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アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンの入れ歯にまつわる真実とは?

by pxhere

アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンにはさまざまな伝説がありますが、その中でも桜の木を切ったことを正直に告白した逸話と並びアメリカで有名なのが、「ワシントンは入れ歯をしていた」というもの。そんなワシントンの歯にまつわる伝説を、学術系メディアThe Conversationが解説しています。

George Washington's biggest battle? With his dentures, made from hippo ivory and maybe slaves' teeth
https://theconversation.com/george-washingtons-biggest-battle-with-his-dentures-made-from-hippo-ivory-and-maybe-slaves-teeth-119271

George Washington's Teeth · George Washington's Mount Vernon
https://www.mountvernon.org/george-washington/facts/washingtons-teeth/

ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話は後年の創作だという見方が大勢を占めていますが、ワシントンが歯について深刻な悩みを抱えていたというのは紛れもない事実です。若き日のワシントンはフレンチ・インディアン戦争に従軍していますが、この時から既に歯の悩みは始まっていたとされています。

というのも、戦争中には「飛び交う弾丸の音はまるで笛のようで、不思議な魅力がある」と弟への手紙に書いたワシントンですが、同時期の日記には「歯を抜くためにワトソン博士に5シリング払った」という一文も残されているからです。

また、アメリカの画家チャールズ・ウィルソン・ピールが残したワシントンの肖像画には、左頬に切り傷があるように見えるものがありますが、これは歯の膿を排出する切開手術によるものだといわれています。


ワシントンは決して歯の手入れを怠っていたわけではなく、むしろ積極的に行っていたこともわかっており、戦時中の記録だけでも数十本の歯ブラシと大量の歯磨き粉や口内用のチンキ剤を購入した形跡があるとのこと。しかし、その努力もむなしく、初代大統領に就任した57歳のころには、自前の歯はわずか1本しか残っていませんでした。

ニューヨーク医学アカデミーには、このころにワシントンが使っていた入れ歯が収蔵されています。

In honor of #PresidentsDay, here's an inside look at George Washington's lower denture and last remaining tooth that are part of our Library's collections, via @untappedcities: https://t.co/6fdObyid2T pic.twitter.com/1jswSTtzAF

— The New York Academy of Medicine (@NYAMNYC)


この下顎用の入れ歯は、ニューヨークの歯科医ジョン・グリーンウッド氏により作成されたもので、隙間が見えるのは、一本だけ残った自前の歯を通す穴があるためです。材料はカバの牙と人間の歯が使われていました。ワシントンは大規模な黒人奴隷農場も経営していたため、奴隷の歯を強制的に抜いて作ったものだといわれることもありますが、当時はお金を稼ぐ手段として歯を抜いて売ることが一般的に行われていたため、事実かどうかは分かっていません。


この入れ歯のために、ワシントンは人前で話すことを嫌っていたことが知られており、1793年3月4日にフィラデルフィアの上院議会で行われた2度目の就任演説はわずか2分と、歴代の大統領の就任演説としては最短でした。この演説で使われた単語の数はわずか135個で、簡潔なことで有名なリンカーンのゲティスバーグ演説の272個よりはるかに少ないものとなっています。

1本だけ残った自前の歯も長くは持たなかったようで、マウントバーノンにあるワシントンの私邸には金属製の総入れ歯も残っています。


当時は入れ歯安定剤などなかったため、ワシントンの総入れ歯はバネが開く力で、入れ歯を口内に押し付けるようにして保持していました。


しかし、この入れ歯は気を抜くとすぐにバネの力で口から飛び出してしまうため、きちんと口の中に収めておくためには、口をしっかりと閉じておく必要がありました。1ドル紙幣にもなった肖像画に描かれる、口を固く引き結んだワシントンの表情にはこうした秘密があったというわけです。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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