フィニッシュ技がない…んだよね…。
見よ、ガジェットファンよ! 最高のパーツを集めたぞ! そんなOPPO(オッポ)の意気込みを感じるスマホが、ついに日本で発売されます。グローバルで4月にお披露目された「OPPO Reno 10x Zoom」です。
10x Zoomと名が付いていることからわかるように最近トレンド?となっているペリスコープ式の高倍率ズームを採用したモデル。焦点距離にして16-160mmです。10倍というのはOPPO独自の「ハイブリッドズーム」方式での倍率で、定義は800万画素を下回らない画像が撮影できるズーム域のこと。光学性能では最大で130mmなので、以降は電子ズームを使っていることになります。
なおかつ、画面のデザインにもこだわっていて、ベゼルに対するディスプレイの面積が93.1%という圧倒的な占有率で、ノッチを過去のものとしています。
OPPO Reno 10x Zoom
これはなに?:OPPOの新フラッグシップモデル。グローバルでは10倍ズームじゃないモデルもある
価格:9万9880円(税別)
良いところ:キュンキュンのスペック、未来感のある格納式フロントカメラの個性
残念なところ:僕らはズームに期待しすぎていた
今回は、発売に先駆けて端末を触る機会があったので、僅かな時間ですがこのReno 10x Zoomをいじくり回してみました。高倍率ズームと聞くと、やはりHuawei(ファーウェイ)の「P30」シリーズが思い浮かびますが、このOPPOはどうでしょう?
結論から言えば…ズーム以外にも思わず唸らせる機能やスペックが揃っていて、数値で見ればすごく良い端末です。でも、「君だからいいんだ!」ってどこか言い切れないのよね。スター性って難しい。
見よ、このフルスクリーン!
フロントの迫力・表現としては、ある種の極まりを見せています。
画面は6.65インチ有機ELで解像度が2,340×1,080px、そして画面占有率は93.1%。目に見えるものは、ほぼほぼ画面です。
このRenoの前身となった「Find X」の頃からそうでしたが、もはやスマホの前面にはフロントカメラのためのノッチやパンチホールなどは必要ないのです。スマホの前面は情報を得るために必要な領域であり、デザインとアイデアで排除できるものなのだ。という、強いこだわりを感じさせられます。
えっ、フロントカメラないの?
って思われるかもしれませんが、はい。画面にはありません。でも、ちゃんと備わっています。ごめん、一休さんトンチみたいな答えになってしまいましたね。フロントカメラはこちらです。
「呼んだ?」
とばかりに必要なときに端末上部からせり出してきます。最近はこうしたへんたいてきフロントカメラ搭載機もチラホラ見かけるようになりましたね。この最新デジタルテクノロジーの集合体に、物理式なギミックをミキシングするというアプローチは、ロマンしか感じません。控えめに言っても最高過ぎます。
まぁ、でも実際のところ起動の速さやら、使い勝手どうなの?って思いますよね。
ほかの機種は知りませんが、ことRenoに関しては気にならないレベルです。たとえばRenoのロック解除に顔認証をアサインしている場合、スリープから解除するたびにこのギミックが発動するのですが、カメラが出ている最中にすでに認証が完了してアンロックされるのです。この端末の前身となった「Find X」も高速でしたが、体感的にはそれを上回っています。
ちなみに、落下を自動検出してカメラを自動でしまって保護してくれる機能もあります。
大人ガジェットの色気を出す。ツルテカのガラスボディ
背面はツルテカの高級感あるガラスボディで大人の色気。ラウンドエッジ構造になっていて、端末のサイズのわりにはしっかりと握れる印象です。
望遠カメラがペリスコープ式であり、さらに最近では珍しいカメラがフラットなデザインゆえ、端末の厚みは9.3mmとそれなりにあります。重量も215gとずっしり詰まっている感があります。
どのくらい重いかというと、デカいほうのPixel 3、「Pixel 3 XL」ですら184g、同じペリスコープ式の「Huawei P30 Pro」でも192gと、Androidデカ端末勢の中でもトップクラスのデカ重さです。
でも、この重厚感は「THEガジェット」オーラを漂わせていて、iPhone XSシリーズ発売日に迷わず「iPhone XS Max」を選んだデカ端末LOVEな僕としては嫌いになりきれません。なお、デカくて人を選ぶと言われている「iPhone XS Max」ですら208gです。Renoには敵いません。
唯一、デザインで不満を言わせてもらうならば、この四隅のカーブでしょうか。せっかくだったら、角のアールに沿って画面をレイアウトすべきだったのではないか?と、ね。
まさに重箱の隅をつつくような細かなところだけど、こういったところが気になっちゃうのは日本特有の気質ってやつなんですかね?
トレンドになりつつある画面埋込み型の指紋認証も搭載
ここで勘の良い方は気づいたかもしれませんが、背面に指紋認証センサーがないということは…画面下部に、画面埋込み型の指紋センサーが備わっています。最近では、ミドルエンドの端末にも採用され、トレンドになりつつある機能。また、普段iPhone使っている身からしたら、羨ましくてたまらない憧れ機能のひとつです。
でも、画面での指紋認証って…ちょっとコツが必要ですね。
ポケットから取り出して指を添えると、反応しないことが何度かありました。上の写真で表示されている、指紋アイコン付近にしっかりと指を置く必要があります。物理ボタンじゃないので、手探りでセンサーをタッチして、認証させるという動作には不向きで、思っていたほどアンロック動作としてスマートじゃない。憧れてたけど、思ってたより便利じゃなかった!というのが今の本音ですね。
まぁ、指紋で開かなかったとしても、顔認証すればいいんです。指紋も顔もどっちも使えるしね!
