ニコン、リコー、キヤノン、ソニーに聞く「ライバル社の製品、どう思ってます?」 :ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

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ニコン、リコー、キヤノン、ソニーに聞く「ライバル社の製品、どう思ってます?」 :ガジェットメーカーさんいらっしゃい!
写真左からキヤノン、リコー、ニコン、ソニーの商品企画担当

この記事は2019年の人気企画「メーカさんいらっしゃい」シリーズの再掲です。いずれも大ボリュームの対談ですので、時間のあるお正月にまとめてどうぞ!

伏せ字も覚悟していました。

日々、いろいろなガジェットを触っては、あーだこーだ語っているギズモード編集部。

ココがいい、ココが悪いなんてことを好き勝手に言っているわけですが、「メーカーさん自身は自社製品の魅力をどう考えているの?」「ライバル社の製品についてどう思っている?」そんな疑問が湧いてきたわけです。ギズモードの記事に対しても「ちょっと、そこは違うんじゃないの?」なんて意見があるかもしれない。

そこで思いついた企画が「ガジェットメーカーさんいらっしゃい!」です。

ガジェットメーカーの中の人をお呼びして、ざっくばらんに自社製品や他社製品のこと、ギズモードに対しての不平不満などを語っていただこうという、戦々恐々な企画となっております。今回はギズモード編集部が愛する「カメラ」メーカーの方々にお声がけさせていただきました。

ニコン、リコー、キヤノン、ソニーが集結!

今回は、4社のカメラメーカーの商品企画の方に参加いただきました。

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株式会社ニコン 映像事業部 マーケティング統括部 UX企画部 UX企画一課長 笹尾 英樹(ささお ひでき)さん
Photo: 三浦一紀
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株式会社リコー Smart Vision事業本部 カメラ事業部 商品企画部 荒井 孝(あらい たかし)さん
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キヤノンマーケティングジャパン株式会社 イメージコミュニケーション企画本部 カメラ商品企画部 カメラ商品企画第二課 津幡 圭佑(つばた けいすけ)さん
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ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社 デジタルイメージング本部 商品企画第1部門 商品企画部 1課 統括課長 岩附 豊(いわつき ゆたか)さん
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このほか、各メーカーさんの広報の方も周囲にスタンバイしております。カメラメーカーのみなさんには「イチオシのカメラを持ってきてください」としか伝えておりません。いったいどんな話が飛び出すのか。予測不能の座談会、始まります!

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Photo: 三浦一紀

ニコン「Z」シリーズ:マウント変更は英断だった

ギズモード・ジャパン編集部(以降ギズ):まずはニコンの笹尾さんから、お持ちいただいた製品の紹介をお願いします。

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Photo: 三浦一紀

笹尾さん(ニコン)今回お持ちしたのは、ミラーレス一眼のZシリーズです。Zシリーズが、ニコン初の35mmフルサイズミラーレス一眼です。

Zシリーズを作るにあたって、長年一眼レフそしてデジタル一眼レフを使っていただいたお客様が、スムーズに移行しやすいミラーレスとは何だろうかを考えました。そうした中で一番に考えたのは「マウント」でした。ニコンは60年ほどFマウントを使っているので、それを変えるか、変えるべきではないなど議論はかなりありました。

ちょうど2017年、ニコンが100周年を迎えたこともあって、次の100年に向けてマウントを変更すべきだと判断しました。周囲からは英断だと言われましたね。

マウントを変えた理由としては、映像表現のポテンシャルを高めるために大口径のマウントが欲しかったという点。そして、新マウントを採用することで、Fマウントでは実現できなかった豊富なレンズバリーションが実現できるという点があります。

ユーザーに使い方を委ねる製品を作りたかった

ギズ:ギズ編集部も、発表会に参加したり、個人的に触ったりしているのですが、Zマウントのレンズ第一弾として「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」が開発発表されたときには、かなりびっくりしました。現在は、5本のレンズがラインアップされていますね。

笹尾さん(ニコン)NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」は、究極の光学性能をどうやって実現するか、技術者の想いを具現化するために企画しました。

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Photo: 三浦一紀

ギズ:新マウントにおける最初のレンズというのは重要だと思います。これについてもかなり議論されたのではないでしょうか。

笹尾さん(ニコン)もちろんです。すべてのラインアップを1年間でどんどん出せればベストなんですが、そういうわけにもいきません。どういう順番で出していくかは、今でも議論を重ねています。

ただし、今あるFマウントレンズをZマウントに置き換えていくのも重要ですし、新しいレンズを投入するのも重要なので、バランスは相当悩みます。

「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」のように、今までにないレンズを発売したのは、これからは使い方も含めて、お客様が製品を作っていくものだと思っている面があります。「こう使ってください」ではなく、「どういう風に使っていただけるのかな」という。

我々がものづくりをしている中で、お客様に委ねることはなかなかありません。なので、そういうものをひとつでも作っていきたいという想いがあります。

「Z 7」と「Z 6」は高画質だけじゃない! EVFにも自信あり

ギズ:今回お持ちいただいたのは、「Z 6」ですよね。高画素の「Z 7」とスタンダードな「Z 6」を同時期に発表したのは、どういう狙いがあったのでしょうか。

笹尾さん(ニコン)普通ならば、幅広いユーザーに受け入れられるであろう「Z 6」から発売する流れですが、マウントや光学性能などを一番体現できるものが高精細、高画素センサーを使ったモデルなので、2機種同時に発表しました。

