おいしくてコスパよし。部位を変えればいろんなレシピが楽しめる食卓の救世主といえば鶏肉。
我が家の食卓には毎週必ずといっていいほど鶏肉を使った料理が登場、困ったときに大活躍してくれている食材の一つなのですが、皆さんは調理する前に生のまま鶏肉を一度水で洗っていますか?
鶏肉は使う前に洗う?洗わない?
私はというと、なんとなく表面のべたつきが気になったり、肉から出ているドリップが気持ち悪く感じてしまい、調理前はシンクで鶏肉の表面を軽く洗うのが普通だと思っていました。
しかしアメリカの農務省(以下USDA)、疾病管理予防センター(以下CDC)は、調理前に鶏肉をキッチンのシンクで洗うのは絶対に止めるようにと強く注意喚起を促しています。
鶏肉を洗うと、鶏肉に付着している細菌があらゆるところに飛び散ってしまい、食中毒などに感染するリスクが上がるそう。
これまでに何年も生の鶏肉を洗い続けてきた私がこの記事を読んで一瞬にして青ざめてしまったのはいうまでもありません…。
鶏肉を洗う際に飛び散る水しぶきに注意
USDAによると、生の鶏肉を洗う際に水しぶきが飛び散り、キッチンの作業スペースや調理器具、また近くに置いている他の食べ物にまで有害なバクテリアが飛び散るため、二次被害、三次被害とどんどん菌が広がるきっかけとなるとのこと。
USDAはノースカロライナ州立大学と共同で、家庭で生の状態の肉をどのように取り扱うべきか、またその取り扱い方法が近くに置いている食べ物にどのような影響を及ぼすのかについての実験を行いました。
研究チームは300名を実験対象として集め、試験室内にあるキッチンで鶏肉とサラダを調理してもらいました。
そのうちの何名かは事前に食べ物を扱う際の衛生注意事項についてソーシャルメディアで知識をつけてもらい、その後で生の鶏肉を調理してもらいました。
多くの被験者はそのアドバイスに基づき、肉を処理しましたが、そのメッセージを見せずに調理してもらった被験者のうち、61%は生の鶏肉を調理前に洗っていました。
またそのうちの30%の被験者が調理したサラダにはチキンに付着していたバクテリアが付着していたのです。
野菜を洗ったり皮をむいている途中に野菜をシンクに落としてしまうことがありますが、そのまま拾ってしまうと知らず知らずのうちにシンクに付着している菌がその野菜にも移っている可能性が高いと言えるでしょう。
ここで衝撃的な画像を一つご紹介します。
左は一見きれいで清潔そうに見えますが、ブラックライトを当てると鶏肉を洗った際に飛び散った菌があちこちに付着しているのがよく分かります。
この中に落ちたものを拾ってお皿に戻している…と考えただけで恐ろしい気分になります。
お酢やレモンジュースに殺菌効果はなし
また、何名かの被験者は鶏肉をシンクに浸して洗ったり、水、もしくは洗剤やお酢、レモンジュースで洗っていました。
ノースカロライナ州立大学の食品安全スペシャリストで教授でもあるChapman氏は以下のように述べています。
微生物学の観点からみるとこれは大変恐ろしいことです。生の鶏肉をお酢やレモンジュースに浸してバクテリアが死滅するといったエビデンスは存在しません。
鶏肉を洗って菌がそこら中にばらまかれている状態にも関わらず、キッチンでは様々な下ごしらえが行なわれています。
ある被験者は鶏肉を洗ったばかりのシンクでレタスをザルに入れて洗っていました。
シンクの底に付着している菌のついた水が飛び散り、レタスにも菌が付着してしまっているはずです。
研究チームはここまで家庭で食中毒の危険性があるような行為が漫然と行なわれていることに非常に驚いたと述べているほどで、今回の実験で調理された食事には誰も手をつけませんでした。
調理が終わったキッチンのシンクやカウンターを調べてみると、被験者がきちんと掃除をした後にも関わらず、調味料などの入った入れ物の容器などあらゆるところに菌の付着が見受けられました。
毎年6人に1人が食中毒の被害に
CDCによると、毎年およそ4800万人、なんと6人に1人が食中毒にかかっているという統計を発表しています。
生の鶏肉から感染しやすいバクテリアの一種、サルモネラは毎年アメリカで100人近くが感染しています。
多くが下痢をしたり、発熱、胃の調子に不具合が出た後に体調は回復していますが、毎年400名近くがサルモネラ菌で命を落としているのです。
カンピロバクターという別のバクテリアもきちんと火の通っていない鶏肉から発見されており、これには毎年130万人が感染しているのです。
母親がそうしていたのを見ていたから、と自分も同じように鶏肉をキッチンで洗っている方は多いはず。
しかしその危険性については長い間取り上げられてきませんでした。
これまでにももしかすると食べ物が原因で何かしらに感染していたかもしれませんが、そのことに気づいていないだけの人も多くいるでしょう。
これまでも医者にかかったほどの重症にはなったことがないし、と今回の警告を軽視する方もいるかもしれませんが、特に子どもやお年寄りは免疫がそこまで高くないことから食中毒のリスクは健康な成人よりも高く危険です。
今一度台所に立つ人には正しい生肉の扱い方を学び直す必要があるかもしれません。
生肉を扱う際に気をつけるTo Doリスト
また鶏肉だけではなく、牛、豚など生肉全般などにも表面にバクテリアが潜んでいる可能性は高いため、家庭で生の肉を扱う際には、必ず以下の注意事項を実践をとNBC Newsは提案しています。
1:食材を扱う前と後には必ず入念な手洗いを。水またはお湯と石鹸で20秒間しっかりと手を洗い、ペーパータオルで拭いた後、そのペーパータオルは捨てましょう。
2:食材の下ごしらえをする前と後は、キッチンシンクやカウンターをしっかりと除菌する。
3:肉だけを扱う充分なスペースを確保する。近くにその他の食材や食事に使うお皿や箸、スプーンフォークなどを決して置かない。
4:肉用のサーモメーター(温度計)で中まできちんと火が通っているか確認する、推奨は 74℃前後。
5:生の肉を扱うまな板とその他の食材を扱うまな板は分ける。
6:肉を調理する前は鮮度を確認する。見た目、匂い、また実際に触ってみて、調理をして食べても安全かどうかをしっかりと自分の目で確かめる。
こんな症状が出たらすぐに受診を
また、実際に食中毒に感染した際には以下の症状が発症する可能性があります。
もし生の肉を扱った、食べた後でいくつか疑わしい症状が現れたらすぐに病院で医師に相談しましょう。
特に5歳以下の子ども、また65歳以上のお年寄り、また妊娠中の方は特に注意が必要です。
- 高熱(39度近い高熱の場合)
- 下痢が3日以上続いてもよくならない
- 血便
- 長く続くおう吐
- 脱水症状のサイン(尿が少ない、喉や口の乾燥、立ち上がった際のめまい)
ちょっとくらいなら大丈夫、とその油断が大きな感染に広がる可能性があります。
自分自身と自分の大切な家族を守るためにも、今一度家庭での生肉の取り扱い方を見直し、正しい知識で美味しく食事を楽しみましょう。
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