エンタメGO

アニメ「YU-NO」と「みだらな青ちゃん」「消滅都市」は楽曲も良い!

テレビアニメには、これまで様々なジャンルが生まれ、流行したりいつの間にかなくなってしまうものもある。例えば最近は“異世界転生”が大盛況。正直「またか」と思うこともあるが、つい観てしまう魅力は侮れない。一時の流行りかと思いきや、中には何十年にも渡って残るジャンルもある。

本企画では、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介。その年、そのクールに人気だったジャンルや“あるある”などを、アニソンを通じて思い出すのもまた一興だ。それでは、2019年4月期の注目ソングをみていこう。

この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO OP主題歌「この世の果てで恋を唄う少女」(96kHz/24bit)

1996年に発売された原作の同名SFアドベンチャーゲームは、もはや説明不要の不朽の名作。リメイク版の発売が2017年、そして満を持してテレビアニメ化が実現した。ヒロインたちを救うため並列世界を行き来する展開は、手に汗握るスリルと興奮。個人的には、タイムトラベルを繰り返し、未来を変えていく作品群にも通じる原典的な作品に思えた。女性キャラの多くは、今時のアニメには珍しく生々しい色気を放っている。特筆すべきは、ツンデレクラスメートの澪。世の紳士諸君の釘宮病が悪化しそうだ。

亜咲花/この世の果てで恋を唄う少女

オープニングは亜咲花が歌唱。作詞編曲は志倉千代丸氏が手掛ける、ミステリアスかつクールなデジタルチューンだ。ボーカルは、音数の多いバックオケにもまったく埋もれずクッキリと聞こえてくる。コンプの掛かり方も比較的ナチュラルで、亜咲花の歌声が抑揚も含めリアルに感じられた。リズムトラックの粒立ちはきめ細かく、幾重にも配置されたシンセサウンドに埋もれず確実にビートを刻む。96kHz制作による空間の広さを活用したミックスで、ダークで謎めいた世界観を混濁感少なく描いた一曲だ。

【e-onkyo musicで購入】
・亜咲花/ この世の果てで恋を唄う少女

みだらな青ちゃんは勉強ができないED主題歌 「恋はミラクル」(96kHz/24bit)

アニメイズムB1枠で放送されたテレビアニメ。15分アニメが2作品連続で放送されており、続く「川柳少女」と両方を楽しんだ方もいるだろう。主人公の青ちゃんは、官能小説家の父から離れたい一心で遠方の大学を目指して猛勉強。しかし、ピュアでイケメンの木嶋君が何かと声を掛けてくる。アニメの青ちゃんは、もはや何かの病気なのではないかと心配になるほど卑猥な妄想が暴走しているが、その実はとても純粋な子で木嶋君との相性はピッタリに思える。“ホントはピュアなヒロインが妄想で暴走”という、みんな大好きな様式美(?)だ。

スピラ・スピカ/恋はミラクル

オープニングを担当するのは3人組のピュアポップ・ロックバンド「スピラ・スピカ」。作詞作曲は同バンドのメンバー、ボーカルの幹葉と寺西が担当する。サポートドラマーを迎えた4人構成で奏でるポップな王道ロックアニソン。バンド演奏のグルーブ感をより強調したアクティブなミックスだ。ドラムの音像が立体的で、生の演奏をスタジオで聴いているかのような気分にさせる。

局所的に打込みのシンセこそ入るが、基本は3人+ドラムのシンプルな構成。個別の楽器がくっきりと分かってディテールも細かい。エレキギターの音は肉厚で、アンプの生音をマイクで集音した空気感まで伝わる。ベースとバスドラの低域の密度感は、まさにハイレゾの恩恵だ。CDの低域はどうしても薄っぺらい音になりがちだが、ハイレゾは温度感があって説得力が数段上になる。昔から見聞きした「ロックバンドなら48kHzでよい」という制作者の声を思い出したが、とんでもない。こうしたバンドものこそ96kHzで録ってほしい。

【e-onkyo musicで購入】
・スピラ・スピカ/ 恋はミラクル

消滅都市 ED主題歌「ユキ(CV:花澤香菜)カバーソングシングル」(96kHz/24bit)

アプリゲーム「消滅都市」がTVアニメ化。終盤ではユキが選択した未来のその後が描かれ、切なくもどこか希望を残した形で幕を閉じた。ゲーム版未プレイの筆者は、1クールで終わってしまうのが信じられないほど世界観にドップリ浸ってしまった。ユキの父親であるダイチの過去が描かれる第9話は、母親ミフユとの出会いが明かされ思わず涙した。

ユキ(CV:花澤香菜)/TVアニメ「消滅都市」カバーソングシングル

一部の話数で、エンディングにヒロインであるユキが歌うカバーソングが流れる。1990年代中盤の懐メロを、アコースティックアレンジでしっとりと歌い上げるユキ。先行で単曲配信されていたが、ついにシングル版として登場した。花澤香菜とハイレゾの相性の良さは筆者が言うまでも無くファンには広く知られているが、本楽曲も聞き逃せないナンバーになっている。一聴してそのミックス・マスタリングの仕上がりの良さに感動。生楽器の質感を大事に残しつつ、各パート同士が混濁することなくスッキリと整理された音場設計は見事だ。音圧は控え目に躍動感を残していて、レコーディング現場で聴くような鮮度の高さを味わえる。

「Swallowtail Butterfly」は、鍵盤とドラムの音が厚みを持っていて、質感もまさに生楽器そのもの。ユキのボーカルも加工されている感がほとんど無くてリアル。「Hello, Again」は、一転してエレキが入って低域成分が増える楽曲だが、楽器同士のマスキングは感じられず音像を明瞭に捉えられる。ユキのボーカルはややデフォルメされている印象だが、他の演奏とのバランスを意識しているのだろう。いずれにしても録って出しのような鮮度の高い楽器音が最高だ。良い音作りの楽曲はハイレゾで聴きたくなるし、ぜひ体験してほしいと願う。

【e-onkyo musicで購入】
・ユキ(CV:花澤香菜)/ TVアニメ「消滅都市」カバーソングシングル

余談になるが、PlayPicという映像商品形態をご存じだろうか。今回取り上げた「みだらな青ちゃんは勉強ができない」は、Blu-rayではなくPlayPicでの映像ソフト販売となっている。購入したカードにQRコードが記載されており、スマホで読み取ると動画が視聴できる。PCブラウザで観たり、テレビにもキャストできる新しいサービスだ。

画質や音質はBlu-rayが優位なものの、まさに時代に即したサービスだと感心した。5Gなどの通信高速化に合わせて、こういった配信型のサービスがBlu-rayを越えるクオリティで視聴できるようになるのも時間の問題だろう。

音楽界隈でも今年秋には、国内サービスとして初めてハイレゾのサブスクリプション「mora qualitus」が開始される予定だ。マニアが能動的に楽しむだけでなく、一般のリスナーが意識せずにハイレゾを聴く。そんな未来が来るかも知れないと思うと、ちょっとワクワクしてくる。




    【使用機材】
  • NAS「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB (アイ・オー・データ機器)
  • ユニバーサルプレーヤー(ネットワーク再生)「BDP-103DJP」(OPPO Digital Japan)
  • AVアンプ「AVR-X6300H」(デノン)
  • スピーカー「RUBICON2」(DALI)

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト