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ATコマンドで動作可能な小型IoT通信モジュール、使いやすさを目指しソフトバンクと村田製作所が開発

2019.07.08

Updated by Naohisa Iwamoto on July 8, 2019, 13:30 pm JST

IoTデバイスをネットワークに接続するために不可欠な通信モジュールだが、モジュールにはベンダーごとの機能や性能のばらつきがあり、通信やインターネットへの高い知識がない企業にとって製品やサービスの開発のハードルになりがちだ。ソフトバンクと村田製作所は共同でソフトバンクのIoTプラットフォームに対応した小型IoT通信モジュールを開発し、容易にIoTネットワークを構築できる環境の提供を目指す。

両社が開発したのは、LPWA(Low Power Wide Area)通信に対応したIoT向けの通信モジュール「Type 1WG-SB」と「Type 1SS-SB」の1モデル。いずれも、ソフトバンクが提供するIoTプラットフォームに対応し、通信モジュールを組み込む機器からの操作は一般的なATコマンドを利用して行える。このため、IoT機器がLPWAネットワークを経由してIoTプラットフォーム接続するまでの設計をする際に、特別な通信やインターネットの知識がなくて済む。ATコマンドで安定した動作を可能にするためには、通信モジュールとIoTプラットフォームの間のすり合わせが必要であり、新製品はソフトバンクと村田製作所が共同して両者の間の差異を埋めるための作業を行った。また、国内の電波法認証を取得済みであり、IoT製品やサービスを開発する企業が法対応をせずにすぐに利用できることも使い勝手を高めるためのポイントである。

特徴はほかにもある。まずモジュールのサイズが世界最小クラスであること。一般的に小型のLPWA通信モジュールのサイズは18.0×16.0×2.0mmだが、新製品では底面積で約50%の小型化を実現した。小型化により、IoT機器の電子回路の実装面積を削減、高密度回路設計が可能になる。小型化を進めるに当たっては、村田製作所が携帯電話向けのモジュールなどで培った小型化技術、高精度の内製部品を使った高品質のデザインなどを活かしたという。

通信プロトコルとしては、Open Mobile Alliance(OMA)が標準化したIoT通信向けの軽量プロトコル「OMA Lightweight M2M」(LwM2M)に対応する。LwM2Mを利用することで、HTTPSに比べて通信量を約2割まで減らすことができ、大幅な通信量と消費電力の削減に寄与する。また、IPアドレスを利用しないセキュアな通信技術のNIDD(Non-IP Data Delivery)技術への対応も計画しており、NIDDを利用するとLwM2Mからさらに通信量を7割程度削減できるという。こうした低消費電力への対応で、製品出荷後に電池交換が難しいようなIoT機器に、長期間のデータ通信が可能になると見込む。

Type 1WG-SBは、モデムチップにAltair Semiconductor製のALT1250を採用し、NB-IoTとCat.M1の双方の通信規格に対応する。Type 1SS-SBは、MediaTek製のMT2625を用い、NB-IoTに対応する。発売時期は2019年9月以降を予定している。ソフトバンクのIoTプラットフォームを利用したIoTソリューションで用いるIoT機器への採用を見込んでおり、例えば家電機器メーカーの製品に標準的に採用して、製品のライフサイクル管理に用いるといった広範な利用も想定している。

【報道発表資料】
ソフトバンクと村田製作所、ソフトバンクのIoTプラットフォームに対応した世界最小クラスの通信モジュールを共同開発

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。