サイエンス

外界と隔絶された地下2.4kmの水たまりに微生物が生息していることが判明

by StockSnap

科学者らによる調査が進行するにつれて、火山の噴火口や深海の熱水噴出孔などの極限環境で生息する微生物が、地球上には数多く存在することが明らかになっています。トロント大学の地質学者らの研究チームはカナダのキッドクリーク鉱山を調査し、なんと地下2.4kmの地点にたまっていた水から多くの微生物を発見したと報告しました。

‘Follow the Water’: Hydrogeochemical Constraints on Microbial Investigations 2.4 km Below Surface at the Kidd Creek Deep Fluid and Deep Life Observatory: Geomicrobiology Journal: Vol 0, No 0
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01490451.2019.1641770

Strange life forms found deep in a mine point to vast 'underground Galapagos'
https://www.nbcnews.com/mach/science/strange-life-forms-found-deep-mine-point-vast-underground-galapagos-ncna1050906

Scientists Discover Microbial Life 2.4 Km Underground in Depths of a Canadian Mine
https://www.sciencealert.com/scientists-discover-microbial-life-2-4-kilometres-deep-inside-a-canadian-mine


トロントの北西560km近い地点にあるキッドクリーク鉱山は亜鉛や銅を産出する鉱山で、世界で最も深い亜鉛・銅鉱山であることが知られています。鉱山の最大深度は3100mにも達し、海洋を除けば人間がアクセス可能な最も深い地点であるキッドクリーク鉱山の内部には、地上を含む外界から隔絶された環境が存在しています。

以前は生物にとって太陽の光が重要な要素であると考えられており、生物の存在範囲は惑星表面の薄い範囲にしかないと思われていましたが、近年では生物の存在範囲が従来の予想を超えて広がっていることが明らかになっています。そこで、地質学者のBarbara Sherwood Lollar氏らの研究チームは、キッドクリーク鉱山の内部にある地上から2.4kmも深くにある地点にたまっていた水のサンプルを採取し、生物が存在しているかどうかを調査しました。

鉱山の採掘によって人間がアクセス可能となった地下深くの領域は、非常に長い期間地表の空気や太陽光から隔絶されてきた場所で、サンプルとして採取された水も数百万年にわたって外界から遮断されてきたとみられています。採取されたサンプルが地表近くの水などで汚染されていないことを確かめてから、研究チームが分析を行ったところ、サンプルの水からは微生物が発見されました。サンプルから培養した微生物に食物源を与えて代謝活動を測定した結果、空気も日光もない場所で生息するこれらの微生物は、硫酸塩を栄養源にして生存していることが判明したとのこと。

by Pexels

Lollar氏は、サンプルの中に微生物がいるのを見られることは非常に素晴らしいと主張しています。「おそらく微生物が存在するだろうと確信していましたが、実際に仮説を裏付ける確固たる証拠を発見するのは長い道のりでした」と、Lollar氏は述べました。また、今回の発見は地下2.4kmの隔絶された空間という、非常に厳しい環境で微生物が発見されたという点だけが興味深いのではないとのこと。「地球上にはこのように極限環境で生息する微生物がそれほど珍しくないのではないか」という認識が高まる点も、Lollar氏にとっては興奮に値するそうです。

カーネギー研究所の鉱物学者であるRobert Hazen氏は、地中や海中の深い領域に生息する微生物の発見により、人間が考えていたよりも広範囲に多様な生物圏が存在することが明らかになったと主張します。Lollar氏の研究は、地球の地表から深い領域に生息する生物圏を包括的にマッピングする、Deep Carbon Observatoryという国際的プロジェクトの一環として行われました。プロジェクトチームは地球の深部に広がる生物圏について、多くの固有種が存在するガラパゴス諸島になぞらえて「地下のガラパゴス」と表現しています。

深部領域に生息する微生物は、人間が想像もつかないような環境で生息・繁殖することが可能です。たとえば深海の熱水噴出孔付近に生息するメタノピュルス・カンドレリという細菌は水の沸点を超える環境で繁殖可能であり、気圧の2万倍を超える圧力下で生息可能な微生物も発見されています。Lollar氏は「私たちは生物の限界を本当には理解していないことを知りました」とコメントしました。

by NIAID

Lollar氏はさらなる課題として、複数の極限環境における生物圏がそれぞれどのような関係を持っているのかという点に直面しています。「これらの生物圏は、およそ40億年前の生物発生という単一の起源を持っています」とLollar氏は指摘し、遺伝子を解析することによって地球深部に生息する微生物たちの遺伝子的なつながりを、1~2年以内に突き止めたいと述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
深海の微生物を土星の衛星「エンケラドゥス」と同様の環境で繁殖させることに成功 - GIGAZINE

光合成を行うはずのバクテリアが太陽の光の届かない地底で発見され科学者が驚愕 - GIGAZINE

海底下2400メートルで非常に少ないエネルギーで生存可能な微生物が発見される - GIGAZINE

金を引き寄せる菌の存在が確認される - GIGAZINE

30億年前から生き続ける微生物から採取された希少糖が天然の除草剤として作用することが判明 - GIGAZINE

なぜ清潔に保たれているはずのクリーンルーム内でも微生物が繁殖してしまうのか? - GIGAZINE

地球で生命が生まれたのと同じ環境が土星の衛星「エンケラドゥス」に存在すると最新研究で発表 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.