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Photo: 三浦一紀

ギズ:実際の発売は、「Z 7」が先でその次に「Z 6」でしたね。この2機種に関して、ユーザーからはどんな声が上がっていますか。

笹尾さん(ニコン)握ったときに「ニコンカメラ」だと分かるという声があります。ホールディング、握りの良さにはこだわりました。あとは、操作系ですね。小型化しているので操作系はちょっと変えているのですが、これまでのニコンユーザーからは、すぐに使いこなせるという評価をいただいています。レンズ性能に関しては、天体などを撮影される方々からは、周辺のにじみや流れがまったくないと言われていますね。

ギズ:なるほど。Zシリーズのほかの推しポイントはどの辺りでしょうか。

笹尾さん(ニコン)やはりEVF(電子ビューファインダー)ですね。デジタル一眼レフから移行するユーザーを考えると、まずファインダーが大切です。実は、このEVFの光学設計には相当時間がかかっていて、企画者泣かせなんです。

EVFに高性能を求めると、コスト面でかなり負担がかかります。ただ、お客様がEVFをのぞいたときにゆがんでいたり見え方が悪かったりするともったいない。EVFで見る映像と背面液晶で見る映像、そして最終的な画像をできるだけ同じものにするというポリシーで開発しました。

カメラファンである自分たちが満足できるものを作りたい

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Photo: 三浦一紀

ギズ:お話を伺っていると、カメラを握ったときのインプレッションやEVFの見え方といった、写真を撮る体験を大切にされている印象を受けました。そのあたりのベースとなる考え方はどういったものなのでしょうか?

笹尾さん(ニコン)基本的には、我々も写真を趣味とするユーザーの一人ですので、プロダクトに対して「こうだったらいいのにな」という思いがあります。作り手であり、使い手でもある自分たちが満足できるものを作りたい。そういう思いが形になっているのかなと思います。

最初に選ぶレンズは何?

ギズ:笹尾さん個人としては、「Z 6」と「Z 7」のどちらか1台を買うとしたら、どちらを選びますか?

笹尾さん(ニコン)私は「Z 7」ですね。今ある製品のなかで最高の画質が得られますから。

ギズ:では、最初のレンズはどれを選びますか?笹尾さん(ニコン):そうですね…。「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」もいいんですけど、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」ですかね。解像感がすごくて、一度撮影すると手放せないぐらいの絵が撮れるので。

ギズ:ほかのみなさんは、最初に選ぶならどの焦点距離のレンズですか?

岩附さん(ソニー)単焦点派なので、50mm近辺の1本と、35mmあたりを1本ですね。

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Photo: 三浦一紀

荒井さん(リコー)私は28mmと答えるべきなんでしょうけど(笑)。実は28mmは個人的にはちょっと苦手で。もうひとつ選ぶとすれば風景を切り取りたいという気持ちがあるので、50mmから中望遠、85mmくらいですね。

津幡さん(キヤノン)僕は35mmか、キヤノンにはないですが70mm近辺がちょうどいいかなと思っています。

Zシリーズに搭載された通好みの機能とは?

ギズ:Zシリーズで、あまり知られていないけど、実はすごい機能はありますか?

笹尾さん(ニコン)少々マニアックですが、ミドルレンジシャープという新たな機能が入っています。実は写真を鑑賞する大きさによって効果的なシャープネスの組み合わせや調整は異なるのです。

たとえば、スマホの画面で見るのと、4Kディスプレイなど大きな画面で見るときに立体的に感じられるシャープさは、かなり違いがあります。これはプロの方もずっと悩んでいたと聞いています。大きなサイズで鑑賞するときは「輪郭強調」、小さなサイズで鑑賞するときは「明瞭度」が効果的でしたが、中間サイズ(A3程度)が抜けていたので「ミドルレンジシャープ」を搭載しました。

デフォルトでバランスよく調整されているので、そういった悩みを解決できると思います。

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Photo: 三浦一紀

画面サイズや写真のサイズによって、シャープネスをどうやって作ればいいのかを、画像設計の人間がずっと研究していました。そこで見つけたのが「ミドルレンジシャープ」です。

ニコンのカメラをまず触って欲しい

ギズ:ギズモード読者のなかには、デジタル一眼レフのユーザーはもちろん、コンデジやスマホユーザーもたくさんいます。そういう方たちがフルサイズのカメラを選ぶときに、「Z 6」や「Z 7」のどこをアピールしますか?

笹尾さん(ニコン)ニコンが評価されるところは、意外と目に見えない、感覚的なところが多いんですよね。なので、触ってみたらわかるところをアピールしていきたいです。

ギズ:まずは触ってみてほしいと。

笹尾さん(ニコン):そうですね。お客様にとっては買うときがピークではなくて、使うときがピークだと思っています。そのピークに対してどのように製品を提供すのかが重要です。それはどのメーカーさんも一緒だとは思いますが。使う前に使ったときの良さをどうやって伝えていくのかが課題ですし、これからもやり続けないといけないなと思っています。

ライバルから見たニコンZシリーズ

ギズ:他のメーカーさんから見て、Zシリーズはどう感じていらっしゃいますか?

