Pixelカメラの裏側にある「1タップ」と「写り」のせめぎ合い。中の人に魔法の秘密をインタビュー!

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Pixelカメラの裏側にある「1タップ」と「写り」のせめぎ合い。中の人に魔法の秘密をインタビュー!
マーク・レヴォイ氏と、アイザック・レイノルズ氏

3世代目となったGoogle Pixelのカメラの素晴らしさといったら。

Samsung、Apple、Huaweiなどの競合他社の端末の背面にはたくさんのセンサーやデュアルカメラなどを盛り盛り搭載していますが、Pixel 3と3aに関しては、 シングル・リアカメラでシンプルなハード設計を実現しています。

しかしPixel 3のカメラの12MPの解像度とf/1.8の絞り値というスペックは突出しているわけでもありません。他社のように48MPのセンサーとか、f/1.5の絞り値が搭載されているわけではないのに、Googleの最新のPixelが生み出す写真の類は目を見張るものがありますよね。

Google Pixelのカメラを作ってきた人たち

Pixelカメラのスペックが高いわけでもないのに、写真クオリティはかなりイケてるという現実。大きいレンズやセンサーを端末に詰め込んでカメラスペックで戦うという、これまでのスマートフォンのカメラ開発の流れとは相反するものです。

そこで、米Gizmodoでは、Googleのカメラに革新を起こしてきた有名な研究者であるマーク・レヴォイ(Marc Levoy)と、Pixelカメラチームのプロダクトマネージャー、アイザック・レイノルズ( Isaac Reynolds)にインタビューを行ないました。

現代No.1のカメラっ子? Googleに「眼」をもたらした男:マーク・レヴォイ

カメラの使い方はもっと自由だ!「百聞は一見にしかず」ってまさにそのとおりだなぁと、最近改めて感じています。なにかのレビューを読むにしてもまず写真が...

https://www.gizmodo.jp/2019/02/marc-levoy-the-google-visor.html

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Photo: Sam Rutherford/Gizmodo US

コンピュテーショナル・フォトグラフィー

高画質な写真を撮影するために必要なプロセスとは? それはコンピュテーショナル・フォトグラフィと総称される、ソフトウェア上で大量の写真を加工する技術なしでは語れません。

マーク・レヴォイは、コンピュテーショナル・フォトグラフィの研究分野がグーグルの実現していることよりも遥かに広いと前置きをしつつも、一言でいうと、コンピュータとソフトウェアが写真を生成するプロセス、もしくは、オリジナル写真よりも格段によく見えるように写真を生成する技術、と説明しました。

カメラはもう「脳」なしじゃ語れない:コンピュテーショナル・フォトグラフィーって知ってる?

賢いカメラに未来あり。気まぐれから始まったデジタルカメラ時代は、これまでに人工衛星、手持ちカメラ、胃カメラというように様々な進化を遂げてきました。...

https://www.gizmodo.jp/2019/01/computational-photography.html

これはPixelの「HDR+」カメラモードの原理で、このモードでは異なる露出で複数枚の写真を撮影し、それらを合成しながら影の部分や細部がより良く見えるように重ね合わせ、解像度やダイナミックレンジを強化しています。マーク・レヴォイによれば、他のスマートフォンのカメラと違い、Pixelのカメラはハイライトを吹き飛ばすことはほぼ無いとのこと。コンピュテーショナル・フォトグラフィのよって、Pixelで撮影された写真は「見た目」を定義されているのです。

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Photo: Sam Rutherford/Gizmodo US

たとえば上の写真のようなシーンでは、パッと見は、Pixelの写真が露出が足りないように感じるかもしれません。しかしよく見ると、Galaxy S10のショットはよく見ると夕日の細部まで表現できていないですよね。

使いやすさと写りのせめぎ合い

ソフトウェア・ファーストな撮影では、写真写りの良さだけを単に追求するだけではなく、カメラアプリの使いやすさも重要です。

マーク・レヴォイによれば、このバランスが独自の緊張感を生み出すとのこと。以前、Pixelチームにカメラの新機能の技術デモしたあとに生まれた課題は、この撮影結果をユーザーが何も考える必要がなく、直感的な操作で得られるようにカメラの利用体験をどう創るかということでした。

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Photo: Sam Rutherford (Gizmodo US)

夜景モード」は、そのさいたる例です。一旦「夜景モード」に設定した後に、細々と他の設定もしなくてはならないとしたら面倒臭くなりますよね。

実際は、「夜景モード」を有効にしてシャッターボタンを押すだけ。これだけで、Pixelはバックグラウンドで自動的に取り込める光量を判断し、機械学習を用いてユーザーの手ブレ具合を測定します。ここで測定された情報は、カメラのシャッタースピードを設定するための最低速度、カメラがキャプチャする必要があるフレーム数、および最適な画像を作成するためのその他の設定を決定するために利用されます。

この合理化された写真のアプローチ方法は、特に従来の一眼レフカメラやミラーレスカメラのコントロールに精通している人にとって、トレードオフと感じられるでしょう。他のスマートフォンのカメラアプリとは異なり、Pixelではシャッタースピード、露出補正、ISOなどを手動で設定する機能はありませんからね。 高品質とユーザーによるコントロールのバランスは、Pixelチームが常に課題として取り組んでいるものです。

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Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

アイザック・レイノルズは、「そのように複雑な操作=3タップ分のプロセスを、1タップで完遂できるユーザーインターフェイスを作れたら願ったり叶ったりです。しかしそれは不可能なので、最終的に1タップで済むようにしました」と話します。そして、ファーウェイやサムスンのようにAIによる写真補正を導入している企業のスマートフォンには、カメラコントロールを微調整できるプロモードが搭載されていますが、オートからマニュアルに切り替えると、残念ながらAI画像処理等が利用できなくなることも指摘。

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Photo: Sam Rutherford/Gizmodo US

ソフトウェア・アプローチの利点

Pixel 3のほぼ半額の400ドルという値段にも関わらず、Pixel 3aがハイエンド機種と同等の画質を提供できるのは、Pixelのカメラ機能のほとんどがソフトウェアによるものだからです。ほかにもこのアプローチの利点があって、たとえば「夜景モード」や「超解像ズーム」なんかはPixel 3とともに発表された新しい撮影モードでしたが、そのあとで初代PixelやPixel 2にもこの機能のアップデートが届きました。ひとつのスマホを2、3年使うことが多い近年では、嬉しい特徴ですよね。

残念ながら、Pixelカメラが手に入れる次の機能は何かと聞いたとき、マーク・レヴォイとアイザックレイノルズは明確に回答してくれませんでした。Pixel 4(仮)のリークを見ていると、次のPixelはデュアルリアカメラ、光学ズームを搭載してくるみたいですけどね。次世代のPixelの進化も楽しみに待ちたいと思います。例年通りであれば10月です!