2019-07-04

女性名前に「○子」が多く四音の名前が少ない理由

anond:20190701200632

日本では個人名前は「石川麻呂(いしかわまろ)」や「穴穂部間人(あなほべのはしひと)」といったふうに長い訓に漢字を当ててきたが、嵯峨天皇のころ遣唐使であった菅原清公の進言によって、男子名前漢字で二文字か一字、女子名前は「○子」とするといった、漢風の名前使用が進められ、定着した。

諱 - Wikipedia

この菅原清公っていうのは菅原道真のおじいちゃんな。

具体的な後世に残った事績としては、それまで和風だった人名のつけ方を唐風に改めたことが挙げられる。男子場合坂上田村麻呂」の「田村麻呂」のような形式から菅原道真」の「道真」や「藤原基経」の「基経」といった二文字訓読みか「源融(みなもと の とおる)」の「融」や「源信(みなもとの・まこと)」の「信」など一文字訓読みという形式にし、女性名前の「○子」という形式にすることは彼の建言によって導入されたものである

菅原清公 - Wikipedia

まず単純に、名前の二文字目が「子」で固定されると、必然的に読みは三音になりやすい。

男性名だって、「○太」とか「○斗」といった形式だとだいたい三音で、二音や四音は少ないもんな。

このあたりは音韻問題もあるのかもしれん。

で、貴族実名に付けられるこの「○子」はいちおう庶民にも広まったらしいが、

室町時代からそもそも女性に「実名」をつける風習がなくなり「通称」だけを持つようになった。

まり「松」とか「亀」みたいな二音の簡単名前がつけられて、

「お松さん」とか「お亀さん」とか呼ばれるようになった。

この傾向は江戸時代まで続いたけど、

明治になって庶民公式の姓名を名乗るようになると、

貴族の名付けである「○子」は庶民の憧れだったので一気に増加する。

女性名と[子] - nihonjin-name !

最初のうちは「〜〜氏」「〜〜女史」みたいなのと同じ敬称として扱われていて、

本名の「松」や「亀」に「子」をつけて「松子」「亀子」とか呼んでいたらしい。

津田梅子与謝野晶子本名「うめ」「しょう」だった。

それがだんだん本名として最初から「○子」と名付けられるようになった。

もとが二音、「子」を付けて三音、というのがここで増えていったわけだ。

明治安田生命の名前ランキング大正元年まで遡れる。

明治安田生命 | 名前ランキング2018 - 生まれ年別名前ベスト10 - 女の子

「○子」のピークは1956年と言われていて、そこから「○美」が増えていったらしい。

なんでこの時期に「○美」が増えたのか分からんが、

高度経済成長時代に入って社会雰囲気が変わったのもあるだろうし、

そのちょっとから「由美子」「久美子」「恵美子」「美代子」「美智子」などと「美」入りの三字名の人気があったから、

そこから自然と「子」を外すようになったのかもしれんね。

思いついて宝塚歌劇団女優芸名確認してみたけど、

1953年入団宝塚歌劇団40期生あたりから「○美」が増えている気がする。

「当時、こういう名前がかっこいいと思われていた」という傍証になりそうだ。

宝塚歌劇団40期生 - Wikipedia

(もうちょっと遡ってみたら33期生だけ特異的に「○美」が多いな…何かあったんだろうか…)