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー):チルト式の背面液晶が気になっていました。動画を撮る方はもちろん購入を検討していると思うんですけど、ウエストポジションで撮影するユーザーがすごく増えてきているので、いいですよね。

あと、カチッとしたデザインなんですけど、新しい操作性やUIの部分など、全般的に素晴らしいなと思っています。

荒井さん(リコー)質問になってしまうのですが、今までFマウントを使われていた方は移行している印象ですか? それともそうでもないなという感じでしょうか。

笹尾さん(ニコン)マウントアダプターFTZを介していろいろなレンズを使う際の性能は担保できているので、Zシリーズを購入されている方は、かなりの方がマウントアダプターを使ってFマウントレンズを使われているんじゃないかと思います。Zマウントのレンズがまだ揃っていない部分もありますし。

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Photo: 三浦一紀

津幡さん(キヤノン)第一印象は、ニコンさんは撮る人に寄り添ったカメラだなというものです。グリップを握った瞬間に、ニコンのカメラだなとわかるんですね。うちの技術すごいでしょうというのではなく、使いやすいでしょうという感じが出ていて、非常にいいなという印象です。

あとは、レンズのラインアップがすごいですね。いろいろ候補があった中で、最初に発売したレンズ群のセンスが、僕らキヤノンからしたらすごいな、お客様目線だなと思うところはあります。

リコー「GR III」:アピールポイントは「ギュッとなっている」ところ

ギズ:それでは、リコーさんに話を伺いたいと思います。今回唯一のコンパクトデジカメ「GR III」をお持ちいただきました。簡単に製品概要をお願いします。

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Photo: 三浦一紀

荒井さん(リコー)リコーはいくつかカメラブランドがありまして、PENTAXやTHETAがあるなかで、今のイチオシということでGRチームの私が代表として出席させていただきました。

GR III」は、1996年に発売したフィルムカメラ「GR1」から始まって、20年以上続いている息の長いシリーズです。初代の「GR1」から、広角単焦点のスナップカメラというコンセプトで開発されています。

2005年にはデジタル版GRの初号機「GR Digital」が発売され、2013年にAPS-Cセンサーを搭載した「GR」になりました。最新の「GR III」は、前モデルの「GR II」とカメラとしての風貌はそれほど変わっていませんが、ギュッとコンパクトになっています。

ギズ:ギュッとなっている。

荒井さん(リコー)ええ。GRが発売されたときに、APS-Cのセンサーでこれだけのサイズ感はすごいと言われたんですが、私の中ではGR Digitalのサイズこそ、GRなんですね。自分の中では、いつかこのサイズに戻したいと思っていました。ただ、なかなか技術やパーツの問題で実現できず、ようやく今年になって「GR III」として形にできたかなと思います。

GRシリーズの「28mm」へのこだわり

ギズ:「GR II」と「GR III」はぱっと見同じカメラと言われても気づかないぐらいの差ですが、こだわったのはどの辺りでしょうか。

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Photo: 三浦一紀

荒井さん(リコー)やっぱり「GR Digital」のときのあのフィット感、手のひらに収まる感じが、「GR」では若干失われていました。プロの写真家の方にお聞きすると、「GR Digital」はトランプやカセットテープと同じように、なんとなく持ったときに心地よさを感じるサイズとのことでした。それと同じ感覚が「GR III」にはあると言われていますね。

「GR II」に比べ「GR III」は横幅が7mm小さくなっています。7mmだけという捉え方もありますが、実際に手に取っていただくと違いが感じられるはずです。

ギズ:28mmという画角にこだわりがあって作られていると思うんですけど、28mmという根拠はどこにあるのでしょうか。

荒井さん(リコー):世の中を客観的に捉えられる視野なのかなと。人間の視野は、集中しているときは50mmから85mmになると言われています。逆に、ぼやっと景色を眺めているときは28mmぐらいでしょうか。要は、スナップで目の前にある事象を、ありのまま切り取らずに写す画角はこのぐらいなのかと。

ギズ:28mmという画角は他のメーカーさんはどう思われていますか?

笹尾さん(ニコン)28mmは人間の目で見ている範囲のイメージが撮れていると思います。28mmよりも35mm、50mmとなっていくと、人間の視角とは違うので、驚きというか新しい発見が味わえるのかなと。だから、「GR」はどちらかというと、本当に生活の中の場面を見ている感じの画角として捉えるカメラだろうなと思っています。

岩附さん(ソニー)僕は28mm1本だけで出かける勇気がなくて。でも28mmの単焦点を持っていると言いたい。そう言ったら、すごくクリエイティブな感じになるだろうと思っていて。

ギズ:28mmは、意味がある画角だとカメラメーカーさんは考えていらっしゃるんですか?

荒井さん(リコー)変にデフォルメをしないで目の前のものを撮るのが28mmだと思うんです。さらに広角になるとかなりデフォルメされ広い広角それ自体のインパクトが出てくるし、望遠側になるともっと事象を切り取るみたいな目線になってくる。そういう意味で28mmは普通の画角なんですけど、実は相当難しいんです。

自分が熱い想いで撮った被写体なんだけど、仕上がりを見てみると散漫な絵になる。なので、自分のフットワークを使って撮影することが必要になってくるし、そこの試行錯誤に魅力を感じてGR IIIを使っている方はたくさんいらっしゃると思います。

ギズ:キヤノンさんも28mmはラインアップにありますが、どういうユーザーさんが使われていますか?

