Googleは、ソフトウェアだけでは勝てないと気づくべき

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Googleは、ソフトウェアだけでは勝てないと気づくべき
Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

Google(グーグル)公式スマートフォンであるPixel(ピクセル)は、常にGoogleの持てるソフトウェア技術の最先端が注ぎ込まれてきました。その甲斐あってか、カメラの数は他より少なくても、Samsung(サムスン)やApple(アップル)にも引けを取らない写真を撮ることができるようになりました。しかし、米GizmodoのSam Rutherford氏は、Googleがそこに甘んじるべきではないと考えているようです。


膨大な資金力と影響力を誇るGoogleのことですから、Pixelスマートフォンも、4世代経たらさすがにAppleがiPhone 4をリリースした時くらいのポジションにいるんじゃないかな?と思っても不思議ではありません。しかし実際には、初代の頃と現在でのガジェット事情の大幅な違いや、4年という時間の経過を考慮しても、Samsungは27.4%、Appleが50.5%なのに対して、Pixelはたったの2.3%と、非常に苦戦していると言えます。一体どういうことなのでしょう?

これには当然、さまざまな要素が絡んでいます。例えば、Pixel最初の2世代は携帯会社1社のみから発売されていたという事実。他にもNexus(ネクサス)ブランドを廃止したことで、消費者を混乱させてしまった可能性などもあります。

しかし、恐らく他のどの要素よりも大きいのは、Googleがハードウェアを軽んじてきたからだと思います。

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Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

Nest Miniのようなスマートスピーカーなら、ちゃんと音を拾えるマイクと良い音を出すスピーカーに、扱いやすいデザインさえあればうまくいきます。しかしスマートフォンはまったく別です。例えばPixel 4。2019年のGoogleのフラッグシップ機で、Motion Sense(モーション・センス)、3D顔認識、そしてPixelでは、初の限定アプリや機能が付いていながら、去年Googleが出したベストなスマホはPixel 4ではなく、Pixel 3aでした。

というのも、Googleでは初めてのミドルレンジ用Pixelは、極めてシンプルなのです。400ドル(約4万3千円。セールを狙えばもっと安く)で買えるPixel 3aは、無駄のないデザインに、OLEDスクリーン、堅実なスペック、そしてGoogle謹製Android携帯特有のクリーンなユーザー体験を備えています。それだけでなく、Googleは魔法のような技術で、フラッグシップにも負けない最高なカメラも搭載させました。

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Pixel 4の半額なのに、Pixel 3aのカメラはフラッグシップ機に劣りません。400ドルでこれは凄い。
Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

リアカメラがひとつしかないことや、ボディがプラスチックであることなど気になりません。Pixel 3aはシンプルで分かりやすいスマートフォンであり、同じ価格帯の他の携帯に赤っ恥をかかせたのです(Xiaomiのよりヘビーなスペックの携帯や、海外でしか買えないものは除いて)。それに、ヘッドホンジャックがついていたのもプラスでしたね。

一方、800ドルのPixel 4を見てみると、その値段には疑問符がつきます。指紋センサーの代わりに3D顔認識を使ったのは良いのですが、AppleがiPhone Xで2年も前にやったことを、今更やっても目新しくはありません。

それにMotion Sense。手のジェスチャーで携帯を操作するというのはクールなアイデアですが、実際にはこの機能はあまりにも分かりづらすぎました。Motion Senseには存在検知という機能があり、これは携帯の前に誰かがいるかを検知し、いなければスクリーンをオフにして電力を節約します。クールである反面、機能としては非常に受動的で、普通の人はあまり気付きません。手の検知機能も同じような状況で、携帯を手に取ったのを検知して3Dドットプロジェクターを起動し、よりスムーズに携帯をアンロックできるのですが、これも普通の人は機能の存在に気づけません。気づけなければ、良さを理解することもないのです。

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アラームのスヌーズ、着信音のミュート、音楽のスキップ以外では、ピカチュウを撫でたりするギミックに使われていますが、これを理由に買いたいという人はいません。
Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

肝心のジェスチャーも同じです。曲をスキップしたり、着信音を止めたり、アラームをスヌーズするには便利で珍しい機能ですが、それ以上の使い道がないので、もっといろいろ使えるようになりたいと思ってしまいます。

Motion Senseに関しては、Googleは難しい立場にあります。まったく新しい携帯との関わり方を提唱しながら、一般的な人が圧倒されないようにジェスチャーをシンプルに、覚えやすくする必要があったからです。なので、メーカー側も消費者側も、お互いにちょっとずつ学んでいる段階で、ちゃんとした機能になるにはまだ時間がかかるでしょう。個人的に、Motion Senseはこれからすごく便利になる可能性を秘めていると思うので、もっといろいろな機能が追加されることを望みますが、それでも現時点での機能の少なさに対する不満が変わるわけでありません。

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Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

