ホエイでもソイでもないけどね!
アウトドアブランド「THE NORTH FACE」がブリュード・プロテインを使用したTシャツを2019年8月下旬に予約限定発売すると発表しました。その名も「Planetary Equilibrium Tee」。
Planetary Equilibrium Teeの裾には栄養成分表示(Nutrition Facts)を模したデザインがあって、生地に使われている成分が表示されています。82.5%がセルロースで、17.5%がプロテインでできている、と。でも、この17.5%のプロテインは、運動のあとに食べるために入っているわけじゃありません。
アウトドアウェアやスポーツウェアの多くには、ポリエステルやナイロンなどの合成高分子材料が使用されていますが、原料の石油には枯渇の可能性があるとともに、環境負荷も高くなっています。THE NORTH FACEはより持続的な資源への転換を考えており、そこで注目されたのが人工的に合成されたタンパク質(Protein)だったのです。
Planetary Equilibrium Teeは、タンパク質素材を用いて作られ、実際に発売される初のTHE NORTH FACE製品というわけです。
新素材「構造タンパク質」
THE NORTH FACEと共同で素材を開発している企業「Spiber」は、このタンパク性の新しい素材のことを構造タンパク質(ブリュード・プロテイン)と呼んでいます。毛や爪を構成するケラチンや、骨や皮膚などを構成するコラーゲンなども構造タンパク質と言えるんだとか。その特徴は…
構造タンパク質は、ほぼ無限の組み合わせの中から目的に応じてデザイン・選抜された構造タンパク質であり、微生物による発酵プロセスで生産されます。Spiber独自の技術により、多種多様な特性や形態の材料を設計することが可能です。
タンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状につながった生体高分子。アミノ酸の組み合わせはほぼ無限のため、組み合わせを変えることで多様な機能や特性をもったタンパク質を生み出せます。Planetary Equilibrium Teeに用いられている構造タンパク質も人工的に作り出されたものです。Spiberの資料を見るに、微生物に遺伝子操作を加えてとにかくいろんなタンパク質を作らせ、その中からニーズに合った性質を持ったものを選ぶ、といったアプローチで狙ったタンパク質を得ているようです。
Spiberは査読論文を16本学術誌に載せ、多数の特許を取るなど、相当ガチめのテック企業です。そういった企業の技術力が服という当たり前のアイテムに下りてくるというのは熱いものがあります。
すでに思うままのタンパク質素材が作れる
Planetary Equilibrium Teeにはどんな特徴があるのかというと…特別な機能はなく、見た目もザ・Tシャツ。
生地も一般的なものと区別がつきません。
「ヘビーウエイトな生地でありながら、しっとりとした滑らかさが混在する独特な質感を実現」するのを狙ったそう。
最初に取り上げた栄養成分表示は、生物圏において再資源化が可能であることを示唆しているそうです。セルロース82.5%、プロテイン17.5%という配合比率も「生態系バランスをベースに動物資源に頼らないという意図を込めた数値」とのこと。驚きなのは、メッセージを込めるために素材配合比率を定めてしまっても、製品として違和感ないようにできるレベルまでタンパク質素材関連の技術が高まっているということです。となれば…
あのMOON PARKAが今年発売へ
以前プロトタイプが発表されていたタンパク素材アウタージャケット「MOON PARKA」が今年11月に発売されるとのアナウンスがありました! そりゃそうです、THE NORTH FACEのホームグラウンド、高機能アウトドアウェアでの実戦投入がきますよね。
やばい、これは期待大。なにせ、有力アウトドアウェアブランドであるTHE NORTH FACEの新製品、しかも「多種多様な特性や形態の材料を設計することが可能」なSpiberの新素材を用いるのです。性能マシマシ路線か、それとも従来のハイスペックがお安く路線か。
どうあれ、構造タンパク質素材が服という身近なアイテムを今後どのように進化させていくか、非常に楽しみになりました。