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Photo: 三浦一紀

津幡さん(キヤノン)キヤノンの28mmはLレンズではないレンズとして発売しています。なので、値段も控えめなものが多い。ただし、エントリー向きのレンズかというと…使ってみると難しいと思います。F値が小さいからぼけると思ったのに被写体に寄り切らないとうまくぼけない、きちんと構図を作らないと背景がうるさくなるなど、結構難しい画角のレンズですね。

「GR II」から4年。「GR III」までに時間がかかった理由

ギズ:「GR III」になって進化したポイントを教えてください。

荒井さん(リコー)コンパクトカメラの画質を決める要素である、レンズとセンサー、あとは画像処理のユニット、これらを全部刷新しています。「GR II」と「GR III」では同じ28mm相当のレンズを搭載していますが、レンズ構成はまったく変えています。

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Photo: 三浦一紀

なぜレンズ構成まで変えたかというと、かつてのGR Digitalシリーズ並にカメラを小さくしたかったからなんです。ただ、やみくもに小さくするのが目的ではありません。レンズバリアを取ってしまえばもっと小さくなるんですが、その場合はレンズキャップを着脱することになり、撮影の際に煩雑になります。

あとは、イメージセンサーの変更により画素数が「GR II」の1600万画素から、「GR III」では2400万画素にアップされています。高画素にすると、微妙な手ぶれでも画像が眠く見えてしまうものですが、GR IIIは手ぶれ補正を搭載し、手軽なスナップ撮影でも高い描写性能を味わえるようにしています。

また、2400万画素で軽快に撮影するためには、画像処理エンジンも高速かつ高機能なものにする必要がありました。通常GRシリーズは2年ごとにリニューアルしてきましたが、今回「GR II」の発売から「GR III」の登場にはおよそ4年弱かかっています。

やはり、大きな変更がないと買い換えに至るまでの魅力的な製品にならないと判断して、主要デバイスをすべて刷新する判断をした結果、発売までに間が空いてしまいました。ただ、おかげさまでいろいろなところから高評価をいただいています。

ギズ:それは、GRというブランドの重みもあったと思うんですよね。中途半端なものは出せないという。

荒井さん(リコー)そうですね。

各メーカーから見た「GRブランド」とは?

ギズ:GRというブランド、そして「GR III」に対してみなさんはどう感じていらっしゃいますか?

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー)私はこの凝縮感、ものとして所有したくなる感じは、フィルム時代から一貫していてすごいなと思います。「GR II」と「GR III」のサイズは、本当にちょっとの差なのかなと思ってましたが、全然別物ですね。

笹尾さん(ニコン)やはり、この縦横のサイズ比率が黄金比なんでしょうね。確かに手の中に入るという感じですね。

津幡さん(キヤノン)右手で持ったときの収まり感がいいですよね。ボタンの配置も右手でほぼすべての操作ができるようになっていていいですね。

荒井さん(リコー)実は、「GR III」ではボタンを減らしているのですが、それでも操作に違和感を感じさせないようにするのが、苦労したところです。変わっていないようで結構なくしているものがありまして。一番わかりやすいのは、フラッシュで、あとはモードダイヤルのオート撮影モード(緑カメラのマーク)ですね。

ユーザーアンケートを見ていると、オートモードは家族に貸すときにしか使わないとか、そういう感じなんです。GRシリーズのオートモードはそれほどインテリジェントなものではなくて、プログラムモードのときに設定変更できることを少なくしたぐらいだったので、ならばあえて載せる必要はないんじゃないかと判断しました。

「GR III」の場合は何を載せるか載せないかというのは喧々諤々ありましたね。特に営業さんは、今まであったものは載せてほしいというのが心情としてありますし。それをずっとやってきた結果、これまでは建て増し建て増しみたいな感じになっていました。

ギズ:ほかになくした機能はあるんですか?

リコー広報カメラ本体とは関係ないのですが、カタログから機能説明を一切省きました

一同:え?

リコー広報作品のみです。全部で27ページあり、最後のほうのページにスペック表が2ページだけあっておしまいです。

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カタログ本体が手元になかったため、PDFを見せていただいた。写真のみで構成されたカタログは写真集のよう
Photo: 三浦一紀

ギズ:これは買ってもらうターゲットを変えたいからこういうカタログにしたのですか?

リコー広報:いえ。GRを使ってほしいお客様のインテリジェンスに委ねようと。

ギズ:かっこいい(笑)。

リコー広報:文章で説明するとかイラストで説明するのではなく、カメラなんだから撮影結果である作品を見て、このカメラをほしいと思うかどうかを判断していただこうと。こう言うとかっこいいですが、とても議論しましたね(笑)。ただ、カタログでは想いをどう膨らませていただくかを読み手にお任せして、下手な説明はしないというのを通しました。でも、お客様からは反応がよくて。ちなみに機能の詳細説明はWebサイトで見ていただけます。

キヤノン「EOS R」「EOS RP」:「レンズの再設計」という一大プロジェクト

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Photo: 三浦一紀

ギズ:それでは、キヤノンさんお願いします。

津幡さん(キヤノン)今日お持ちしたのは、「EOS R」と「EOS RP」です。「EOS RP」は3月14日に発売されたばかりの製品です。EOSは1987年から、31年ぶりにマウントを追加した、ということになります。

思想としては、フルサイズミラーレスカメラを作ろうとしたのではなく、光学メーカーとしてレンズを先に考え始めました。今までのマウントではフランジバックの問題もあり、設計の自由度が少なかったんです。それでは、レンズを一から開発し直してみたらどういうレンズができるだろうか、そしてそれに対応したカメラはどういうものなのかを考えた、というのが開発経緯になります。

レンズラインアップは現在4本ですが、「RF28-70mm F2 L USM」が一番EOS Rシステムを象徴するレンズかなと思い、今日お持ちしました。EFマウントで開発した場合、全長が長玉ぐらいになってしまうところを、RFマウントでは140mmぐらいの長さで実現できました。

その上、F2通しなので、単焦点レンズをシームレスに持ち歩いているようなイメージで使っていただけると思います。

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Photo: 三浦一紀

ギズ:発表会にお伺いしたときも、これすごいなと思いました。F2通しというスペック、見た目のインパクトがすごくて。このためにRシステム出したのかなという話をしていました。

