スケールドメテオフォール開発

序節:はじめに

近年、日本型の開発プロセスとして
メテオフォール型開発 - 実践ゲーム製作メモ帳2 が注目を集めている。

eiki.hatenablog.jp

上記のメテオフォール開発では、適用対象は開発チームである。
(本稿ではこれをオリジナルMF開発とよぶ)

一方最新の研究では、これをより大きな企業レベルで適用する事により、更なる災厄効果をもたらす事が明らかになってきた。

本稿では、企業レベルでメテオフォール開発を適用する為の手法「スケールドメテオフォール開発」について、概要を説明する。

(オリジナルの方に迷惑かかるとアレなので補足:オリジナルMFを書いた方とは全然関係ない人のポストです)

第一節:スケールドメテオフォール開発

オリジナルMF開発では、単一の開発チームを想定している。

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そしてこうなる。

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一方、スケールドメテオフォール開発では、複数の開発チームを含む、企業全体が対象となる。

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そしてそれぞれのレイヤ(位階)において複数の神々が設置される。

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そしてこうなる。

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神々には序列が存在し、

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下位の神々は上位の神々にメテオフォールされる。
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ちなみに下々の民は毎回ひどい目にあう
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 この構図をフラクタルに繰り返す事で破壊の規模を拡大していくのが、
スケールドメテオフォールの骨子である。
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 スケールドメテオフォール開発の対象は開発チームだけではない。
企業のバリューストリームを構成する全ての要素が対象となる。
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そしてこうなる。

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慈悲はない。

第二節:メテオフォールの様式

スケールドメテオフォール開発では、「階層構造」の概念が導入された事により、メテオフォールの類型もオリジナルMF開発に比べて多様化している。

本節では、スケールドメテオフォール開発において発生する代表的なメテオフォールについて、その概略を説明していく。

パターン1

上位層からのメテオフォールがあった場合、
下位層にメテオフォールが伝播/連鎖し、より広域かつ深刻な破壊がもたらされる。

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これをメテオフォールパンデミックと呼ぶ。

パンデミックが一度発生すると、収束は容易なことではない。上位層のメテオフォールが収束しても、下位層では相互にメテオが飛び交い発生と収束を繰り返すこととなる。

パターン2

同一序列の神々の間で争いが起こった場合、初期段階ではオリジナルMF同様「ラグナロク」となるが、

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決着がつかない場合、より上位のメテオフォールが発動し、決着する。

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これをハルマゲドンと呼ぶ。

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この時、関係ないよその神々までメテオフォールが飛び火するケースがあり、これを巻き込まれ型メテオフォールと呼ぶ。

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パターン3

オリジナルMF開発では「新しき神」の登場による「古き神」の駆逐と、それに伴うメテオフォールの発生を「ジハード」と定義している。

スケールドメテオフォール開発でも同様の事象が発生するが、この神々の交代が、「上位層」でなされた場合、その被害の大きさは指数関数的に増大する。

これは、新しき神々はその配下を子飼いの神々で固める習性があるためであり、発生した層から最下層に至る全レイヤーにおいて連鎖的にジハードが発生し、大量のメテオフォールを誘発する。

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これを クルセイダーと呼ぶ。

また、特に前述の「メテオフォールパンデミック」や、後述の「コロニー落とし型メテオフォール」を誘発する傾向がある。

上位神「パワーをメテオに!!」
子飼い神「いいですとも!!」

パターン4

特に上位層の神々が好むのが、組織再編によるメテオフォールである。

例)組織Aを組織Bに統合、組織Cを分割して組織DとEに再編、等

これに伴い、変更対象となった部門における方針の変更や、下部組織の変更、
新旧メンバーによる摩擦、などを誘発し、局所的なメテオフォールが連鎖する。

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これをコロニー落とし型メテオフォール」と呼ぶ。

ジークジオン!!」

パターン5

上位層では小石程度の規模だったメテオフォールが、

などにより、階層を跨ぐ度に強化、肥大化し、下々の民に到達する頃にはアクシズ級の災厄に発展するケースが多発する。

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これを 「スパイラルアップメテオフォール」 あるいは 「大佐式メテオフォール」 と呼ぶ。

