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アマゾンが日本で納税、社員「ようやく親戚に胸を張れます」 方針転換が起きた理由

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アマゾンが日本で納税、社員「ようやく親戚に胸を張れます」 方針転換が起きた理由
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「ようやく親戚に胸を張れます」。転職して数年目の30代のアマゾンジャパンの男性社員はそう語った。「保守的な家族なので『すごい企業だけど、税金払っていないんでしょ』と言われて、答えに詰まったことがあるんです。あと取引先にもよく言われました」と苦笑いした。

共同通信や日本経済新聞が年末に、アマゾンジャパンが法人税の納税額を大幅に増加させたと報じた。グーグルやフェイスブックの日本法人もこれに続くと伝えており、米国のデジタル・プラットフォーマーの納税に対する考えの変化が浮き彫りになった。

デジタル経済の特徴を捉え、フルに節税に活用してきた「GAFA」が態度を変えたのはなぜか。背景には「国際的なデジタル課税の議論の盛り上がり」「日本市場の一段の開拓」の2つの理由がある。

●グーグルやフェイスブックも方針転換

 
共同と日経によると、アマゾンジャパンはこの2年間に合計約300億円の法人税を納税した。合同会社のアマゾンジャパンは決算を開示していないが、唯一公開した2014年の公告では計約11億円の法人税を納税しており、納税額が10倍以上に増えたことになる(14年の納税額は合併した旧アマゾンジャパンと旧アマゾンジャパン・ロジスティクスの2社合算)

からくりはこうだ。以前の日本法人は業務を販売支援やアフターサービスに限っており、中核となる販売や決済に関してはシステムが米国にあり、米本社の委託を受けた形で運営していた。

日本の消費者や取引先との契約主体は米国法人だった。日本法人の売上高は米本社から受け取る業務委託に関する報酬と経費で成り立ち、課税対象となる利益は低く抑えられていた。

これを16年半ば以降、日本法人を契約主体に切り替え、収益が大幅にかさ上げされることになった結果、納税額が大きく伸びたという。

同時に報じられたグーグルとフェイスブックの方針転換も基本的に同じ構図だ。グーグルは19年4月から広告事業の売上高をシンガポールのアジア太平洋統括会社から日本法人に直接計上する。フェイスブックも広告収入をアイルランド法人から日本法人に計上することを検討しているという。

アイルランドやシンガポールは法人税率がそれぞれ12.5%、17%と、いずれも日本より低い国だ。デジタル経済で収益の源泉となるデータやブランドは無形資産で国境を越えて容易に移転できる特徴がある。こうした無形資産は海外に置き、実際に利用者がいる日本では補助的な業務しかしていない立て付けで運営されてきた。

●GAFAの「合法的だが限りなく脱法に近い節税スキーム」

これまでグーグルやアップル、フェイスブック、アマゾン・コムでくくられる「GAFA」は段違いの収益力を持つにもかかわらず、各国への納税額が低いと批判されてきた。欧州連合(EU)の欧州委員会はデジタル・プラットフォーマーの税負担率が従来型企業の半分程度の約10%だったとする調査結果を公表。中でも「GAFA」は数百人規模の税務、法務の専門スタッフを抱え、「各国の制度を調べ上げ、合法的だが限りなく脱法に近い節税スキームを作ることに熱心だった」(税理士)という。

日本でも各社は国税当局とつばぜり合いを演じてきた。国税当局は09年にアマゾンに対し、経営実体があるにもかかわらず、申告額が過少として約140億円の追徴課税を求めた。グーグル、フェイスブックにも過去に申告漏れを指摘していたことがある。だが、追徴課税を不服としたアマゾンのケースでは、政府間の日米租税協議に持ち込み、交渉の結果、日本の主張は退けられた。条約の取り決めは国内法に優先され、国税当局は苦杯をなめてきた。

●国際的に盛り上がるデジタル課税の議論

そうしたアマゾンやグーグル、フェイスブックが考えを変えたのはなぜか―。

第一に国際的なデジタル課税の議論の盛り上がりがある。もともとタックスヘイブン(租税回避地)を活用した税逃れ問題は90年代から国際的に議論されていたが、富裕層やグローバル企業の租税回避の実態が明らかになった「パナマ文書」問題などをきっかけに再燃した。

特に欧州では域内市場を米国のネットサービスに席巻され、適正な税負担をしていないとして批判が根強かった。欧州委員会は18年3月、売上高の3%に課税する域内共通のデジタル課税案を公表。ただ英仏独の推進派と、租税回避の受け皿となっていたアイルランド、オランダなどの慎重派の意見対立が激化し、合意できず19年3月に頓挫した。

その後、経済協力開発機構(OECD)やG20に舞台を移し、年内にも主要国でデジタル課税案の枠組みについて大筋合意を目指している。ただ合意を待たず、フランスなど欧州各国は独自にデジタル課税の法制化を進めており、日本も国税当局も圧力を強めていた。

●日本の国内市場を開拓するうえで、制約となっていた

第二の理由は、日本の国内市場の一段の開拓だ。政府関係者によると、アマゾンが成長の柱と位置付ける企業向けネット通販事業で医療機器販売など一部の製品が規制上、国内法人しか取り扱いができなかった。他にも契約主体が外国法人のままではできない業務があり、そうした制約を嫌ったとみられる。

また、納税額が過少なままだと、今後巨大な市場となる行政向けのクラウドサービスの入札でも、不利になる可能性が指摘されている。

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やグーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP)は、手つかずの自治体向けクラウド市場への足がかりを得るため、水面下で政府に働きかけを強めており、今後商戦が本格化する見通しだ。

昨年11月、経営指標を公開しないことで名高いアマゾンジャパンは10~18年に累計1.6兆円の投資を実施したと明らかにし、関係者を驚かせた。グーグルはデータセンターを千葉県内に建設すると公表。フェイスブックもインスタグラムの開発拠点を小規模ながら開設しており、こうした施設や機能が外国法人の課税対象を決める際の判断基準となる恒久的施設(PE)に当たることも判断に影響した。自民党議員は「結局、日本市場にコミットした方が持続的な成長につながると判断したのではないか」と推測する。

とはいえ、多様な事業を展開する各社が全ての事業で適正に税負担を始めたとは必ずしも言えない。肝心のクラウド事業のAWSやGCPは引き続き海外の法人が契約主体だ。また電子書籍やアプリなどデジタルコンテンツの売上高も海外に計上している。

米国発のプラットフォーマーに限らず、最近は中国企業の進出も加速している。公正な税負担をめぐる国税当局とこうした企業の神経戦はまだまだ続きそうだ。

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