率導入とGAFAの課税逃れの穴塞ぎでG20がタッグ
利用者数(上)は各国分散、売上(下)は低税率のアイルランドに一極集中。税金のとりっぱぐれは各国共通の悩み Image: AFP via edn HUB

報復にぶるぶる震えながら、みんなで大鉈を手に。

GAFAなどのIT大手が税率の低いアイルランドやルクセンブルクで売上を計上して課税逃れしている件がG20 福岡で話し合われ、どんなに節税されてもとりっぱぐれのないデジタル最低税率を決めてみんなで取り立てよう、おー!と各国財務大臣が暫定合意に達しました。

Reutersが入手した草案には、1)多国籍企業にも課税する、2)税逃れする多国籍企業には「国際最低税率」を課する、という2本柱が盛り込まれています。つまり、

現地法人がない国でも物品・サービス利用国同士で課税権を分担するものと1本目の柱で定め、それでもなお低税率国やオフショア租税回避地で利益を計上する不届き者の会社には、2本目の柱で各国が合意した国際最低税率を課する

という内容です。ネット会社にはまさにダブルパンチ。ただ細かいところは調整の難航も予想され、Finantial Timesは次のように書いています。

G20の会合ではさまざまなデジタル課税の進め方が検討された。たとえば「ノンルーティン」利益を計算して課税する案、もうひとつは従来と同じ方式で利益を計算したうえで別の国々に割り当てる案、さらには売り上げの「ベースライン利益」を各国が設定するという案も出された。

また、物品販売のようなわかりやすいものはともかく、広告売上やデータ回収による利幅などは新たな算出規則が必要とも指定していますよ。

デジタル最低税率は、EUで2年前から協議されてるんですけど、スウェーデンやアイルランドが「企業誘致しづらくなる」と反対しているのをはじめ、「トランプが米大手への宣戦布告だと怒ってる」、「EUだけにらまれると後が怖い」、「世界と足並み揃えたほうがいいんじゃ…」という穏当派の意見もあって今年に入ってからは暗礁に乗り上げています。で、しびれを切らしたフランスが世界年商7.5億ユーロ(約950億円)以上の全IT企業一律に、デジタル広告・個人情報販売などの売上に対し3%のデジタル税を課することを決め、英国も来年から2%課税する動きを見せています

もちろん面白くないのはIT大手の本家アメリカです。スティーヴン・ムニューシン財務長官はこうした仏英の動きを「米国は極めて憂慮している」と発言。米企業の狙い撃ちであり、二重課税の恐れもある、と言ってますよ...。

G20の動きについては「一枚岩の合意」がなされたと語り、「この合意を土台に、実践の細かい点を詰め本格合意を話し合わなくてはならない」(Reuters)と一定の理解を示しているようですけどね…。英仏両国の財務大臣も、G20レベルの税制が導入されるなら俺たちのGAFA税はひとまず棚上げにしてもいいと言ってるそうなので(Finantial Times)、これからは日本、インド、シンガポールまで巻き込んだG20が話し合いの主戦場になるそうな気配です。果たしてタックスヘイブンの扉はゴゴゴゴォオオと閉まる…のかな。

Source: edn HUB, Reuters, Finantial Times, France24, BusinessInsider