「そんな事をしたら地球に人が住めなくなってしまうぞ!!」

パターン6

上位の神々、特に財務神によって引き起こされるのが、予算削減に伴うメテオフォールである。

しかしながら、日本の企業においては解雇が非常に困難である事が多い。よって、実態としては 徹底した内製化の号令の元、社外へのアウトソーシング停止を行うケースが多い。

特に空洞化の進行が激しい企業では、あらゆるノウハウがアウトソーシング先に集中しているケースが多く、この場合は深刻な被害が発生する。

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これをパルスのファルシのルシがコクーンでパージ型メテオフォールと呼ぶ。

また、企業の存続が脅かされるレベルで財務が逼迫している場合は、
後述の「究極のメテオフォール」が発動される。

パターン7

単発のメテオフォールでは、ある特定のタイミングでのみ破壊がもたらされる為、その後の復旧は比較的容易である。また、下々の民のモチベーションによっては、メテオフォール前よりも良い状態に復旧する可能性がある。

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より徹底的かつ致命的な破壊をもたらしたい場合、小規模なメテオフォールを短期間に連続して投下する手法が有効である。

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これを、継続的メテオフォール(Continuous Meteor Fall) と呼ぶ。

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究極のメテオフォール

ここまで説明した全てのメテオフォールの特性を兼ね備え、あらゆる神々、民を恐怖のズンドコに陥れる、究極のメテオフォールが存在する。

古来より「いんせき」「第七霊災」等、様々な名前で呼びあらわされてきたそれを
スケールドメテオフォール開発では

リストラ

じゃなかった

「究極黒魔法メテオ」

と呼称する。

このメテオフォールは主に最高位の神である株主神をトリガーに発動される。
発動条件は「企業の存続が危ぶまれるレベルで財務状況がひっ迫している場合」である。
株主神に近しい神が「くっくっく、黒マテリア」と言い始めたら要注意である。

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このメテオフォールは最高位の神から全ての神々に対して連鎖的に降り注ぎ、長期間にわたり継続的にメテオフォールが発生する。

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その被害は甚大であり、企業の持つ殆どのリソースが徹底的かつ致命的に破壊され尽くされる。

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第三節:神々のビジョン

オリジナルMF開発では、神々から下々の民への意思の伝達は「黙示録」にて行われる。

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スケールドメテオフォール開発では、階層化した組織において、よりエレガントな伝達を行う為、「黙示録」を拡張した概念「ビジョン」によって意思の伝達を行う。

この、ビジョンについて、神話体系のデファクトスタンダードである
「ファブラ・ノヴァ・クリスタリス」をベースにして説明していく

1. ファルシがルシになる者へ使命を伝える方法がビジョン
2. ビジョンは映像のようなものだが具体的に使命がわかるものではなく、ルシによる解釈によってビジョンから得るものが変わる
3. ルシはファルシからビジョンによって伝えられる使命を果たせばクリスタルとなり、果たせないとシ骸になる

「ファブラ・ノヴァ・クリスタリス第4章11節:ビジョン」より

1. ファルシがルシになる者へ使命を伝える方法がビジョン

要約すると、下々の民は上位神より「ビジョン」の形で指示を受け取る。

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また、ビジョンもメテオフォールと同様、上位神から下位神、下々の民へと連鎖的に伝えられていく。

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2. ビジョンは映像のようなものだが具体的に使命がわかるものではなく、ルシによる解釈によってビジョンから得るものが変わる

ビジョンは非常に曖昧な形であることが多い。
また、最悪のケースではキーワードしか存在しない場合も存在する。

例:「徹底したデジタルトランスフォーメーション」

また、上述の通り、ビジョンは各階層をまたがって間接的に伝えられる為、元々曖昧であったビジョンが伝言ゲーム的に改変され、「下々の民」に到達した頃には、全く異なるビジョンになっているケースが多い。