津幡さん(キヤノン)そうですね。現在開発の発表をしている6本のレンズは、今までのEFレンズではできなかったものを、RFマウントでできるようになりましたというアピールの意味もあります。営業としては売りにくいレンズかもしれませんが、プロの方々からはご好評をいただいていて、一度使うとやみつきになってしまうという話もあります。

ボディに関しては、マウント口径はEFマウントから変えずに54mmですが、フランジバック(レンズマウントからセンサーまでの距離)は20mmに短縮しています。しかし、キヤノンとしてはフランジバックよりもショートバックフォーカス(後玉からセンサーまでの距離)を謳っています。バックフォーカスの長さ、後玉の大きさなどの開発の自由度という点で、今まで開発できなかった画角とズーム域のレンズが開発できます。開発発表した「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」などがその例です。

操作系では、マルチファンクションバーなど新たな操作性にチャレンジしています。好きな機能を割り当てることができ、ユーザーの方それぞれの機能の割り当てを行なうことができます。多くの操作性はEFマウントのボディから比べても、あまり変更はしていませんが、EOSのアイデンティティであったサブ電子ダイヤルをなくしたり、ジョグダイヤル形式のマルチコントローラーがなくなっていたりと、多少新しいチャレンジをしています。

その代わり、レンズ先端にコントロールリングという新しい操作を持たせたことで、左手がただレンズを添えるだけになっていたところを、操作にも使っていただけるようになりました。

「EOS RP」は、EOS史上最軽量のフルサイズデジタル一眼ということで、片手で撮影できる手軽さがありつつ、操作性は犠牲にしていないという特徴があります。

「EOS R」と「EOS RP」はどちらもキヤノン「本気の」1台

津幡さん(キヤノン)フルサイズ画質を得られる点では、「EOS R」と「EOS RP」は兄弟機のように見えると思います。ですが、「EOS RP」が廉価版という位置づけではなく、どちらもキヤノンの本気なので、お好きなほうを選んでいただきたいと思っています。

ギズ:「EOS R」のほうが上というわけではなく、横並びなんですね。

津幡さん(キヤノン)そうですね。「EOS R」はどちらかというとメカ的な要素に振っていて、「EOS RP」は手軽さといった気持ち的な要素に振っています。それぞれちょっと種類が違うカメラなのかなと思っています。

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Photo: 三浦一紀

両機種とも操作性はほとんど一緒なんですけど、「EOS R」はカスタマイズできるボタンが豊富にあるのが特長で、自分なりにカスタマイズしやすいのがウリです。また、どちらもEVFの特長である露出シミュレーション、コントロールリングなども含めた操作ができるなど、メカ的なおもしろさがあるので、まずはEOS Rから発表しました。

一方で、EOS Rは誰にでもお使いいただけるよう多機能ではあるのですが、尖った機能が無い印象もあるので、EOS Rシステムならではの小型軽量に振ってみようという発想で生まれたのが「EOS RP」です。小型軽量だけど、画質もこだわってますと紹介しています。

ギズ:津幡さんは、EOS RとEOS RPのどちらを選びますか?

津幡さん(キヤノン)難しい質問ですが…今のところは「EOS RP」です。先日海外旅行に行ったときに両機種とも持っていったのですが、特に海外においては「EOS RP」の撮り回しのよさがすごくよくて。「EOS R」には「EF16-35mm F2.8L III USM」をつけていたんですけど、盗難もコワいのでほとんどバッグにしまったままでした。

ギズ:小型カメラの強いところですよね。ご自身で使われてみて、EOS Rシリーズならではのよさはどの辺りだと感じました?

津幡さん(キヤノン)使い慣れているからかもしれませんが、EOSユーザーにとっては、EOS RとRPともに直感的に操作できることが最大の良さだと思いました。設定変更はダイヤル操作で全部できるし、メニュー階層が浅いので、回す、押すぐらいで設定が全部できるのがいいところですね。

各メーカーがカメラ開発で重要視しているところは?

ギズ:操作性やダイヤルによる快適な設定ができるという辺り、ニコンさんのおっしゃっていた撮影体験の提供という話とも通じるところがあると思います。その辺りほかのメーカーさんはどう考えていらっしゃいますか?

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー)開発段階では、使い勝手を一番重視しています。いまお客様に提供している使い勝手を、いかに製品に落とし込んでいくかも大事なのですが、これから先の映像表現がどうなっていくのか。そこに向けて、新しい操作性のチャレンジは入れていかなければいけない。でも、斬新になりすぎるとお客様は絶対に戸惑う。だから、どの辺りを狙っていくべきなのかは、いつも悩み議論に上がるところですね。

笹尾さん(ニコン)今ニコン製品を使っていらっしゃるお客様が、新機種を使ったときに、使い勝手がよくないのはNGなんです。今までのお客様が「ここになんでこのボタンがあるの?」となると、もうそれだけで使えないと認識されてしまう。なので、使い勝手は意識しています。

荒井さん(リコー)GRの場合は、Wi-Fiボタンなど撮影のときに使わない機能以外は、とにかく右手ですべて操作できるようにしています。その中でも新機種のたびに結構変えていますね。一眼カメラは、レンズとボディという資産の組み合わせで長い間使っていくものですので、ある程度操作の一貫性は必要ですが、コンパクトデジカメは一体型なので、買い換えのたびに違うメーカー、違う機種を手にするものです。そこを逆手に取って、実は冒険していますね。

キヤノンとニコンの違いは「グリップの握り」にあった!?

