推定12億5000万匹の動物が犠牲に。オーストラリアの森林火災が本当にやばい

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  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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推定12億5000万匹の動物が犠牲に。オーストラリアの森林火災が本当にやばい
Image: Getty Images

12億5000万の命が犠牲に。もしもこれが人間だったらパニックになってると思うのだけど…。

オーストラリアの森林火災に関するニュースで伝わってくる数字は、ゾッとするものばかりです。延焼面積は約11万平方kmと、すでに日本の本州の約半分にあたる面積におよび、火災による煙は1万1000km以上離れた場所まで到達したそうです。そして甚大な被害を出しているこの森林火災は、オーストラリアにおける観測史上最も暑い年に起こりました。

12億5000万の動物が森林火災の犠牲に

それよりももっとショックなのは、森林火災によって殺されてしまった動物の数です。ニューサウスウェールズ大学の生態学者であるChris Dickmanと環境保護団体「WWFオーストラリア」によると、12億5000万におよぶ動物が犠牲になったと推測されています。この数は、オーストラリアの森林が元通りにはならないことと、気候変動が自然界にとって脅威であることを示しています。

それがなんであれ10億という数を把握するのは難しいと思いますが、とりあえずカンガルーやコアラ、ウォンバット、ワラビー、ヘビなどの生き物がすでに死んでしまったか、これから死んでいくと想像してみてください。わたしたちが生きているのはそんな世界です。この12億5000万匹という数は、WWFオーストラリアが2007年に発表したレポートの中でDickmanが用いた「約6500平方kmの森林が燃えると、1億400万匹の動物が死ぬ」というモデルに基づいて算出されたものだそうです。

この数字を今回の森林火災にあてはめると、自然界でこんなに短い時間で起こったことがない、まるで大虐殺のような状況に陥っています。焼け死んだ動物もいれば、生き延びたものの火傷が原因で死んだ動物、焼け跡で食べ物と水を見つけられずに死んでしまった動物もいることでしょう。ニューサウスウェールズ大学のニュースリリースによると、このモデルで算出される推定値は低めに見積もられていて、おまけに昆虫やカエル、コウモリは含まれていないとのこと。

救助と支援が盛んに行なわれているものの、待ち受ける不透明な未来

そんな悲劇の中でも、オーストラリアの人たちは喉がカラカラだったり火傷を負っていたりする動物たちをなんとかして助けようとベストを尽くしています。訓練を受けた犬たちは、生き残ったコアラを見つけるために焼け跡を走り回っています。現地でコアラを含む有袋類のレスキューと治療を行なっているPort Macquarie Koala Hospitalには、世界中から750万ドル(約8億2000万円)を超える寄付が集まっています。

こんな風に心温まるニュースもありますが、一度はレスキューされたコアラが安楽死させられたり、島の3分の1が燃えてしまったカンガルー島に生息するテリクロオウムなどの鳥には、明るくない未来が待ち受けています。クイーンズランド大学でカンガルー島のオウムを研究しているDaniella Teixeiraは、英ガーディアン紙にえさ場や繁殖場が燃えてしまったと話しています。また、昨年12月末の時点で、ニューサウスウェールズ州に生息しているコアラの30%近くが死んだといわれています。

森林火災が鎮火したあとのオーストラリアがどうなっていくのかはとても不確かなようです。カリフォルニアや南アフリカ、ポルトガルやスペインなどの地中海地方のような半乾燥の生態系を持つ地域で起こっている森林火災は、気候変動がもたらすさらなる暑さと乾燥によって激化しているそうです。

2019年に発表された絶滅に関するレポートでは、火災や生息地の変化、水の枯渇や人間活動に由来する病気などを予測するのはとても難しいといわれています。さらに、植物の種類が変化(針葉樹林から広葉樹林や低木、草原への変化)すると、火災に対する弾力性を失うそうです。つまり、森林が火災から回復する力が落ちるため、そこに住む動物が森から受ける恵みも、森が動物を守る力も小さくなってしまうのだとか。

オーストラリアだけの問題じゃない。世界の問題だ

これはオーストラリアだけの問題じゃありません。こんなにたくさんの動物が犠牲になるのは、世界の生物多様性にとっても大きな打撃です。大陸が隔離されているオーストラリアには、他では見ることのできない固有の種がたくさんいます。カンガルーやコアラにばかり注目が集まっていますが、その他にも地球上から消える危機に直面している種がいます。多くの種が絶滅するようなら、世界もまた荒んだ場所になってしまうことでしょう。

わずか数カ月の間に12億5000万もの動物が森林火災によって死んでしまったことを悲しむだけじゃなくて、このような悲劇が繰り返されないように、具体的な行動につなげていきたいですね。