「N国党現象」の本質とは何か
「NHKから国民を守る党」(N国党)のメディアジャックが止まらない。
参院選直後のテレビ番組を席巻した後も、インターネットメディアを中心に話題が尽きない。民放の情報番組での「気持ち悪い」発言に端を発する「マツコ・デラックス出待ち騒動」や、批判の矛先を番組スポンサーにも向けてネット炎上を招いた「崎陽軒不買運動」等々、大手ニュースサイトからソーシャルメディアに至るまで、この夏の日本はN国党に見事に踊らされてしまった。
代表の立花孝志氏がYouTube上でネタばらししていたように、これらは党のことを宣伝するためにあえて仕掛けた「炎上商法」であり(額面通りに受け取るかどうかはさておき)、自らの政治活動を「プロレス」と公言して憚らない「立花劇場」にまんまと乗せられた格好だ。
しかし、N国党の登場とその支持層のポテンシャルを見極める上で、今回のような「炎上商法」のテクニックは、実のところ枝葉にすぎず根幹ではない。
現在拡大の兆しを見せている「N国党現象」の本質は、およそ次の2点に要約することができるだろう。
・直接民主主義的なものへの期待感が、YouTubeという「個人との距離感が近いメディア」によって再形成されている。
週刊文春の取材内容を暴露
8月に入って間もなく、ある事件が発生した。立花氏と「文春砲」のバトルだ。
取材のため、「週刊文春」からファックスで送信された質問状について立花氏は、緊急性のない事柄に「短い回答期限」を設定した同編集部を痛烈に批判した(その後、「週刊文春」8月29日号に掲載された記事に対して、立花氏は名誉棄損で訴える構えを見せている)。
動画の中で立花氏は、視聴者に対し、「金曜日の夜9時前に10項目の質問をファックスで送ってきて、日曜日の昼12時までに書面で回答しろというのをどう思いますか?」などと問いかけ、「TwitterのDMで口説いた女性との一晩だけの肉体関係が多い」などの噂の真偽を確かめる質問を読み上げ、「ネット上の噂をそのまま聞いてくる」と呆れ返りつつ身の潔白を主張した。
立花氏は、このようにYouTubeで質問状に次々と回答していき、「メディアに発言を切り取られ、一方的に書かれるリスク」に先手を打ってみせた。人気ユーチューバーが週刊誌の取材内容を逆に暴露し、自身のメディア(YouTubeチャンネル)で回答するというやり方は従来にないものだ。