タイタンの巨人よ、寄り添え給え。
新しい「Apple Watch Series 5」は、前モデル「Apple Watch Series 4」とそれほど違いません。いや、もっと率直に言ってしまいましょう。ブラインドテストしてもわかんないくらい、サイズもディスプレイもおんなじです。CPUやストレージなど、中身が強化されています。
ではもっとも変化があったのはどこかといったら、材質面。アルミとステンレススチールに加えて、「Apple Watch Edition」枠にはセラミックが復活し、チタニウムが新規に追加されました。Apple Watchとチタンが初めて出会ったのです。
ということで「チタンのApple Watchってどーなのよ」な視点でもちょもちょと考えてみました。チタンという金属の性質については、この記事を読めばキミももうチタン博士!
プロダクトそのものが放つ、オトナな魅力
アンボックスでもお伝えした通り、つや消しのアルミともメタリックなステンレススチールとも違う、ザ・金属を感じさせる質感はとても魅力的。銀過ぎない金属感といいますか、金属がもつ冷たさがそれほど感じられず、目にも肌にも優しい印象です。
じゃあこのチタンは、装着者にどんな効果をもたらすのか。そもそも皆さんはApple Watchの材質を選ぶ時は何目線で選びますか? 価格、付け心地、頑丈さ、ファッション性? 色んな要素があることでしょう。
で、ファッションという部分に注目すると、今年のiPhone、というかAppleは、ファッション性をより意識してるんじゃあないかと思いまして。であれば、腕時計たるApple Watchがファッショナブル度をあげていないワケがない。
そもそもチタンという素材そのものが腕時計の素材として重用されていることを思えば、Apple Watchのチタン化はApple Watchがより時計度を増そうとしてることの証左では!ないのか!
そこまで深読みするかはさておいて、装着してみてもカッコいいのは事実。腕時計として馴染む、実に馴染む。もしかしたら今までの材質でもっとも馴染むんじゃあないか?
アルミ、ステンレススチールと比較
残念ながらセラミックモデルは手元になかったため、アルミモデル、ステンレススチールモデルと比較してみることにしました。「ファッションに合うかどうかなんて主観なのでは?」と、えぇ、承知しています。でも比較によってそれぞれの個性も見えてくるはず。それが、チタンを選ぶ理由に繋がる可能性もあるはずです。
まずはアルミのシルバーモデルから。アルミの質感で連想しやすいのは、やはりMacですね。触れたときのすべすべ感や見た目の清潔さは折り紙付きです。
そうそう、Apple Watchといえばこんな感じ。値段も一番手頃ですから、アルミ=カジュアルなApple Watchという印象があります。Apple Watchがカジュアルかどうかは置いときましょう。考えると胃がキュってなるから。
お次はステンレススチールのシルバー。うーむ、傷が目立つ。このステンの感じって、懐かしきiPodの背面の頃から変わってませんよね。傷だらけのiPodは、それはそれは愛着が湧いたものです。
この圧倒的光沢感、これぞステンレスの輝き! 去年Apple Watch Series 4が発売された時「アルミよりステンレスのがカッコいいなー」と感じたのを覚えています。アルミと並べると圧倒的に存在感があるし、それに頑丈だし。逆にこの光沢の主張が強すぎと感じる人もいるでしょうし、そんな人にはお値打ちなアルミだけが選択肢として残っていました。今までは。
いいとこ取り+希少さ≒ファッション?
ひるがえってチタンは、アルミのような主張しすぎない金属感をたたえつつ、ステンレススチールのような頑丈さも備えています。言ってしまえばアルミとステンレスのいいとこ取り。それに、今までApple Watchにはなかったテクスチャーであるということで、僕たちにとっても目新しく感じられます。
珍しさはそれだけでファッションです。でも、チタン素材の腕時計そのものは珍しいってわけでもない。「Apple Watchのチタン」だから、珍しいんです。当たり前じゃないかって? えぇ、えぇ。でもね、言葉でわかっていても実物を見て触ってみるととあら不思議、クールで新鮮に見えて、欲しくなってしまうのです…。
あとはもうビジュアルですよね。銀とも銅とも言えぬ微妙な色味は、アクセサリーとしても程よい落ち着きがあります。この程良さはアルミやステンレススチールには感じられなかったし、どちらかというと今までは「Apple Watchだけ浮いてる」という状況そのものを楽しんでいたような気がします。これもまた、珍しさのファッション。
Apple Watchは時計になった
こうした込み入った事情を一言で表したのが、編集部員の佐々木が漏らしたこの一言です。
チタンになってほんとに時計になったんだなぁ。
Apple WatchはApple Watchだったから、僕たちは熱狂していたんでしょう。でも、2015年にApple Watchが生まれて今年で4年。新ジャンルも4年経てばおニュー感が減ってくるもんです。そこにはジャンルが浸透してきたんだなぁという喜びもあるし、僕たちが焦がれた熱狂はもう過去のものなんだという悲しみもある。
でもでも、現状のチタンモデルはハイエンドな「Apple Watch Edition」枠ですし、普及しているチタン製腕時計だって買いやすい値段でもないのですから、まだまだApple Watchそのものにはワクワクできるでしょう。大事なのは、そうした属性もApple Watchは持つようになったよという事実です。
文化的な目線で考えるなら、これからスマートデバイスが普及して僕たちの日常に寄り添うためには、衣類レベルまで生活に溶け込むのが良策。であるなら、いつまでも「ほらガジェットだよー!」なノリではいられません。夢見る林檎じゃいられない。Apple Watchは、僕たちの生活に近づくためにチタンの衣をまとったのです。
…もしかして、こうした日常性に接近するAppleの姿勢にイノベーションの撤退を感じてしまった人が、何かと嘆いていたりするんだろうか…。三眼レンズのようなわかりやすい変化ではなく、僕たちの度肝と常識を穿つような一撃を、いつまでも待ち続けている…?
ちょいと脱線しましたね。そんなわけで、チタンになったApple Watchは、今までのApple Watchよりも時計になってます。ステンレススチールに1万円追加するだけで、より腕時計なApple Watchが手に入ることを覚えておいてください。