偏食で失明って怖すぎる。何がどうなってそうなった?

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偏食で失明って怖すぎる。何がどうなってそうなった?
Image: shutterstock

近所で毎日フライドポテト食べてたそうですよ…。

イギリスの10代男子がチップスやジャンクフードばかり食べたら慢性栄養失調になって半分失明したという衝撃のニュースが舞い込んできました。

英ブリストル大学が、米国内科学会の学会誌「Annals of Internal Medicine」に発表したものです。ちょっと流れを整理してみましょう。

事実経過

1)「疲れやすい」と14歳のときかかりつけのお医者さまに相談

体に別状はなく、薬の服用もなし。異常なことといっても「偏食気味」だという本人の言葉だけでした。検査してみたら確かにビタミンB12が不足していて、貧血ぎみなことがわかったので、とりあえずB12を処方して正しい食生活を指導しました。

2)1年後、耳が遠くなる症状が出て、別の専門医に紹介される。

同時に、目が見えづらくなる症状も出たのですが、脳をスキャンしても、通常の目の検査をしても原因は特定できず。

3)なんら治療を施せないまま2年が過ぎ、視力はみるみる減退。

眼科に行ったときには時すでに遅く、視神経障害の段階に入っていました。遺伝性疾患まで含め、いろいろ検査をしてみたのですが、原因は依然不明のままです。精密検査ではビタミンB12の不足が確認されたので普段の食生活を聞いてみたら…。

小学校のときから「噛み応えのある」食べ物は全部避けて、ほぼチップス、白パン、加工肉のハム、ソーセージしか食べていない。B12ビタミンの注射ももうやめた。

…と答えたんですね。さらにくわしく調べてみたら、銅、セレンとビタミンDも不足していて、骨密度(ミネラル含有量)が異常に低いことがわかりました。ビタミンDが不足すると骨が弱くなるっていうのは、よく聞きますが、今回のケースでは「視覚と聴覚が弱まる原因と見ることもできる」と研究班は発表しています。

レアケース

栄養失調で目が見えなくなるのは今の時代でもまったくない話ではないですけど、貧しい国ならいざ知らず、先進国では極めてレアケースと言えます。なまじB12不足を補う治療を受けて安心し切っていたこと。また、検査でも「低~正常」という数値が出てしまっていたこと。これが、正確な診断が遅れた原因かもしれません。一般的なB12欠乏症の検査は信頼度抜群ですけど、貧血気味の人は体内の抗体の影響で正しい数値が出ないこともありますからね…。

ここまで読んで「どうしよう、それぐらいの偏食は自分もしてる!」と焦ってる人もたくさんいると思いますけど、青年の偏食はかなり極端で、好き嫌いのレベルとは次元の異なる、人体に悪影響があるタイプのものです。最近「精神障害の診断と統計の手引き(DSM)」の基準に加えられた「拒否型偏食障害(avoidant-restrictive food intake disorder)」の基準に完全に当てはまると医師団は説明しています。体が受け付けないってことで、これに罹ると体重が減ったりしますけど、BMI(体重kgを身長mの2乗で割った肥満指数)は割と正常な場合も多いので初期診断はとても難しいんですね。

栄養失調を補うサプリを服用し、摂食障害の精神カウンセリングも受けたおかげで視力低下は止まりました。ただ、失った視力が元に戻ることはありませんでした。

現在

青年は現在19歳。研究報告書では近況はあまりくわしく書かれていません。ただ、母親が英メディアの Telegraphに2年後に語ったところでは、サプリとカウンセリングの効果は思うように上がらず、難聴と弱視の問題は続いているとのことでした。

「今は人と会うこともありません。中退後、大学に入ってITコースを履修したんですが、それも途中であきらめなければならなくなりました。もう何も見えないし、聴こえなくなってしまったからです」(Telegraphより)