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オリジナルMF開発と同様、神々へのフィードバックは実施できないため、
ビジョンの真意の確認も非常に困難である。

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下々の民の中には、天才的な推察眼をもって、曖昧/改変されたビジョンを元々の正しい意図に翻訳できるものが、特異点的に存在する事がある。

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これをラクと呼ぶ

3. ルシはファルシからビジョンによって伝えられる使命を果たせばクリスタルとなり、果たせないとシ骸になる

使命を達成できた場合、成果として評価され、後述の昇天の確率が上昇する。
使命を達成できなかった場合、ボーナスが減額され、最悪の場合、後述の「転生」をされる可能性がある。

[とある偽典より引用] 全ての神は過去、人であった

この世界の神々は元は人間であった。ゆえに神となった後でも人間味を残していることは少なくない。

神がビジョンを掲げるとき、本来は世界の最大多数の幸福を願うが、俗世の記憶により目がくらむことがある。
いわゆる金である。

神と言えど、その地位が未来永劫、保証されるものではない。
自身が神であるうちに、「神の座を辞せし後」のことを考え始めてしまうのだ。
神がこの想いに囚われた時「定年オリエンテッドビジョン」が生まれる。

自分がいる間、その時だけ良ければ良いのだ。
何を斬り捨てても、未来がどうなってもどうでもよく、
今その時、自分がいる間の業績だけが良ければ、すべてよかろうなのだ!

民はこれに抗う術を持たない。ただ惨状の前に朽ち果てるだけだ。

 第四節:民の祈り

第二節、第三節では、神々から下々の民へのインタラクションにフォーカスし、
メテオフォールとビジョンについて説明してきた。本節では、下々の民から神々へのインタラクションの手法である「祈り」について説明する。

祈り

下々の民から神々へのインタラクションを行う場合、
オリジナルMF開発では、稀にではあるが「祈り」が神々に届く可能性がある。

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しかしながらスケールドメテオフォールでは、「祈り」の構造も階層化されている為、
「祈り」が最上位まで届く可能性は著しく低い

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これを回避する手法として、特定の祠(喫煙所、飲み屋)で上位神に直接祈りを捧げ、
中間層の神々をスキップするという外法も存在する。

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しかしながら、この手法で祈りを捧げた場合、祈った者の願いとは裏腹に、想定しなかった対象にピンポイントで大量のメテオフォールが発生する危険性も伴う。

また、外法の実施が中間層の神々や口の軽い同僚に露見した場合、自らにメテオフォールが降り注ぐ可能性が高い。

素人にはお勧めできない。

儀式

オリジナルMF開発における「祈り」は、その形や実施手段が人によって異なる事が多く、様々なメンバーが参加する大規模なスケールドメテオフォール開発では不向きであることが多い。

これを解決するため、スケールドメテオフォール開発では、「祈り」の様式を形式化/ルール化した「儀式」と呼ばれる手法を用いる。

例)企画審査の儀、調達稟議の儀、品質審査の儀、などなど

これは、下々の民の願いを詰め込んだ羊皮紙を、上位の神々に手渡し/説明し、
印章」と呼ばれる神々の加護を取得する事で実現される。

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「儀式」は「祈り」よりは成功率が高いが、実現したい願いの大きさによっては、
多数の神々から「印章」を取得する必要があるため、長大な時間を要する

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これを俗にスタンプラリーと呼ぶ。

儀式におけるレビュー

儀式において最も重要なプロセスが、上位神による羊皮紙のレビューである。レビューも階層構造を取り、各階層の神を全て突破する必要がある。

この場ではビジョンの理解に関する齟齬が顕在化し、メテオフォールを誘発するケースが多い。

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また、レビューの度に神の言っている事がコロコロ変わり、永遠に終わらないケースも存在する。これを、無限のレビュー地獄(Unlimited Review Works) と呼ぶ

