2013年、筆者は夫と暮らすため、アメリカのニューヨーク・シティからスウェーデンのヨーテボリに引っ越した。
スウェーデンで暮らし始めてから5年。振り返ってみると、スウェーデンとアメリカには生活の面でも仕事の面でも多くの違いがある。
スウェーデン人は気候の良いとき、アメリカ人以上に屋外で過ごす時間を大切にする。
そして、スウェーデンの企業はアメリカ企業よりも組織の上下関係がフラットだ。
そして、わたしはスウェーデンとアメリカのワーク・ライフ・バランスに対する考え方の大きな違いにも気付かされた。
たっぷりな育児休暇から5週間の有給休暇まで、スウェーデンからアメリカが学べることは多い。
ワーク・ライフ・バランスについて、スウェーデンがアメリカを大きくリードしている5つの分野を紹介しよう。
1. スウェーデンでは性別に関係なく、全ての親にたっぷりの育児休暇が与えられる
親にとって、子どもを持つことは楽しみであり、恐怖でもある。
アメリカでは多くの親が、生まれたばかりの子どもや自分自身を労わるために十分な休暇を取る余裕がなく、従業員に有給の育児休暇を与えるよう企業に命じる法律もない。
スウェーデンでは、生まれたばかりの子を持つ母親に休暇が与えられるだけでなく、そのパートナーにも母親をサポートし、子どもとの生活に慣れるため、子どもが自宅に来てから60日以内に10日間の休暇を取る権利が認められている。
その間、給与の約80%も支払われる。同じルールは、養子を迎え入れた家庭にも適用される。
さらに、スウェーデンでは子を持つ親に合計480日の休暇を取る権利が認められている。
このうち390日は子が生まれる前の給与の約80%、最高で1日あたり約100ドルが、残り90日は1日あたり約20ドルが支払われる。
480日の休暇は2人の親の間で分けることができるが、あらかじめそれぞれの親に90日ずつは割り振られている。
480日全ての休暇を使うには、子どもを産んでいない方の親が子育てのために90日の休暇を取らなければならない。
そして今、スウェーデンの育児休暇に関する法律は異性愛によらない、(生まれ持った性別と心の性が一致している)シスジェンダーの男女を世帯主とする 「伝統的な構造」でない家庭をもカバーしようと、さらなる変化を遂げている。
2. 全員に少なくとも5週間の有給休暇が与えられる
時には誰もが仕事を離れ、充電する必要がある。複数の研究が、休暇を取ることで生産性が向上し、ストレスが低下、メンタルヘルスにプラスの効果があると示している。
アメリカでも、多くの従業員に有給休暇が与えられているが、5週間近い休暇を取れる人はまずいない。
スウェーデンでは、5週間もしくは25営業日の休暇が保証されている。
「有給休暇法(Semesterlagen)」と呼ばれるものがあり、従業員に5週間の有給休暇の権利を認めるだけでなく、このうち4週間は6月、7月、8月のどこかで連続して取る権利を認めている。
3. スウェーデンでは、体調不良による長期間の休みにペナルティーを科すことはない
病気にかかりたい人はいないし、体調の悪い人にオフィスに来てもらいたい人もいない。
アメリカでは、体調不良による休暇に関するルールは企業によってさまざまだが、多くの人はからだの調子が悪くても働かざるを得ないと感じている。
一方、スウェーデンでは全員に有給の体調不良による休暇が認められている。
アメリカでは体調不良が長引くと、規定の体調不良による休暇の日数を使い果たし、通常の有給休暇で補てんしなければならないが、スウェーデンでは休んだ日数に関係なく、給与の20%を差し引かれるだけだ。
また、スウェーデンでは医師の証明書なしで連続7日間まで体調不良による休暇を取ることができる。
4. 子どもの体調不良でも、有給休暇を取ることができる
アメリカでは、体調の悪い子どもの面倒を見るため、自身のたまった病欠用の休みを使うことが多い。
だが、幸運なことに、アメリカには子どもの長期療養が必要な場合、育児介護休業法(FMLA)がある。
FMLAによって、親は病気の子どもと家にいることができるが、この法律は12カ月間のうち12週間の無給の就労保障休暇の権利を従業員に与えるというものだ。
つまり、経済的に苦しい状況になり得る。
スウェーデンでは、病気の子どもを持つ親を支援するシステム「vård av barn」がある。
これは病気の子どもの面倒を見るため、親に有給休暇を取る権利を与えるものだ。
育児休暇と同じく、休暇中は給与の約80%、1日あたり最大100ドルが支払われ、年間120日まで取得することが認められている。
このシステムがあることで、突然、経済的に困窮することなく、自宅に留まり、子どもの看病をすることができる。
5. アメリカよりも仕事とプライベートの区別がはっきりしている
仕事とプライベートの時間の健全な区別は、ストレスやメンタルヘルスにとって重要だ。
もちろん、その区別をどれだけできるかは、あなたの仕事上のポジションにもよる。
だが、一般的なスウェーデンの企業では、勤務時間以外にわざわざ連絡を取ろうとはしない。
わたしが知っているアメリカで働く多くの人は、あり得ないと思うだろう。
勤務時間外や週末に仕事の連絡が来るのは当たり前で、問題だとも思われず、むしろ仕事の一環と考えられている。
中には、そういった働き方で問題ないという人もいるが、職場以外での従業員の時間を尊重しようとする文化は良いものだ。
わたしが話したスウェーデンの友人の大半は、雇い主は従業員のオフィスの外で過ごす時間を尊重し、本当にどうしても必要なときだけ連絡してくるという。
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Image: Flickr, Getty Images, Shutterstock.com
BUSINESS INSIDER JAPANより転載(2019.08.31)