クイーンのブライアン・メイが語る、小惑星迎撃ミッション「DART&HERA」

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  • author 岡本玄介
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クイーンのブライアン・メイが語る、小惑星迎撃ミッション「DART&HERA」
Image: European Space Agency, ESA/YouTube

映画『アルマゲドン』が現実にならないために。

イギリスが生んだロックバンドのクイーン。彼らと宇宙には、とある繋がりがあるんです。それは、ギタリストのブライアン・メイが宇宙工学博士だということ。彼はバンド活動のために研究を一時ストップしていましたが、2007年に研究を再開、論文を書いて博士号を取得している、ロック界でも珍しい学者肌の人物なのです。

そのブライアン・メイが、二重小惑星ディディモスの地球に追突する可能性と危険性、さらには人工衛星をぶつけて、その衝突を回避しようという試みについて語っています。

Video: European Space Agency, ESA/YouTube

二重小惑星ディディモスについて

メイいわく、「ディディモスは山程の大きさの天体で、さらにギザのピラミッド大の巨岩がその周囲を回転しているようなものだ」とのこと。その小さい方はディディムーンと呼ばれる、直径750mのディディモスにとって幅160m程度のなのですが……もしそれが地球に落ちれば、かつて恐竜が絶滅したほどの衝撃になってしまうのです。

小惑星の衝突と偏向の評価(AIDA)ミッション

ディディモスについては、世界中の学者たちが何年も研究を重ねており、いくつもの理論が打ち立てられています。その軌道を逸らす任務は、「Asteroid Impact and Deflection Assessment(AIDA)」と呼ばれており、人工衛星をぶつけることで小天体の軌道が変わるかどうかのテストを行ないます。

それにはまず、NASAが秒速6km以上という速さで、ディディムーンに人工衛星「DART」を衝突させます。次いでESAの「HERA」が、「DART」衝突後のディディムーンに到着し、衝突で作られたクレーターをマッピングして天体の質量を計測したのち、小さな箱型衛星を送り出し、軌道が逸れたかどうかをチェックするのです。

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Image: European Space Agency, ESA/YouTube

打ち上げと到着はいつ?

NASAいわく、小惑星に衝突する「DART」はSpaceXのファルコン9ロケットに積まれて2021年7月下旬に打ち上げられ、地球から1,100万km地点にディディモスが来る2022年9月下旬に体当たりする、とあります。

ESAによると、クレーターをマッピングルする「HERA」がディディモスに到着するのは2026年の予定だそうです。ディディモスは高速で回転する天体で、その速さは2時間で1回転するほど。「DART」の衝突は軌道だけでなく、その回転にも何か影響を与えるかもしれませんね。どんな発見があるか楽しみです。

もし小天体が地球に落ちると?

2013年にロシアのチェリャビンスクに落ちた十数mの隕石ですら、建物の損壊やけが人が多数出るなどの被害がありました。それを踏まえると、(大気圏で多少は燃えて小さくなるかもしれませんが)160mの天体が地球に落ちたら都市がひとつ壊滅するくらいの被害になるかもしれませんよね。

少しずつ検証を重ねて、リアルな『アルマゲドン』が起こらないよう、我々の知らないところでこうした努力が行なわれているのです。

Source: YouTube, Wikipedia (1, 2), NASA, ESA