究極の祈り

通常の「祈り」や「儀式」によるインタラクションは、上位神に届かない可能性が高く、また成功した場合でも長大な時間を要する。

これを解消する究極の祈りが存在する。
社外のコンサルタントを召喚し、上位の神々を直接動かすのである。

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これを、
「究極白魔法ホーリー
と呼ぶ。

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ただし、コンサルタントとの事前調整が不十分だった場合や、上位神が想定外の反応を示した場合、逆に上位層からの大規模なメテオフォールを誘発する可能性があるので注意が必要である。

第五節:天空の神々

ここでは、遥か天界におわす、多様なる神々について、その類型を説明する。

前提

高度に階層化されたスケールドメテオフォール開発において、各位階の神々のビジョンが同じ方向を向いていれば、現場の混乱は少ない。しかしながら、「民の祈り」で説明した通り、上記のような状況は稀であり、大概のケースでは各位階の神が全く逆の事を言っていたりする

スルー神

このような状況に順応した神が、「スルー型神」である。
自身の判断を挟まず、上と下に対してパイプとして作用する。

このため、階層をまたぐ混乱を発生させず、現場にとっては割とありがたい神である。

オレオレ神

逆に、自らの想いが強い神がこのタイプである。
このタイプは善神と邪神の2パターンが存在する。

善神

確固たるビジョンを持ち、そのビジョンを実現するために上位神にも下々の民にも積極的に働きかける。

邪神

下々の民へのみ強権を発動し、上位神には絶対服従する。

しかしながら、上位神の意を正確に汲んでいる訳ではなく、あくまで「オレの理解(妄想)」である為、ここにビジョン伝達の齟齬が発生する。

この齟齬が顕在化するのが「儀式」による上位神へのエスカレーションを行う時であり、前述のレビュー地獄を発生させる。

ワカンネーケド神

組織変更で異動してきた神々にありがちなパターンである。
とにかく枕詞に「分かんねーけど」と付ける。

  • 俺よくわかんね~けどさ~、「ほげほげ」が「まげまげ」じゃないの?(関東圏)
  • 「ほげほげ」が「まげまげ」じゃね~の?知らんけど。(関西圏)

最初のうち分かんねーのはいいけど、分かろうとしろよ!!(魂の叫び)

パワハラ

そのまんまである。
近年はその数も減少してきたと言われるが、依然、絶滅はしていない。

マイクロマネジメント神

邪神である。誰がなんと言おうと邪神である。
部下に対して徹底的な状況の見える化を強いるのが、このタイプである。
酷い神の場合、「通常業務50%」、「レポートの為の作業50%」の様な状態に陥る。
特に中間層の神々が被害にあいやすい。

ビッグピクチャー神

逆に、ふわっとしたビジョンを示すのみで後は下々に丸投げするのがこのタイプである。
スタンスとしては正しいと言えば正しいが、往々にしてこの手の神は実現性を無視した壮大な夢物語を押し付けるので嫌われる。

プレイングマネージャー

自ら先陣を切って実務をこなしつつも、チームのリード/マネジメントも行うタイプである。

上位神の「こうであって欲しい、こういう人が欲しい」という妄想によって生み出された「幻想種」に近い存在である。(存在が観測されることはあるが、極めて稀である)

そんな簡単になれるものでもなく、実際は↓であることが多い

プレイングマネージャーと見せかけたプレイヤー神

自らの実務にのみ集中し、下々の民を放置するのがこのタイプである。
殆ど自席にいる事がなく、相談などが非情に困難である。

プレイヤー(実務者)として優秀な下々の民が、無責任な上位神から「君にはプレイングマネージャーを目指してほしい!期待している!」とのビジョンを受けてこのタイプになるケースが多い。

善きプレイヤーが善きマネージャーとは限らないのである。

サーヴァント神

問おう、あなたが私のマスターか?