笹尾さん(ニコン)あと、キヤノンさんとニコンの違いとして、グリップの握り方、お客様にどう握っていただくかのポリシーが違うと思っています。

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Photo: 三浦一紀

特にシャッターボタンなんですけど、キヤノンさんは、指をこういう風においてくださいと誘導させる握らせ方なのかなと思っていて。ニコンはどちらかというと、いろいろな握り方があるけど、ユーザー各々にベストな握り方をしてもらう。その辺りの違いはあるのかなと、EOS Rシリーズを見て思いました。

津幡さん(キヤノン)ニコンさんの場合は、シャッターボタン下にあるダイヤルを中指で回す方もいらっしゃいますよね。よく言われるのが、ニコンさんは設定を変えながらレリーズできること。中指を使ってダイヤルを回すことで、シャッターボタンに人差し指を置いたまま設定変更ができます

キヤノンの場合は、シャッターボタンの上にダイヤルがあるので、どうしても人差し指を離さないとならない。

笹尾さん(ニコン)前ダイヤルがシャッターボタンの上にあるか下にあるか、その違いですよね。

津幡さん(キヤノン)そうですね。なので、ニコンさんをお使いの方はそれに慣れていらっしゃる方が多いかもしれない。

ギズ:ダイヤルの配置というのは、どうやって決められているんですか? 一言で簡単に言えることではないかもしれないですけど。

ニコンイメージングジャパン広報機種にもよるところはありますが、シャッターボタンの下にダイヤルを配置するスタイル自体は、フィルムカメラのときから変わっていません。キヤノンさんのダイヤルがシャッター上にあるのも、おそらく変わっていませんよね。

「EOS RP」の軽さは衝撃的

ギズ:ほかのメーカーさんは、「EOS R」と「EOS RP」を触ってみてどう思われましたか?

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Photo: 三浦一紀

荒井さん(リコー)「EOS RP」の軽さはちょっと衝撃的ですね。企画的な立場から言うと、中の部品選びに相当苦労されていたんじゃないかと思います。パーツを選ぶときにかなり議論はされたんですか?

津幡さん(キヤノン)今回も防塵・防滴性能試験や落下試験などを実施し、ユーザーにどのように使っていただくか、を常に意識しています。「EOS R」に比べ「EOS RP」の強度は劣りますが、内部はマグネシウム合金、周囲をポリカーボネート樹脂にすることで、ある程度の強度を保ちつつ軽量化をしています。塗装にしても、高級感を保つように「EOS R」と同じような塗装、色合いに見えるようにしています。

笹尾さん(ニコン)ニコンにはできない操作系のチャレンジはあるなと思います。あと、持った瞬間にキヤノンさんだなと分かる感じがありますね。レンズの「RF28-70mm F2 L USM」に関しては、複数の単焦点レンズを持っているような感じでおもしろいですね。長く使えるレンズではないでしょうか。

「EOS RP」は、我々としてもこうきたかという感じはありましたね。お客様がどういう反応を持つかを注目しています。ただ、やっぱりフルサイズで軽いというのはニーズとしてあるので、参考にしたいなと思います。

岩附さん(ソニー)実はEOS Rは1週間ほど使っていました。操作系の話でいうと、最初「EOS R」が発表されたときに、攻めているなと思って。それはポジティブな意味ではなく、やり過ぎじゃないかという感じでした。

ギズ:それくらい攻めていたということですね。

岩附さん(ソニー)はい。モードダイヤルがなくなったことが衝撃でした。モードポジション自体は普段からカメラ上部の表示パネルで見えているから問題ないとは思いますけど。ちょっと批判しているように聞こえたかもしれませんが、私自身は十数年先になったら、モードダイヤルは絶対なくなると思っています。静止画と動画でダイナミックにモードが変わって、それが直感的に選べるのは、キヤノンに先にやられた感があって悔しいなと思いました。でも、これはデジタル一眼レフのEOS 5Dシリーズがあるからこそチャレンジできたのかなと。

ギズ:その辺りは強いかもしれないですね。

岩附さん(ソニー)あとは開発発表のレンズが並んだ際に、背が低くて、持ってみたいなと思うレンズがたくさん並んでいて。マウントアダプターも4種類あると。その発想はありませんでした。

ソニー「α6400」:オートフォーカスにこだわったソニーのAPS-C機

ギズ:それでは最後に、ソニーさん、お願いします。

岩附さん(ソニー)今日はイチオシとして「α6400」を持って参りました。

フルサイズミラーレスが盛り上がってる昨今ですが、5年くらい前にフルサイズミラーレスを弊社から出したときは、レンズのラインアップを一から作っていく大プロジェクトだったんです。

元々、Eマウントは「NEX-5」から始めて、APS-Cのフォーマットでシステム展開をやっていました。その後フルサイズを追加し、やるなら徹底的にやろうと、レンズ開発も含めてしゃかりきになって取り組んできました。その間、ずっとAPS-Cのお客様から、「止まってるよ、出てこないよ」という声をいただいていました。

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Photo: 三浦一紀

ギズ:いつも新製品発表会の質疑応答になると必ず出ますね、その質問。

岩附さん(ソニー)はい。ずっと言われてきました。それは決してAPS-Cを軽視したわけではないのですが、フルサイズ対応レンズの投入が先行したことは事実だと思います。

α6400を出すときは、お待たせしてしまったお客さんもいますし、α6400から入ってきていただく人もいます。なので、固唾を呑んでお客さんの反応を見守っていました。ギズモードさんにも記事を書いていただいて。すごくいい記事だったんですけど、「でもなにか足りない」と書いてあって(笑)。

