巨大粒子加速器の建設が、ニューヨークに決定!

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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巨大粒子加速器の建設が、ニューヨークに決定!
Image: Wikimedia Commons user Z22

ふたつの研究所が誘致を競っていました。

アメリカ合衆国エネルギー省が、米国内に設置する粒子加速器をどこにするのか、最終的な場所を決定しました。それはニューヨーク州ロング・アイランドにある、ブルックヘヴン国立研究所です。

Electron Ion Collider(電子イオン加速器)とは

略してEICと呼ばれるこの加速器は、重原子の核に電子を衝突させる粒子加速器で、原子核の構造と原子を結びつける力をよりよく理解することを目的としています。

EICは、「ラザフォードの散乱実験」とも呼ばれる「ガイガー=マースデンの実験」など、原子の構造に関する有名な研究の遺産を引き継いでいます。それは原子のための電子顕微鏡のようなもので、電子ビームが高エネルギーの原子核に衝突したときにどう反応するかを観察することで、原子核の構造をより詳しく解明できると期待されているものです。これには、最小として知られる原子核粒子(クォーク)が原子核の中でどのように編制されているか、そして強い原子間力がいかにそれらを結びつけているのかが含まれます。

政治家も一緒に誘致合戦

ブルックヘヴンと、ヴァージニア州ニューポート・ニューズにあるジェファーソン研究所は、この10億ドル以上の実験をかけてこの加速器の誘致を競っていました。

双方の研究所は、EICに組み込める既存の実験を提供していました。ブルックヘヴンは原子核の源を提供するであろう、全周約3.2kmにもなる相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)を、そしてジェファーソン研究所は、電子を提供するEIC計画とほぼ同様の連続電子ビーム加速器施設が使える…というセールスポイントを掲げていました。

どちらの研究室も、それぞれの実験を電子イオン加速器にする方法を詳細に記した提案書を作成し、また地元の政治家たちは、地元経済の活性化を願って誘致を実験を競いました。

エネルギー省が検討

Scienceによりますと、エネルギー省は誘致のため独立した委員会を組織し、各計画のコストを含むさまざまな要因を考慮して場所を選定しました(たとえば、一般的に電子よりもイオンを加速する方がコスト増です)。

科学機関は長い間この実験を支援してきました。米国科学アカデミーは、EICについてこのような評価を発表しています。

この施設は、説得力があり、基本的で、タイムリーで科学的な問題に答え、核物理学における米国の科学的リーダーシップを維持するのに役立つ世界で唯一の施設である

建造までの道のりはまだまだ遠そう

エネルギー省はこのプロジェクトを支援しているものの、EICの建設には更なる認可と資金が必要だったりします。加えてこの計画すべての構成要素を実現させるため、更なる研究と科学の進歩が必要になります。

EICにかかる費用は16億ドル(約1760億円)から2.6億ドル(約2858億円)と推定されているだけでなく、エネルギー省は建設が始まると完成まで10年かかると見積もっています。


加速器といえば、ギズモード編集部も見学してきたスイスにある全周27kmのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)が有名ですが、小規模なEICといえども複雑で高度な技術がないと難しいでしょう。科学の発展は日進月歩ですが、世界のためにもいち早い着工を期待したいところです。

Source: ENERGY.GOV, AIP, VICE, Science, NAP
Reference: Wikipedia