近年話題沸騰中なのがこのタイプの神である。
「チームとして」のパフォーマンスを最大化する事を重視するタイプである。
この為、下々の民を管理・統制するのではなく、下々の民が働きやすい状態を作り上げる事に注力する。

特にこのタイプが重視するのが「コミュニケーション」と「心理的安全性」である。

まぎれもない善神ではあるが、その存在ははぐれメタル並みにレアである。

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これらの多様なる神々が、あの手この手で大小様々なメテオフォールを発動するのが、スケールドメテオフォール開発である。

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第六節:地上の星

ここでは、スケールドメテオフォール開発を支える様々なタイプの下々の民について、説明する。

マイスター(職人)

各領域において、一芸に秀でた下々の民が存在する

  • 常人には思いつきもしないような美しい設計を紡ぎ出す
  • 常人の10倍のコーディング速度を誇る
  • 常人には思いつきもしないような、最適化/高速化されたRDBの実行計画を立案する
  • 癖の強いフレームワークやハードを、経験に裏付けされた技術で華麗に乗りこなす

などなど。

上から下まで多様な技術レベルのメンバーで構成されるスケールドメテオフォール開発において、このような存在は不可欠である。

これらの民を、我々は畏敬の念をこめて「マイスター(職人)」と呼ぶ。

また、神々による「属人性の排除」の号令の下、薄っぺらいナレッジシェアリングで
彼らの知見を他者に移転しようとする取り組みがまま発生するが、大抵うまくいかない。

その程度の付け焼刃で職人を量産できるなら苦労はしないのである。

エスパー

謎の超感覚により、限られた情報から瞬時に全体を見抜く下々の民が存在する

  • ちょっと見ただけでシステムのボトルネックを一瞬で見抜く
  • 大量に吐き出される雑なエラーログから、瞬時に原因箇所を特定する
  • 「なんか動きません><」系のクソQAにおいて、殆ど情報がない状態から事象を正確に把握する

などなど。

常人では全く歯が立たない、あるいは長大な工数が必要とされるタスクを、
謎の超感覚によって瞬時に解決してみせるこれらの民を、我々は畏敬の念を込めて「エスパー」と呼ぶ。

インデックス

長期化したスケールドメテオフォール開発では、様々な暗黙知が組織をまたいで各メンバーに累積されていく。

ここで、超絶的なコミュニケーション能力を背景に、宗教や階層を超えて上記の民をつなぐ、謎に顔の広い人々が発生する。

AKSでDockerイメージの自動ビルド/プッシュやりたいんだけど、やり方わからないんだよね…」
「ああ、それならほげほげ部のまげまげさんがやってたよ。一緒に聞きに行こうか?」

などなど。

前述の職人やエスパーは、あまり他人と関わらない事が多いため、彼らの知恵を活かすためには、このようなハブになってくれる人材は不可欠である。このような民を、我々は畏敬の念をこめて「インデックス」と呼ぶ

ゲートキーパー

チームにおける最終防衛ライン、それが「ゲートキーパー」である。

  • 卓越したコードレビューにより潜在バグの埋め込みを水際で阻止する
  • 余人では歯が立たなかった技術的課題を、思いもつかないような方法で解決に導く
  • どうやっても原因が分からず、お蔵入り寸前の障害を解決に導く

などなど。

ゲートキーパーは自らの価値を的確に把握しているケースが多く、普段は昼行燈している事が多い。でもいざという時は本当に頼りになります。

このため、下々の民でありながら、畏敬の念をもって「守護神」と称される事もある。

無銘

あまり能力が無さそうに見えるにも関わらず、
なんか知らんがチームに入れとくと、全体がうまく回るようになる人」が存在する。

このような人々には、いくつかのパターンが存在する

  • 普通の人は嫌がるが、やらないとまずい系の地味かつ、きついタスクをひたすら潰していく人
  • 各メンバーの間で潤滑剤的な役割を担い、適切な情報共有/調整をする人
  • 卓越した先見性をもって、あらゆる問題をその予兆が発生する遥か以前に対処してしまう人

