とにかく言いたいのは「完成度は高い」ということです。
交換レンズや独自のセンサー Foveonで有名な株式会社シグマから10月25日に発売されるコンパクトなフルサイズミラーレス「SIGMA fp」を触ってきました。コンパクトというか、現状フルサイズセンサーを搭載したレンズ交換式ミラーレスとしては最小・最軽量です。
SIGMA fpは非常に独特なコンセプトをもった製品で、発表時には大いに話題になりました。
・35mmフルサイズ裏面照射型ベイヤーCMOSセンサーを採用(有効画素数2460万)
・サイズが既存のフルサイズミラーレスより一回りほど小さい
・重量も50g以上軽い
・その代わりファインダーやグリップなどがない
・もし必要なら拡張アクセサリとして取り付ける
小型軽量なフルサイズ“以外の部分”をそぎ落としたカメラ、とでも言えましょう。「必要な機能があればアクセサリで補ってね」ということであり、自分好みにカスタムできるということでもあります。
「必要な性能までそぎ落としちゃってない?」なんてちょっといじわるな目線で使っていたのですが、実によくできていると感じました。お財布がピンチを迎えそうです。
キットレンズをつけると「フルサイズ・スナップシューター」に
今回は、キットレンズとなる45mm F2.8 DG DN | Contemporaryをつけてスチール中心に使ってみました。使用感は良好。AFは爆速ではありませんが、十分に高速。全体的にレスポンスがよく、さくさく撮れて気持ちがいいです。既存の製品より小型化してきたということで、熱がこもりやすく動作不安定になったりするのでは…と思っていたのですが、連写したり動画を撮ったりしても発熱はすれども動作は安定していました。非常にしっかりした作りです。
基本的な性能で問題がないとなると、既存のフルサイズミラーレス一眼よりも一回り小さいというところが輝きます。ふだん使いのカバンに潜ませておき、適宜取り出して撮影、なんてことがやりやすいです。持ち歩いてると、移動中に一瞬だけ足をとめて撮影を自然にやっちゃう。キットレンズとの組み合わせだとすんごい気安いカメラになりますね。リコーのコンデジ GR IIIのフルサイズ版みたいな印象です(GR IIIもファインダーないですけどめちゃくちゃ撮れるカメラですし)。
さすがにコンデジほどの携帯性ではありませんが、出てくる写真がこんな感じなんですよね。
持ち運びのしやすさに対して画質が良すぎる。必要十分以上の精細感・質感・解像感です。フルサイズという特権を雑に行使できてしまうというのは、非常に贅沢な体験だと言えるでしょう。
しかも、レンズを交換したりアクセサリで機能拡張することでSIGMA fpはその性格を大きく変えると思われます。ここまで述べてきたことはSIGMA fpの一側面に過ぎず、まだまだ別の可能性を秘めています(グリップの位置を変えて縦持ち専用機に変えるとか楽しそう)。シグマは今後、SIGMA fp向けのレンズを開発していくとのこと。現状、底が見えないカメラだと思います。
動画撮影時はジンバルや三脚が欲しい
SIGMA fpには本体内光学式手ブレ補正がありません。電子式手ブレ補正があるのですが、カメラを向ける先を変えたりすると、オンでも気になる感じのブレが入るかなぁ(レンズもレンズ内手ブレ補正非対応だったので、別のレンズにするとまた変わると思いますが)。完全に手ブレしないように手持ちで撮るのはさすがにしんどく、ここは素直にジンバルなどに頼るべきかなと。
映像そのものはやはり綺麗です。今回は、上限であるUHD 4K(3840×2160)29.97pで撮影しています。
動画に関しては、静画に比べてぐっと敷居が高いように感じます。選択できる動画フォーマットはCinemaDNGとMOV: H.264。前者の編集には専門的な映像ソフトウェアが必要になりますし、Windowsではデフォルトだと後者は読み込めません。動画撮影時のインターフェースがデフォルトだと映像製作業界標準のものになっているなど、ガチの映像製作を志向する人向けに見えます。
ひとまず、小型軽量で高画質なカメラが今欲しいという人は検討してみる価値がある、とは言っていい気がします。キットレンズをつけて街撮りするだけでもかなり楽しいので。出来も小型さをウリにするために無理矢理フルサイズセンサーを詰め込んだだけ、みたいな水準ではなく、相性さえよければ長く使っていけるではずですし。
シグマはSIGMA fpの体験会を10月25日に東京で開催します。SDカードを挿してデータ持ち帰りも可、予約等も不要とのことなので、気になっている人はぜひ足を運んで実際に触れてみてください。
Source: 株式会社シグマ