生き物

「昆虫は絶滅の危機に瀕している」ことがアマチュアグループの長期的調査のデータから明らかに

by smarko

世界中の至るところに生息している昆虫は2018年時点でおよそ100万種が知られており、確認されている生物種の半分以上を占めています。しかし、この30年で大幅に数が減って「絶滅の危機に瀕している」ことが、昆虫愛好家グループの調査により明らかになりました。

Insect apocalypse: German bug watchers sound alarm
https://phys.org/news/2019-07-insect-apocalypse-german-bug-watchers.html

ドイツ西部の都市・クレーフェルトにある「Amateur Entomology Society of Krefeld(クレーフェルトアマチュア昆虫学会)」は、1982年以来30年以上にわたってドイツの田園地帯に虫の捕獲器を設置し、およそ8000万匹もの虫を収集してきました。本部として利用している廃校舎では、分厚いカーテンで日光を遮った部屋の中にガラスキャビネットが並べられ、数千匹のチョウや海外のカブトムシ、トンボなどが展示・保管されています。

マルティン・ゾルク会長が「1982年以来、私たちが使う虫捕獲器はサイズも材質も標準化されており、63の地点で同じように虫を収集しています」と語っているように、クレーフェルトアマチュア昆虫学会が行ってきたのは標準化された内容での長期的調査であり、大学の研究チームなどにとって、多くの地点における年ごとの虫捕獲量の変化を確かめられる定量的データの宝庫といえる存在です。

しかし、30年以上にわたり調査をしてきた結果、捕獲される昆虫の総量が調査開始時と比べて76%も減少していることがわかっています。

by RonBerg

クレーフェルトアマチュア昆虫学会は2011年に「昆虫が絶滅の危機に瀕している」という主張を表明しましたが、環境分野以外に大きな反響は及ばなかったとのこと。生物多様性の喪失に関する主張として最もセンセーショナルなのは、大型で動物園などでも見かける哺乳類が絶滅しかけているといったものであり、昆虫の減少といった話題は見過ごされがちです。

一方で、クレーフェルトアマチュア昆虫学会の調査結果は大学が行う研究において、重要な役割を果たすこともあります。たとえばオランダ・ラドバウド大学で生態学を研究するHans de Kroon教授は、鳥類の減少問題を研究する中で「エサとなる昆虫の減少が鳥類減少の要因なのではないか」と考えたものの、証拠となるデータ不足に悩んでいました。そんな時にドイツ人の同僚から「クレーフェルトアマチュア昆虫学会が懸念すべき昆虫減少のデータを所持しているから、分析してくれないか」との打診を受け、自身の研究に生かすことができたと話しています。

また、オーストラリアのシドニー大学とクイーンズランド大学の研究チームが行ったメタ分析においても、クレーフェルトアマチュア昆虫学会のデータが活用されました。研究チームは昆虫種のうち40%以上が絶滅の危機に瀕しており、毎年1%ずつ絶滅の危機に瀕する昆虫は増えていると指摘。「恐竜の絶滅以来、最も大規模な絶滅事例です」と研究チームは主張しました。

by Anthony

ゾルク氏は昆虫捕獲量の減少について、自然保護区から少ししか離れていない場所に工場が建てられたり、畑で農薬が使われていたりするため、西ヨーロッパにおける昆虫は非常に苦しい状況にあると指摘。「昆虫の減少が後戻りできない地点にまで到達してしまうことが、私たちにとって最も恐ろしい事態です。それは生物多様性の永久的な喪失をもたらします」と、ゾルク氏は述べました。

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in 生き物, Posted by log1h_ik

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