地方創生が叫ばれる昨今、プロスポーツの世界は大きな盛り上がりをみせています。地域に密着したチームのホームスタジアムが、熱狂的なファンで埋まる光景はもう珍しくありません。

しかしその熱狂の裏には、試合以外にもさまざまなコミュニケーションが隠されていることをご存知でしょうか。

IBMのWebメディアMugendai(無限大)では、サッカーJリーグの人気チーム清水エスパルス(以下エスパルス)をサポートするスタッフが登場。熱狂的なサポーターをつくりだす、デザインとテクノロジーの仕組みとは。

悲観的な未来へのシミュレーション。コミュニティ機能を回復する地域スポーツ

インタビューに登場していたのは、エスパルスのクリエイティブディレクションを手がけるTakram代表の田川欣哉さんと、IBMでスポーツ事業を担当する岡田明さん

同クラブは2018年、「SHIMIZU S-PULSE INNOVATION Lab.」というプロジェクトを始動しました。これは、ファンサービス向上クラブの運営強化を目指したもので、スタジアムで得られる顧客体験の設計、地元企業との関わり強化など、さまざまな観点からスポーツのイノベーションに取り組んでいます。

熱いサポーターの裏に、緻密な計算あり。デザイナーが思い描く、スポーツとテクノロジーの関係
Image: Mugendai(無限大)

世界でも有数の美術系大学である、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの名誉フェローであり、デザインエンジニアという肩書きを持つ田川さん。あまり聞き慣れない職種ですが、田川さん率いるTakramは、さまざまな企業と「未来を予測する」デザインプロジェクトを実行しているそうです。

その過程で20年後の日本の姿を思い描くうち、「人口減少が加速することで家族や会社といったコミュニティーが力を落としていく」未来が導き出されたといい、エスパルスのプロジェクトに参画したのも、そうした危機感が大きな影響を及ぼしているそうです。

これまでは、サラリーマンという働き方が一般的で、会社が家族のような存在でもありました。しかし、働き方が多様になった今、会社と個人の結びつきは希薄になっていきます。所属感を得られる場所がこれまでより減っていくでしょう。

そういった20年後の状況を考える中で、サッカーは大きな可能性を持っています。週に一度、数千人から数万人の人たちが集まって一喜一憂し、地域が一体となる。これは希薄化する社会のコミュニティー機能を、大規模に補完するメカニズムと言えます。

まだまだ成長の余地あり。テクノロジーの力で超える、距離の壁

コミュニティの活性化に、大きな可能性を秘めるサッカー。それをさらに加速させるのに必要なものこそ「テクノロジー」だと、インタビューでは語られています。

岡田さんいわく、同社が具体的に推進している施策は二つ。一つはスマートフォンアプリを通じてファンとのつながりを強めていくことで、まだまだ少ないサッカーの情報を定期的に届ける仕組みをつくりたいと語ります。

もう一つが、販売管理システムの改善。誰がいつスタジアムに来場し、どんなグッズを買ったのかといったデータを整理し、CRM的な仕組みを導入することで、顧客満足度の上昇を図るといいます。

熱いサポーターの裏に、緻密な計算あり。デザイナーが思い描く、スポーツとテクノロジーの関係
Image: Mugendai(無限大)

地域で熱狂的に受け入れられても、距離的に離れるほど接点が薄くなってしまいがちなプロスポーツチーム。今後は「地元以外の人を取り込むこと」が大きな課題だと指摘し、田川さんは以下のように語っています。

日本では毎年着々と人口減少が進んでいき、10年後に10%ほど人口が減ります。(中略)この現象に各クラブチームが耐えるための解決策はいくつかしかありません。その一つが地域クラブに全国からファンを集めること。そして、この実現はデジタル抜きには語れません。

日本のサッカークラブは欧州と比べてまだまだ成長の余地があると、テクノロジー面での可能性を指摘する岡田さん。

一方田川さんは、近年、ファッションデザイナーや関係者がスポーツ界に参入している例を挙げ「プロのデザイナーがクラブチームに入って支えていく取り組みは、今後もっと増えていく」と語っています。

チームとファン、そして地域がただ漠然とつながるのではなく、仕組みを「デザイン」することの重要さがよく分かりますよね。

他にも、ブランディングとイノベーションに関わる話題が満載のロングインタビュー。デザインやマーケティング関係者以外も楽しめるその続きは、Mugendai(無限大)よりお楽しみください。


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Source: Mugendai(無限大)