ギズ:(笑)。みなさん全部記事を読んでるんですね。

岩附さん(ソニー)読み進めると、ああ、いい記事だったねってことを職場で話しておりました。

ギズ:ありがとうございます(笑)。

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー)今回持ってきた「α6400」は、オートフォーカスに徹底的にこだわっています。ずっとフルサイズでオートフォーカスにこだわってきましたので、この小さいボディでどこまでできるかを、徹底的に取り組んできたのが一番のポイントです。

瞳オートフォーカス、それからリアルタイムトラッキングという新しい機能を入れていますが、こちらはすごく好評です。

あと、発売してから非常にうれしかったのが、フルサイズを持っていながら、α6400を買った方が結構いらっしゃったことと、初めてのレンズ交換式カメラがこれでしたという方が多くいらっしゃったことです。初めてレンズ交換式カメラを買ったというと、ちょっと前ならば入門者というイメージがありました。でも今の若い世代の入門者は、レベルが違っていて、すごいクリエイティブな人たちなんです。スマートフォンでいろいろな加工をしていて、自分なりの作品性を持っている方が、専用機のカメラを手にしてくれたことが一番うれしかったですね。

「α6400」は目玉機能をあえてアピールをしていない

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー):180度回転する背面液晶を積極的にアピールしませんでした。社内でこの製品を紹介するときに、背面液晶が180度回転することを黙っていたんです。そこをアピールしてしまうと、撮影の本筋のところで評価されないのではないかと。

ギズ:背面液晶が180度回転してレンズ側から見えるようになるのは、動画クリエイターや自撮りをする方に待望されている機能で、その辺りを意識したのかなと思ったのですが。

岩附さん(ソニー)そうですね。静止画・動画問わず、やはりクリエイティブにフリーアングルで撮りたいという方も当然増えてきています。また、映像で自分自身を対面撮影する方も増えていますので、そういう新しい潮流を加速させていきたいなと思っています。

忘れっぽい人でも大丈夫! カスタマイズボタンをイラストで表示

ギズ:「α6400」の製品の特徴は、そのほかにどんなところがありますか?

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Photo: 三浦一紀

岩附さん(ソニー)弊社のカメラは多くのカスタマイズボタンがあります。これは便利な機能なんですが、どこに何のボタンをアサインしたのか、忘れてしまうことがあります。そこで、カスタマイズしたボタンをイラストで見せられる機能を搭載しました。

ギズ:本当だ。言われてみれば、今までこういう機能はありませんでしたね。この機能は「α7」には移植されないんですか?

岩附さん(ソニー)「α9」に移植しているんですけど、まだその1機種のみですね。

APS-Cは柔軟なフォーマットにしていきたい

ギズ:ソニーさんは最近快進撃というか、他社さんに追いつけ追い越せみたいな状況だと思います。「α9」もすごいカメラだと思いますが、今回「α6400」を発売されたときに、どの辺りのターゲットを狙っているのかなと思いまして。

岩附さん(ソニー)昨年「α7 III」というフルサイズ機を出して、市場の反応もよかったんです。でも、そのなかでやっぱりAPS-Cというフォーマットについても再定義していきたいと思っています。

APS-Cというフォーマットは、必ずしもフルサイズの下位にあるセグメントではないと思います。機動力と画質が両立しているAPS-Cフォーマットによって、カメラに興味がなかった人たちにも興味を持ってもらうきっかけとなればいいなと思っています。YouTuberや美容ブロガーなど、これまで専用機を使っていなかった方たちが、新しい表現のツールとして使ってくれる、そういうフォーマットでありたいなと思っています。

各メーカーのフォーマットサイズへの考え方は?

ギズ:ちょっとマーケティング的な話になってしまいますが、APS-C、フルサイズ、1インチなどいろいろなサイズのセンサーがありますけど、その辺りの考え方というのはみなさんどうなんでしょうか。

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Photo: 三浦一紀

笹尾さん(ニコン)「フォーマットが小さい」というのは、デジタル一眼レフのときは望遠に有利という考え方でした。当然、野鳥や飛行機などを撮影する方には、「D7500」などはすごく喜ばれたと思います。なので、フォーマットが小さい=サイズダウンしたというよりも、より望遠に強いシステムであるという認識をしています。小型化にも有利になるので、小型化を求めるユーザーにとってもいいフォーマットではあると思います。

ギズ:リコーさんは、「GR III」はAPS-Cですが、フルサイズにという考えはあるのですか?

荒井さん(リコー)たまに言われたりするんですけど、今のGRのサイズ感をフルサイズで実現することはできないと思います。カメラボディは小さくできても、レンズの出っ張りはどうしようもないところがあります。

ギズ:キヤノンさんはどうですか。

津幡さん(キヤノン)レンズでいうとフルサイズと互換性を持たせなければいけないと思っています。フルサイズ機のコンテンツではAPS-Cと比較してしまっているんですけど、もちろん僕らもAPS-Cを捨てたわけではないです。センサーによる特性や撮影ジャンル、ユーザー層は異なるので、フルラインアップで互換性を持たせてやっていくのが今後の流れだと思っています。

最新APS-C機に対する各メーカー中の人の反応

ギズ:ソニーの製品を実際に触っていただいて、ほかのメーカーさんはどう感じますか?

