私が「言葉の持つ力というのは侮れないんだから…」と言い始めると、息子はいつも私が言い終わらないうちに「だから、きちんと言葉を選ばなきゃいけないんだよね、わかってる」と言います。
ライターとして、私は言葉選びや言葉の持つ美しさを非常に重視しています。しかし、私が本当に言いたかったのは「言葉に出す前に考えなさい」ということ。
自分が言おうとしていることで、誰かの気持ちを傷つけないか考えて欲しいのです。
相手の顔が見えないタイピングこそ注意が必要
言葉に出す前に考えるというのは、ほとんどの人が生きていく間に磨くスキル。うまくできる人もいれば、そうでない人もいます。言葉を話すよりもむしろ相手の顔が見えないタイピングの方が、誤解や断絶という別の要素が加わりやすいのです。
息子はまだ、会話といえばメールや投稿ではなく、話すことがほとんどの年齢。しかし、これからの時代、今の子どもたち世代は、実際に会うよりもオンラインでコミュニケーションする方が多くなるでしょう。ですから、アドバイスも「言葉を話したり、入力したり、“送信したり”する前に考えなさい」と変える必要があります。
相手への影響を配慮するために親が出来ること
子どもと若者の心理療法士であり、子育ての先生でもあるKatie Hurleyは、自分の発言や冗談、からかって言ったことがどれほど相手に影響を与えるか気を配る方法を、親は子どもが10代の間に学ばせることができると、ワシントン・ポスト紙に書いていました。
学生とのメールやSNSでの交流を通して何度も見てきたのは、スクリーン越しでは共感や思いやりが欠如すること。
子どものグループは、自分のコメントがスクリーンの向こうの人にどれほど影響を与えるかを考えずに、別の子どもを標的にします。多くの子どもが、たった1つや2つのコメントで壊滅的なダメージを受けます。
子どもが結託して思いやりのない言葉を吐いたり、行動をしたりするのは、何も今に始まったことではありませんし、完全にスマートフォンやSNSが悪いのです。
しかし、臨床心理学者であり作家でもあるJohn Duffy氏は、「実際に相手が目の前にいなかったり、存在を感じられない時は、思いやりや共感に欠けたコミュニケーションをするのはかなり簡単だ」とワシントン・ポスト紙に語っています。
これは納得です。成熟した大人と思しき人が、ニュース記事のコメントやツイートでそのようなことをしているのを何度も目にしているのではないでしょうか。
そして「その人の目の前では絶対に言えないくせに」と思ったのではないかと思います。
匿名性によって勇気づけられただけでなく、書かれた言葉は心情的に切り離されたような感じがするからです。10代の子どもが同じようなことをしても不思議はありません。
書いた言葉と話した言葉の違いに気づかせる
Hurley氏は、これに対抗する方法として、子どもに自分の書いたメッセージを送信する前に音読させると書いていました。
Hurley氏は自身のオフィスで、若者のクライアントに実際に自分のメッセージを音読させて、エクササイズのようにやらせています。
子どもたちからスマホを借りてメッセージを読み上げると、子どもたちは自分の言葉(と友だちからの返信)を実際の声で聞くことになります。
怒り、痛み、哀しみ、妬みを聞きます。すると、感じ方が変わります。
小さな画面で言葉を読んだり書いたりすると、その言葉に付随する気持ちを感じないように、感情的に距離をおきます。しかし、背中合わせに座って、2人の人間がメッセージや投稿を声に出して読むと、その感情に浸ることになります。
言葉がネガティブな場合は、声に出して読むのに苦悶します。しかし、言葉がポジティブであれば、少し穏やかになります。
10代の子どもは、夕食の席でこのようなエクササイズをしたがらないでしょう。しかし、自分でメールを送る前に、書いた言葉を声に出して読む習慣を身につけさせることはできます。
例えば、学校に提出するレポートや、上司へのメールを書いていて、特定の段落やセクションで苦労している時は、声に出して読み上げてもらいましょう。このようなあまり感情的ではない状況でも、書いた言葉と話した言葉の違いを感じられるようになります。
また、自分自身が実践することで、子どものお手本となることもできます。
「ねえ、この間また遅刻したことについてEmilyおばさんにメールを送ろうと思って。今声に出して読んでみたら、ちょっと厳しい気がするんだけど、どう思う?」というような感じです。
結局のところ、これを習慣にしたところで誰も傷つかないので、ぜひやってみてください。
あわせて読みたい
Source: ワシントン・ポスト紙
Meghan Moravcik Walbert - Lifehacker US[原文]