先日、全米オープンテニス女子3回戦のココ・ガウフ対大坂なおみの試合を見ていた人は、試合のスコアや詳細は覚えていなくても、負けてしまった15歳のココ・ガウフ選手を大坂なおみ選手が慰めたシーンは覚えているのではないでしょうか。

自分が大坂なおみ選手の親だったら、大舞台で勝利を収めたことよりも、対戦相手に優しさや思いやりを見せたことを誇りに思うはずです。

育児で見落とされがちな、誠実さや優しさ

心温まる瞬間のあったこの試合のちょうど2日前、ライターのAnna Nordbergは、親は自分の子どもの頑張りや粘り強さを育むことに力を入れるあまり、誠実さや優しさのような性格を育むことが疎かになっていると、ワシントン・ポスト紙に書いていました。

臨床心理学者のLisa Damourは、大人の幸福度は学業や仕事の成功とはほとんど相関関係がないと、Nordbergに語っています。

幸福度と関係があるのは、良質な人間関係、目的意識、得意なことをやっているという感覚などです。

親としてできることを大局的に考えるのであれば、誠実で思いやりのある子どもを育てることでしょう。

誠実で思いやりがあると、人はより良い人間関係が保て、気遣いができる傾向にあります。また、不誠実でもなく、自分にとって価値あるものを追求するようになるのです。

当たり前ことのように思えるかもしれません。親が子どもにいい人間になって欲しいと思うのは当然です。親切で、思いやりがあって、共感のできる人間になって欲しいものです。

親は子どもの「倫理性や思いやり」より「成功や幸福」を気にしている

子どもには、困難な状況でも、目標に向かって懸命に努力して欲しいものですが、身の回りの人たちの気持ちよりも、個人的な成功を重視するような人間にはなって欲しくないでしょう。

ところが、どうやら私たち親は、子どもに対してそのことについてうまく教育できていないようです。少なくとも「The Atlantic」に掲載された2014年の研究では、次のように論じられています。

96%の親は、倫理的で思いやりのある子どもに育てたいと言っており、道徳心を育むのは「必須ではなくても、非常に重要」だと述べていますが、調査対象の若者の80%は、自分の親は「他人に対する思いやりよりも、成功や幸福の方が気がかりだ」と報告されています。

ほぼ同じ割合で、先生は生徒に思いやりよりも成績を優先させると報告されています。

「自分の親は、学校やクラスの仲間を思いやる人間であることより、クラスでいい成績を取っていることの方が誇りに思う」という意見に同意する学生は、同意しない学生の約3倍でした。

親の背中を見せて、子どもに教える

では、共感を大切にするだけでなく、実際に共感するように働きかけるにはどうすればいいのでしょうか?まずは自分が手本になることから始めましょう。

子どもは、親が言っていることではなく、親がやっていることを行なう傾向にあります。ご近所のお年寄りのために歩道の雪かきをしたり、地元のフードバンク(食料配給施設)でボランティアをしたり、クリスマスやお正月に困っている親戚にプレゼントを贈ったりする姿を、子どもに見せましょう。

そして、子どもが親切にしているのを見かけたら、褒めて、褒めて、褒めまくります。

ただし、Nordbergは、親は「子どもが自発的にそうするのを待つのではなく、共感し、協力し合い、親切にする」機会をつくるべきだとも書いています。親は、子どもを思いやりのある人間にする人にならなければなりません。

年長の子どもには、弟や妹でも、学校のメンターやチューターとしてでも、小さな子どもを助けるよう協力を求めましょう。問題を解決するアイデアを子どもにも考えてもらいましょう。

台所のテーブルを片付け、お礼状のハガキやカードを置いておけば、子どもは実際にお礼状を書くようになります。

子どもが親切にできるタイミングを見つけてあげれば、子どもは共感力を身につけることができ、親がそのような性格を大切にしていることもわかります。

そうすればいつの日か、あなたの子どもも対戦相手を慰められるテニスのスター選手になり、世界中がそれを見て称賛するかもしれません。

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Image: Getty Images

Source: The Atlantic, The Washington Post, ESPN

Meghan Moravcik Walbert - Lifehacker US[原文