しかし、これらの不満すべてよりも一番大きな問題はハードウェアです。4世代を通してPixelシリーズの進化を追っていけば、Googleのスマホ開発における「ソフトウェア第一主義」のアプローチを否定するのは難しいと思います。Google Duplex、自動着信判別、便利なボイスレコーダーアプリなどの機能は、確かにPixel 4を最もスマートなスマートフォンにしています。でも、だからといってGoogleがスペックを軽視して良い理由にはなりません。

去年登場した他のほぼすべてのフラッグシップ機(iPhone 11 ProGalaxy S10OnePlus 7 Proなど)と違い、Pixel 4のリアカメラは広角カメラと望遠カメラのふたつだけで、超広角はありません。2019年にもなって、これはいただけない。更にPixel 4とXLはそれぞれ2,800mAhと3,700mAhのバッテリーで、ほとんどのハイエンドスマホより小さいものです。Googleのソフトウェアのおかげで電池の持ちが良いならそれでもよかったのですが、そういうわけでもなく、Pixel 4(特にXLではなく普通の4)の大きな欠点のひとつは、短い電池持続時間です。それに6GBのRAMに、microSDカード不可で最低64GBのストレージは、メモリー面でも他のAndroidフラッグシップ機に劣っています。

これらをみると、Googleがハードウェアの面で手を抜いて、ソフトウェアでカバーしようとしているように感じます(同じことは過去のPixelにも言えます)。Googleのソフトウェアは優れていますが、少なくとも今はまだハードの欠点をカバーしきれていないし、それが原因でPixel 4はどうも不十分に感じるのです。現在、超広角レンズや大容量の電池を補えるようなソフトウェアは存在しないので、一般の消費者が次の携帯を選ぶとき、そういった欠点は痛手になります。私個人の希望は、他の同じ価格帯の携帯と同じレベルのハードウェアを備えたうえで、Googleの優れたソフトウェアを乗せた携帯です。それってすごいと思いませんか?

こういった批判に対し、Googleは「ユーザー層の85〜90%を対象に、デザインしている」とよく言いますが、この設計思想は欠陥があると思います。なぜなら、何らかの稀な理由で、携帯がユーザーの期待に応えられなかった瞬間こそ、ユーザーの記憶に一番残るからです。ジャック・キングのポーカーに関する古い名言にあるように:

ポーカープレイヤーで、自分の大きな勝ちを思い出せる人は多くない。変に思うだろうが、すべてのプレイヤーは自分のキャリアで印象的な負けは、驚くほど正確に覚えている。

一番必要なときに限って電池が切れたり、美しい風景をすべてフレームに収められなかったりすると、そういう思い出ほど強く残るのです。

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最近、その懸念が実際に問題となりました。休暇でアジアを旅行するとき、どの携帯を持っていくか悩んだのですが、Pixel 4 XLとGalaxy Note 10+の両方を持って行きました。しかし結果として、主に使ったのはNote 10+で、Pixel 4 XLは夜間モードを使いたい時だけ取り出すコンデジのようになってしまいました。Note 10+は電池持続時間に優れているので、移動の間ずっとGPSを使って、写真を撮りまくっても電池切れを心配しなくて良いし、ストレージも大きいから、オフライン視聴用のテレビや映画をたくさん入れることができます。15時間のフライトの間は、いくらクラウドストレージを持っていても意味がないですからね。

ガジェット好きとしては、これは実に悲しいことです。Pixel 4で撮ったいくつかの写真は、他の携帯では絶対に撮れない画だったのですから。Note 10+はPixel 4 XLよりも少し値が張りますが、スタイラスは重要なファクターではなかったので、これが例えGalaxy S10+だったとしても問題はなかったでしょう。いずれにせよ、旅行の際はストレージ量、カメラの数、電池の持続時間などの方が、夜間モードやMotion Senseの有無より重要になります。そもそも、後者は日本では機能すらしませんでした。GoogleのSoliレーダーは国からの認証をまだ得ていないからです。

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Photo: Sam Rutherford (Gizmodo)

Pixel 4はユニークで目をひくデザインに、スマートフォンの中でもベストなソフトウェアを備えているものの、ハードウェアが原因で競合機に遅れをとっています。Googleのスマートフォン用ソフトウェアへの試みは評価しているし素晴らしいのですが、Pixelのユーザー体験は、少なくともまだキラー要素とは言えません。

2019年、iPhoneは画像処理の面で大きなアップグレードを受け、コンピュテーショナル・フォトグラフィの面で、Googleの持っていたアドバンテージを奪いつつあります。一方Androidの世界では、OnePlusのOxygen OSは非常に優れたOSだし、SamsungnのOneUIもバカにできない存在になりました。なので、Pixelのソフトウェアを決定的なアドバンテージにできないなら、Googleはハードウェアの面でケチケチすべきではないと思うのです。