サイエンス

AIを駆使して液体が何かを瞬時に判断できる「電子舌」をIBMが開発

by Merch HÜSEY

人間の味覚は何千年にもわたる進化のたまものです。人間は敏感な舌を持っているため、人体にとって有害な物質を知覚したり、食べ物や飲み物を楽しんだりすることが可能となります。しかし、機械センサーはまだ人間の舌のような高精度な物質認識精度を有していません。そこで、持ち運び可能な小型のデバイスで簡単に液体が飲むのに適したものか否かを判別できるような電子舌「Hypertaste(ハイパーテイスト)」をIBMが開発しています。

Hypertaste: An AI-assisted e-tongue for fast and portable fingerprinting of complex liquids | IBM Research Blog
https://www.ibm.com/blogs/research/2019/07/hypertaste-ai-assisted-etongue/

IBMが開発した「ハイパーテイスト」は、人工知能(AI)を駆使して液体を分析するという装置。ハイパーテイストがどんなものなのかは、IBMが公開している以下のムービーを見れば一発でわかります。

IBM Hypertaste: An AI-assisted e-tongue for fast and portable fingerprinting of complex liquids - YouTube


ハイパーテイストはAIを駆使して複雑な液体も素早く識別可能となる、持ち運び可能な「電子舌」です。


ハイパーテイストでは「コンビナトリアルセンシング」と呼ばれる技術を使用することで、最小限のハードウェアで高度な液体分析を可能にしています。コンビナトリアルセンシングでは個々のセンサーを異なる化学物質に同時に反応させるような、交差感知型のセンサーアレイを構築することで、分析対象となる液体の持つ特性を識別する模様。


クロスセンシティブセンサーアレイ(青色部分)を液体の中に漬けて使用します。


センサー部分を液体に漬けると、AIアシストセンサーが人間の「味」や「におい」の感覚に似た組み合わせパターンから液体の化学パターンを認識します。


ハイパーテイストは各液体固有の電圧信号をセンサーアレイで記憶し、「オレンジジュースならこの数値」といった具合に、液体ごとに異なる電圧情報を収集することで液体が何かを識別していきます。なお、センサー部分はポリマーベースの交換可能な設計となっているとのこと。


収集されたデータは端末上もしくはクラウド上の訓練された機械学習アルゴリズムで分析されることとなります。機械学習アルゴリズムは液体データベースの中から検査中の液体と最も科学的に類似しているものを判別。


分析結果はモバイルアプリ経由でチェック可能です。なお、概念実証テストの際には分析結果が出るまでの時間はわずか1分足らずだった模様。


IBMはハイパーテイストがさまざまな産業で活躍する可能性があるとしており、特に「サプライチェーン」「製造業」「環境」「ライフサイエンス」といった分野での応用に注目している模様です。IBMは湖や川での水質検査、製造業者による原料成分の確認、偽造ワインやウイスキーの識別など、複数の事例を挙げています。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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