などなど。

これらの人々に共通して言えるのは
「成果に対する貢献が目立たない」「謙虚であまり自己アピールしない」である。

ゆえに、
ただ一度の評価もなく
ただ一度の昇進もなし
担い手はここに一人
剣の丘で鉄を鍛つ

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スケールドメテオフォール開発では、様々な困難や悲劇が発生するが、
数多の地上の星々によってかろうじて成立しているのである。

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そしてこうなる。

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メテオフォールの前には何人も無力である。

第七節:堕天と昇天と転生

神々や下々の民のヒエラルキーは固定ではなく、年度に一回、あるいは半期に一回、
ヒエラルキーの更新が行われる。

堕天

神の位階を下げる行為を「堕天」と呼ぶ。
日本型企業においては、制度としては存在するが、実際は殆ど行われないケースが大半である。(後述の、「神罰」に該当する場合のみであり、「ビジョンが未達成」、程度では堕天しない)

昇天

神の位階を上げる行為を、「昇天」と呼ぶ。
また、この「昇天」の対象として下々の民が選ばれる事もある。

しかしながら、有効な「神々の座」の数は企業内でおおむね一定であり、前述の通り、「堕天」はほぼ行われる事がない。

よって、下記の様な対処が行われる

昇天条件を厳格化する事により、新たな「昇天」を抑止する
これにより、下々の民からの「昇天」が実質不可能になっているケースが数多くみられる
意味のない「神々の座」を新たに設ける事により、形式上「昇天」した事にする
これにより、下々の民の数<神々の数という不可思議な逆転現象が、稀に良く発生する

転生

前述の通り、「堕天」はめったに行われる事がないが、ビジョンの未達などによって上位神の怒りを買った場合、それ相応の罰を下す必要がある。

このような時に、上位神によって用いられる手法が、「転生」である。

これは、対象となる神々や下々の民を、全く異なる宗教(社内の他部門/社外)へと飛ばす再配置する行為である。

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なお、「転生時にチートスキルが貰えて異世界で無双できたりする」、
などと言う夢物語は存在しない。現実は非情である。

改宗

こちらは転生とは違い、神々や下々の民が自主的に行う行為である。

  • 信仰している神との折り合いがつかない
  • ビジョンと自らの思想が合わない
  • 家庭の事情で…

などの場合に、自ら信仰する宗教を変更する行為である。
改宗には大きく2パターン存在する。

社内の他神への改宗

社内での改宗を行う場合、改宗前と同程度の待遇は保証されるため、金銭面でのリスクは低い。
しかしながら、近縁の神に改宗する際は注意が必要である。改宗した後に組織再編があった場合、元神の配下に再配置される可能性がある。

その場合は裏切者として排斥される可能性が高い為、危険である。

社外の他神への改宗

全く新しい環境で勤務出来るため、自らを成長させられる可能性が非常に高い。
しかしながら、金銭面の待遇が著しく変更される可能性がある為、リスクも大きい。

結局のところ

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受肉

一部の「正しく役割を持つ」神々がその役目を終えた時、下々の民として再転生する事がある。
これを~~定年後再雇用~~「受肉」と呼ぶ。

第八節:聖典

スケールドメテオフォール開発では、大規模かつ多様な組織/人員を適切に管理/統制するため、様々な「教義=ルール」が存在する。この「教義」をまとめたものを「聖典」と呼ぶ。

聖典の例

聖典は砕けない

ありとあらゆるものを破壊しつくすメテオフォールだが、例外も存在する。
その最たるものが「聖典」である。
たとえ社長が変わろうとも、究極のメテオフォールが発動しようとも、聖典」が破壊されることはほぼない

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一説によると、
聖典は三次元空間上に時間が存在しない。平たく言うと時間が停止している(謎理論)」
とも言われるが、真偽は不明である。

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まぁ、ぶっちゃけ誰も責任取りたくないよね!!