それからしばらく「○子」と「○美」の時代が続くけれども、

1970年代に入ると「美香」「美穂」「香織」「恵」「愛」などがランキング上位に登場してきて、

ようやくバリエーションが増えていったという流れ。

一方で、男性のほうのランキングを見ると、思ったよりも三音の名前が多い。

「清」「正」「茂」のような一字名はもちろん「正治」「和夫」「達也」なんかも三音。

四音の名前は「○一」「○郎」「○介」「○平」などの形になる。

これらはだいたい「生まれの順番を表す字」か「官位名に由来する字」なので、

女性名に見られないのは納得。

武士時代が長く続いたなかで男性名けが多様化していったのだと言えそうだ。

ちなみに「○郎」の由来は「○子」と同じく嵯峨天皇な。

日本において太郎という人名が登場したのは、嵯峨天皇第一皇子の幼名に命名したのが初見とされる。

以後、武士階級の名としても広まり今日では一般的命名される人名ひとつとなっている。



以上から考えると「四音の女性名が少ないのは何故か」には、

二音の女性接尾辞が無かったからだ、ということになり、

「二音の女性接尾辞が無かったのは何故か」というと、

社会的地位の低かった女性人名接尾辞バリエーションが少なかったからだ、

と言えるのではないか

(「人名接尾辞」って書きましたがたぶん正式用語ではないので「止め字」でいいと思います

記事への反応 -
  • 「ゃ」「ゅ」「ょ」は無しとして、「桜子」「薫子」みたく3文字の名前に「子」を付けたのか、「ひまわり」「なでしこ」みたく植物の名前。何故植物なのか。 それ以外だとほぼキラ...

    • anond:20190701200632 日本では個人の名前は「石川麻呂(いしかわまろ)」や「穴穂部間人(あなほべのはしひと)」といったふうに長い訓に漢字を当ててきたが、嵯峨天皇のころ遣唐使であ...

      • 昔からこの件は疑問に思ってて、この増田きっかけに改めて理由を考えてみて 考えついた内容が詳しくまとめられていた ありがと

      • (もうちょっと遡ってみたら33期生だけ特異的に「○美」が多いな…何かあったんだろうか…) 終戦かな

      • まず単純に、名前の二文字目が「子」で固定されると、必然的に読みは三音になりやすい。 男性名だって、「○太」とか「○斗」といった形式だとだいたい三音で、二音や四音は少な...

        • そもそも、男女問わず「正しい名前」ってもの自体の重要性も低かったんだろう。男は仕事柄、正式な署名を残す機会が圧倒的に多かったから特定できるケースが多いってだけで。 秀吉...

      • 右予

      • こりゃすごい。ありがとう。

      • ガチで新元号を予想する anond:20190110134005 大外れでしたわ…。 万葉集から取ってきたうえに「昭和」と字がかぶる「和」が入るなんて予想できまへんわ…。 新元号に「安」が入るべきで...

      • 順位 全体順位 ブクマ数 タイトル 日付 備考 1 8 1597 「皆がこれ読んでたら読んでたら世の中もっと良くなるのに」本 07/16 2 14 ...

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    •   同姓同名 多いから                                                                             anond:20190701200632

    • 「ゃ」「ゅ」「ょ」を抜くからでしょ 「周子(しゅうこ)」「翔子(しょうこ)」とかいるじゃん

    • 4文字は し・・・死につながるから縁起が悪い

    • 子供の名付けランキング見たが、男だって少数派やんか、何見ていってんだお前は

    • 男が4文字成立してるのは、だいぶ昔から(歴史は知らん 5文字以上が普通にあったし、○○たろう、○○ざえもん、○○のじょう タカ、ヤス、ヒロ、ミキ、数え切れんぐらい、前にも...

    • 佐村河内

    • 男だと郎、平、助、一、とか名前の終わりが2音になるパターンが多めだから4文字以上になりやすいんじゃないの? 女だと子、美、代、乃、とか名前の終わりに付ける文字は大体1音...

    • 短い名前のほうが「かわいい」からな

    • 江戸時代やら明治初期くらいは、女性名前は二音が多かったんで、まだ増えた方か。 二音といっても頭に「お」をつけて「お○○」と呼ぶことも多かったようなので、 元々「三音」に馴...

    • 男に比べて女の名前に使える文字数が少ないとなると、 名前(のひらがな表記)が同じ人の割合というのは男よりも女の方が高いのだろうか? 仮面ライダーとプリキュアで名前かぶりをし...

    • マライアとかアリシアとかアランナとかアラニスみたいな漢字を当て嵌めやすい名前を流行させて日本人女子の4文字名前を増やそう。 https://anond.hatelabo.jp/20190701200632

    • サーヴァント×サーヴァント という公務員漫画に長過ぎる名前をもった女性の悲劇がでているので買って読んで良いぞ

    • 真っ先に思い出したのはEver17の田中優美清春香菜たなかゆうびせいはるかなだった

    • 昔はトメとかイネとか2文字だったしな 男の名前が長いのはライオンのたてがみとか孔雀の羽とかそういう感じだろうよ

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