温暖化のせいで、北極圏が火事だ。
今、北極圏の広い範囲で大規模な火災が発生しています。北極からアラスカ、グリーンランド、シベリアにかけての地域が記録的な猛暑に襲われていて、そのせいで森林火災が発生する事態になっているんです。衛星写真を見ると、その様子が恐ろしいほどよくわかります。
衛星画像処理の第一人者、ピエール・マルクーゼ氏の画像では、炎が北極圏の森林や泥炭地を襲う様子がはっきりと見えます。網目状に走る川やそびえ立つ山々、広大な森林の茂みなど、繊細な景色が、厚い煙の毛布に覆われてしまっています。
アラスカでは、今年だけでもすでに約64万ヘクタールが山火事の被害にあっています。7月初めには大火事の煙が都市部にも流れ込み、その影響でアラスカ最大の都市アンカレッジで観測史上最高の32.2度を記録しました。下の画像では、6月下旬と7月上旬にアンカレッジを飲み込んだ煙の発生源となったスワンレイクの山火事や、少し離れた場所で起きた別の火災の様子も映し出されています。


太平洋を挟んだシベリアでも、猛烈な暑さのせいで火災が発生しています。普段は凍ったり湿ったりしている泥炭地の茂みが、炎に包まれて制御不能状態に。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの火災専門家、トーマス・スミス氏はツイッターで「暑さで干上がった泥炭が燃えている可能性が高い」と指摘しています。
炭素が豊富な泥炭が燃えると、空気中に大量の二酸化炭素が放出される恐れがあるというので、心配です。しかも泥炭火災はいったん収まったように見えても、冬の間は地中でくすぶって、春にまた再燃する可能性もあるというから、恐ろしいですね。
下の写真はシベリア中央部バタガイとレナ川付近の火災の様子。


グリーンランドでも先週、山火事が起きました。ここは「氷の国」のはずなのに、グリーンランド西部の火事は過去3年間で2度目だというから、ちょっと普通じゃない感じです。これほどの火事は歴史上ほとんど例がないそうで、火災の規模はシベリアとアラスカほどではないけど、地球温暖化のせいで北極圏がやばいことになってるのは間違いなさそう。

欧州連合のコペルニクス計画でまとめられたデータによると、6月の火災で北極圏から放出されたCO2の量は、スウェーデンの年間排出量に匹敵するほど。地球全体が観測史上最悪の猛暑に見舞われて、北極圏でもうだるような暑さが続く中で発生した火災ですから。欧州当局もこれだけの山火事は「前例がない」と見解を述べています。
地球温暖化がすすめば、さらに猛暑になって、その結果山火事が増えて、それが二酸化炭素を大量放出して、そのせいでまたまた温暖化がすすむ、という悪夢の無限ループに…。
少なくとも1万年さかのぼれば、地球の北部を覆う寒帯林でこれだけの山火事が続くことはあり得なかったわけですから。今年の夏は地球規模の悩みが、また1つ増えそうです。