女性が標的の殺人「フェミサイド」、8カ月で100件 対抗措置に5億超拠出へ=仏政府

Women look at a display of flowers as they stand at the site where a woman was found dead the day before, in Cagnes-sur-Mer on 2 September 2019, making her the 100th victim of femicide in France this year

画像提供, AFP

画像説明, 若い女性の遺体が見つかった現場には、花が手向けられていた

フランス南部カーニュ=シュル=メールの鉄道駅近くで1日、損傷した若い女性の遺体が見つかった。遺体は、ごみや木の枝、古びたキルトで隠されていた。近くに住む男性が、脚のようなものを目にし、通報した。

遺体で見つかったのは、サロメさん(21)。同国で今年発生した、女性を標的とした殺人「フェミサイド(女性殺し)」事件は、これで100件目となった。

仏政府は3日、家庭内暴力(DV)に関連した女性の殺害への対抗措置を講じると発表した。

腹や頭を踏みつけられる

仏メディアは、複数の隣人の話として、サロメさんは夜に路上で、パートナーの男性と口論になり、暴力を振るわれて殺害されたと報じている。

目撃者は、地元メディアに対し、「女性は思ったことをすべて、相手の男性に伝えていた。男性はそれが気に入らない様子だった。男性は女性を殴り、壁に向かって突き飛ばした。腹や頭を踏みつけていた」と証言した。

「フェミサイド」事件担当の地方検察庁による捜査の末、この女性のパートナーが逮捕された。

避難所の設置、警察への監査

エドゥアール・フィリップ首相は3日、自治体や関連機関の代表者や警察、裁判官や弁護士、閣僚らとの会議を開き、多数の緊急措置を発表した。

緊急措置には、来年から1000カ所の避難所や緊急宿泊施設の設置を開始することや、400カ所の警察署を監査し、女性からの訴えがどのように取り扱われているのかを確認することなどが含まれる。

また、「フェミサイド」対策に500万ユーロ(約5億8200万円)を投じるほか、相談手順の簡易化や、脅威にさらされている女性の保護の改善を行い、危害を加える恐れのあるパートナーを女性から早期に引き離すようにするという。

電気ショックを与えるブレスレット装着も

さらに首相は、DVで有罪になった者や、接近禁止命令を受けた者に対し、電気ショックを与えるブレスレットを装着し、女性をさらなる暴力から守るという案を打ち出した。

首相は、「DVは通常、性差別的な支配の中で起こる。それは我々の精神や慣習の中に深く関わっている。一部の男性は処罰を受けずに済んできた」と述べた。

一方、DV団体の代表者は、DV問題に効果的に対処するために、さらに多くの措置が必要だとしている。

仏政府は、最終的な措置について、今年11月に発表する方針。

多発する「フェミサイド」

フランスでは2018年、121件の「フェミサイド」事件が発生した。

今年に入ってからは、「フェミサイド」の発生件数は100件を超えている。仏南部で1日、92歳の女性が94歳の夫に殺害される事件があり、総数が101件となった。

EU統計局の2017年のデータによると、フランスでは、女性10万人あたり0.18人がパートナーに殺害された。欧州の中で、女性の殺害率が最も高い国の1つだという。

一方、スイスでは10万人あたり0.13人、イタリアでは0.11人、スペインでは0.12人だった。ドイツは0.23人と、高い割合だった。

女性への暴力に特化した対策

スペインでは今年6月、2003年に記録を開始して以降、1000件目となる「フェミサイド」が発生した。

同国では、女性への性暴力事件を専門とした、特別裁判所が設置されている。

医師や警察官、裁判官といった職業では、夫婦間暴力に対処するための訓練を受ける。また、案件に72時間以内に対処するため、警察はすべての訴えを裁判所に登録しなければならない。