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Photo: 三浦一紀

荒井さん(リコー)フルサイズが欲しいのを我慢して使うわけじゃなくて、APS-Cならではの魅力ってあると思うんです。その辺りをユーザーの皆様にもっと理解してもらえるようにしていきたいと私たちも思っています。そういうところにAPS-Cの新しいカメラが出てくるのはすごい魅力だと思います。

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Photo: 三浦一紀

津幡さん(キヤノン)「α6400」は、すでにショールームで触らせていただきました。僕は最速0.02秒というオートフォーカス性能が刺さりました。ソニーさんは、お客様に対して突き刺さるワードがいつもあって、やっぱり「ソニーさんすげえ」っていう感覚になりますね。物理的に、オートフォーカス速度が0.01秒というのは、あり得ないと思うんですよ。0.02秒というのは最速ではないかと。オセロで角を取られたような気分です。

ギズ:オートフォーカスのスピードは、ユーザーからのニーズが多いのでしょうか。

岩附さん(ソニー)基本性能としてオートフォーカスのスピードは求められていると思います。最近では、追従性が新しい評価軸になっている傾向があるので、ソニーとしてはそこを一番推していますね。

ギズ:それこそリアルタイムトラッキングなどでしょうか。

岩附さん(ソニー)そうですね。あとは瞳オートフォーカスもずっと追い続けられるように、レンズ開発の時からこだわっています。

ギズ:ニコンさんはどうですか。

笹尾さん(ニコン):「α6400」はとてもいいカメラだと思います。個人的には「RX0」が気になってますね。チルトのヒンジがかわいいんですよ。思った以上にしっかり作られているので、かなりワイルドな使い方、シーンに入っていけるなという感じですね。

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今回ソニーさんは、α6400のほか、α7 III、そしてRX0も持参していた
Photo: 三浦一紀

聞くのが怖いけど……。メーカーさんからギズモードへ一言!

ギズ:ギズモードでも各社のカメラを取り上げた記事を公開していますが、ギズモードに対して何かご意見ご要望などありましたらぜひお聞かせください。

ニコンイメージングジャパン広報Zシリーズも取り上げていただいているんですが、海外のレビューが厚めだったので、国内の方に使い込んでいただいて、Zシリーズのいいところを伝えていただけるといいなと思っています。弊社のカメラは使い込んでいただくほど愛着がわく「するめカメラ」だと思っているので、今後ファームアップデートによる機能拡張を予定していて、5月には瞳AFが搭載されます。また一味も二味も進化したZシリーズをぜひみなさんに味わっていただきたいですね。

荒井さん(リコー)GRのようなカメラって、それこそ等倍に拡大して重箱の隅をつつくような解像力がというタイプではないと思っています。持ち歩いていたらこんな写真が撮れましたとか、大きいカメラではなかなか撮れない状況でも、GRだから撮れたというのが魅力だと思うんです。そういうところをいろいろ見つけて書いていただけるとありがたいなと感じています。

津幡さん(キヤノン)本当に我々は、ギズモードさんはメディアとして信頼しているというか。Webで何かやるときはギズモードさんに依頼しなきゃなというくらいおもしろい記事を書いていただいているんですけど。EOS RPに関しては、「動画を撮らなければRPでいい」というような記事があって(笑)。Photo: 三浦一紀

ギズ:(笑)

津幡さん(キヤノン)EOS RPは動画もオススメなんです。撮れますよ。でも、それもご愛敬かなというくらい信頼しています。

キヤノン広報動画の1分レビューで、「EOS RP」をすごい高く評価してくださっていて。いい評価をいただいたと思って記事を見たら、動画はダメだって書いてあって(笑)。

一同:(笑)

キヤノン広報落差がすごい。バランス取っているのかなと思いました。

ギズ:勉強させていただきます(笑)。

ソニーやっぱりギズモードさんの記事はとてもおもしろいんですけど、立場上どきどきしながら読み進めてしまうんですよね。うちの説明会やCP+のブースに来ていただいても、非常にはしゃいでいらっしゃるというか、楽しそうで。ああいう楽しい感じが記事にも出ていて、普通の方というのはこういう風に思うんだろうなと思いながら読ませていただいています。私たちも新鮮だし、おもしろいし、どきどきしますけど続けていただきたいと思っています。

ギズ:貴重なご意見ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。本日はお忙しい中ありがとうございました。

メーカーの中の人もカメラが大好き

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Photo: 三浦一紀

ということで、どうなるのかまったく想像できなかったこの企画ですが、各メーカーさんのご協力により、たいへん有意義なものとなりました

カメラメーカーの開発の方が一堂に会してお話をする企画は、カメラ専門メディアではないギズモードだからこそ、やれた企画なのかもしれません。

それにしても、参加していただいたみなさんは、本当にカメラが好きなんですね。休憩時間などは持ち寄ったカメラを触ったり使ったりして、とても楽しそうでした。この光景が見られただけでも、この企画をやってよかったなと思いましたよ。

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終了後、なぜか犬のぬいぐるみでソニーのα7 Mark IIIで瞳AFを体験する他メーカーの方々。楽しそう
Photo: 三浦一紀

ガジェットメーカーさんいらっしゃい!」は、今後も続けていきたいと思っています。どんなジャンルのメーカーさんがいいですかね? ご意見ご要望ありましたら、ぜひお知らせください。参考にさせていただきます。

では、また次回!

完全ワイヤレスイヤホンメーカー5社に聞く「ライバル製品どうですか?」:ガジェットメーカーさんいらっしゃい!

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https://www.gizmodo.jp/2019/08/true-wireless-earbuds-makers.html

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もう「ノートPCはどれも一緒だ」なんて思えないですね。すっかりギズモードの名物企画になりつつある「ガジェットメーカーさんいらっしゃい!」。自社製品...

https://www.gizmodo.jp/2019/09/laptop-makers.html