聖典に背いた場合

神々や下々の民がこの聖典に背く行為を行った場合、二つのケースが存在する。

後述の神罰が下る(対個人)
主に「聖典就業規則」に背く行為を行った場合に発動する

メテオフォールが発生する(対組織・チーム)
主に「聖典セキュリティポリシー」や、「聖典)品質規約」などに違反した場合に発動する

聖典の守り人

聖典への違反行為を取り締まる、聖典の守り人が存在する。

これを、「異端審問官」 と呼ぶ。

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異端審問官による民への尋問は苛烈を極める

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これそのものが広義のメテオフォールである、とする説すら存在する。

教義の厳格性

「教義の厳格化によるリスクの低減」と「利便性の向上に伴う生産性の改善」はトレードオフの関係にあり、本来であれば両者のバランスをとる必要がある。

しかしながら、性質の悪い異端審問官や聖典の編纂者は、リスクの最大値のみを語り、利便性については全く考慮しない場合が多い。

XXXXなんか使って情報漏洩したらどうするんですか?損害は1億円ですよ?あなた責任とれるんですか?

などと発言する異端審問官も存在するらしいが、甚だ論外である。滅びればいい。
そういうやつらはITなど使わずに羊皮紙とインクのみで仕事をしていればいいのである。(フィクションです)

聖典の形骸化

聖典/教義の歴史が長くなると、その設立に関わった神々や民が、転生や改宗によりいなくなるケースが存在する。

その場合、当初の設立意図や前提条件も同時に失われ、ただただ、「聖典は絶対にして不可侵のものであり、守らなければならない」状態に陥るケースが多発する。

この場合、いかに時代に即さない教義であったとしても、変更するためには多大なる労力が必要となる。

聖典の変更

上述の通り、聖典の変更は極めて困難であるが、例外的に容易に変更ができるケースが存在する。
それが、「教義を厳格化する場合」である。

例)酔っぱらいが電車でPCを紛失したので、PCのオフィス外への持ち出しを禁止します。

聖典の厳格化に伴うメテオフォール

聖典の厳格化に伴い、今までは許可されていたものが不許可とされた場合、
多大なる影響を及ぼす事がある

例)XXXXクラウドの利用が禁止された、YYYYフレームワークの利用が禁止された

などなど。

これを、聖典駆動型メテオフォールと呼ぶ。

第九節:神罰

前述の「聖典」に背く行為を行った場合、対象者は厳重な神罰に処される。
対象者は下々の民に限らず、神々の場合もある。

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神罰の例

  • 発注金額を偽装し、着服した
  • セクハラをした
  • 会社のPCでSNSを更新しまくった
  • 通勤費をちょろまかした

神罰による堕天

聖典に対する重篤な違反を行った場合、前述の堕天が行われることがある。
これにより神々のパワーバランスが瓦解し、大規模なメテオフォールを誘発することも珍しくない。これを懲戒駆動メテオフォールと呼ぶ。

終節:Beyond the Time

ここまで、メテオフォール開発を企業レベルで導入するための手法
「スケールドメテオフォール開発」 について、その概要を説明してきた。
スケールドメテオフォール開発ではその災害の規模も各段に大きくなり、下々の民に抗う術は殆ど存在しない。

残された希望

しかし、メテオフォールでも砕けない例外が、聖典の他にもう一つ存在する。
それは*「人と人とのつながり」 である。

プロダクト/サービスが破壊されても、チームが破壊されても、文化が破壊されても、
そこで培われた人々の繋がりまでは破壊できない。

そして、人と人とのつながりを強化し、維持するフィールド、

それが

チャットツール(Slackとか)

あるいは

ライフストリーム

である。

メテオフォールによって砕かれたチーム、人々の想い、知恵、それらは全てライフストリームに還り、混ざり合うのである。

願わくばいつの日か、このライフストリームがメテオすら押し返す力を持つことを祈りつつ、まとめとしたい。

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マジで頼む。