国立競技場「選手間近」「迫力ある」 サッカー天皇杯
2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場で1日、サッカーの天皇杯全日本選手権の決勝が行われた。競技場の完成後、初めて開催されたスポーツの公式戦。観客席からは「選手を間近に感じた」「声援の迫力がすごい」と、臨場感に満足する声が相次いだ。
東京大会の開閉会式や陸上競技などの舞台となる国立競技場。臨場感が得られるよう、観客席はフィールドを包み込むようなすり鉢状の3層スタンドの構造となっている。この日は5万7597人のサポーターが駆けつけた。
「とにかく選手と距離が近く、選手と同じような目線の高さで楽しめた」。家族で観戦に訪れた東京都板橋区の女性会社員(35)はフィールドに最も近い1階から観戦した。「ピッチの手前に陸上トラックがあると感じさせない距離感で、パス一つをとってもプレーに迫力があった」
試合では2つのゴールシーンが生まれた。1階の前から10列目から妻と観戦した神戸市の会社員、谷川幸司さん(50)は「サポーターの声が反響しやすいのかまとまって聞こえ、とても一体感がある。6万人規模の大きなスタジアムで、これだけ臨場感があるのは素晴らしい」と話した。
上層の席でも臨場感を損なわないよう、最も急な3層目(4~5階)の傾斜は約34度。スキージャンプのジャンプ台に匹敵する。
4階から観戦した静岡県牧之原市の会社員、杉田素之さん(45)は「あまり見えないと覚悟してきたが、ピッチを見下ろすような眺めでゴールの様子も近く感じた」と振り返る。
バリアフリーに配慮したつくりも特徴の一つだ。多目的シートや同伴者用のスペースなどを備える「アクセシブルトイレ」は約90カ所に上る。
「他のスタジアムだとトイレで並ぶが、今日はスッと入れた」。1階で観戦した車いす利用者の男性(63)=埼玉県戸田市=は満足げ。この日は地下鉄の最寄り駅から会場に入った。一緒に訪れた息子で会社員の男性(31)は「駅を出てから(段差などで苦労することなく)難なく来られた」と振り返った。
そのうえで「コンコースの広さは申し分ないが、席を探す人たちで混雑した時に車いすだと通りにくい。案内役を増やすなど、もう少し人の流れをスムーズにすると良いのでは」と話していた。
天皇杯は五輪に向けたテスト大会も兼ね、この日は東京五輪の大会組織委員会の関係者も視察に訪れた。幹部の一人は「これだけの観客がいる中、とても意義のあるテストの機会になった。課題を洗い出し、どういう対応ができるか検討を進めたい」と話した。