カメラはかなりズームできるも…AIもうちょっと頑張れ
さて、お待ちかねのカメラ性能ですが、まずは作例を見る前にカメラの倍率表示について説明します。これも一休さん的な話になってきます。
まず、Reno 10x Zoomは3眼です。
超広角:16mm|8MP(F2.2)
標準:26mm|48MP(F1.7 OIS)
望遠:130mm|13MP(F3.0 OIS、ペリスコープ式)
そしてRenoが謳う「10倍ズーム」とは、広角レンズを起点とした倍率で計算されています。一方、カメラアプリ上に表示されるズーム倍率は標準レンズを起点とした倍率となっており、アプリ上で「6X」と表示される点がこのカメラが謳う10倍となります。
まるで、キャリアの料金プランのようなややこしい話になってきましたが、つまり広角から計算しているので自ずと望遠の倍率が上がるという数字のマジック。それを踏まえて作例をどうぞ。
広角
1X(アプリ上で表示)
2X
6X(広角レンズ起点で10倍)
10X
60X
広角
1X
2X
6X(広角レンズ起点で10倍)
OPPOによると、アプリ上の6X(広角レンズ起点で10倍)の時点での画素数は1200万画素程度だそうですが、仕上がりはやはりソフトな印象です。なんというか、AIによる補正がこなれていない感じ。
自然な風合いでこれはこれでいいんですけど、最近の端末に多いキレッキレな補正に目が慣らされている昨今では、若干物足りなさを感じてしまいます。いやぁ、慣れって怖い。
デジタルズーム利用した最大ズーム率は60倍。ライバルである「Huawei P30 Pro」を上回る数値なものの、仕上がった画像は荒れ気味で、デジタルズーム感が出ちゃってこれはちょっと厳しめ。実用範囲は10Xまでといった感じかな〜ってのが本音です。
いや、がっかり目に受け取られるかもしれないけど、スマホで10倍実用できるってスゴイんだけどね。ズーム時に手ぶれ補正もクイックイ利きますし。
ただし、動画撮影時に利用できるのは標準カメラ(1X〜デジタルズーム10X)だけという点にMAX注意です。ペリスコープの望遠カメラはなぜか動画撮影では使えないのです。いやいやいや、何でです? この仕様ナゼナノ!なんでだよぉぉぉぉぉぉ〜〜ん!
子供の運動会で、望遠レンズの一眼+ビデオカメラという、くっそ重くて大変で暑い二刀流でヒィヒィ歩き回る苦行から解放される!と思って期待していたのに、この仕打ちは悲しい。うぉぉぉぉん…。
標準倍率での作例1
ポートレートモード
マクロ
メインカメラのセンサーは4800万画素、ソニーの積層型CMOSセンサー「IMX586」を利用しています。
さすがというべきか、これだけの写真が残せるなら、くっそ重い一眼持ち歩かなくていいのかもしれないという気にさせてくれます。マクロ撮影も石の肌を見事に表現していて、良きかな!
当然、AIによる被写体認識機能も搭載されていますが、見分けられる被写体の数はそこまで多くない印象ですね。
夜景1
夜景2
夜景3
夜間モードは最近のトレンドを抑えた映える明るさ(いずれもf1.7標準カメラ)。2回ほどシャッター音が響くので、HDR合成しているのだと思われます。
スマホの画面でみると明るくていいカンジにキレイなんですけど、実は拡大するとちょっと解像感に欠ける印象です。インスタなどのSNSに貼る分にゃ、ぜんぜん問題ないレベルなんですけどね。
「最新●●」が詰まっているけど、あと1手詰めたい
最後に基本的なスペックを。
・サイズ
162×77.2×9.3mm / 215g
・画面
6.65インチ有機EL(解像度2340x1080・387ppi・画面占有率93.1%)
・SoC
Snapdragon 855
・RAM
8GB
・ROM
256GB、microSDカード対応(SIMスロット2を利用)
・OS
ColorOS 6.0(Android 9.0ベース)
・アウトカメラ
望遠13MP(F3.0 OIS、130mm)、超広角8MP(F2.2、16mm)、標準48MP(F1.7 OIS、26mm)、レーザーAF
・インカメラ
ポップアップ式フロントカメラ 広角16MP(F2.0、26mm)
・バッテリー
4,065mAh(USB-CでのVOOC3.0 急速充電対応)
・認証方式
画面埋め込み指紋認証 / 顔認証
・SIMカード
nanoSIM×2(DSDV対応、VoLTEはauとY!mobile対応・SIMスロット2はmicroSDカードと排他利用)
・発売日
7月12日
・価格
9万9880円(税別)
スナドラ855でRAM 8GBとか、現状のスマホシーンのトップを走れる仕様です。
加えて圧倒的なサイズの画面に、先進的なポップアップ式カメラ、画面埋め込み式の指紋認証センサー、そしてペリスコープ式の高倍率ズームカメラなどなどが詰まっている、トレンドテクノロジーの合体超人といえる端末です。
構造的な目新しさや、心昂ぶるメカメカしさもグっとくるものがありますし、今後の「一般的なスマホ」の可能性のひとつとして注目すべき端末だと言えるでしょう。
ただ、最強の端末なのか? 正直にいうと、もうひと押しが欲しい!が本音なのよね。
国内ではニーズの高いFeliCaに対応していませんし、その構造上からか防水機能もありません。また、メインウェポンたる高倍率ズームも、もうちょっとシャープさがほしいところ。
こうして、各要素は優等生であるのですが、同じ価格帯の端末と迷ったときの決定打が…足りません。
同じ10万円クラスの価格帯で、他社からも高画質・高性能を謳うライバル機が多々出現しています。ゆえに、僕は「お前しか選べない!」という、フィニッシュホールドも飛び出して欲しかったのです。
Source: OPPO