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はてなブックマークという知的怠惰の集積地

テレビに向かってブツブツしゃべるのと同レベルのブコメ

はてなブックマークは議論するための仕組みが根本的に欠落している。ブコメに何を書こうが反論されることはない。このため、ブコメは反論されることを考慮していない言い捨てが当たり前の環境になっている。twitterでは公式アカウントに返事は絶対返ってこないのにリプを付ける人が、「テレビに向かって独り言を言うのと同じでは」と言われることがあるが、ブコメはそういう物言いを助長する――というよりそれしかできないメディアである。

そんな調子なので、ブコメの知的怠惰もだいぶひどいものになってきているという印象である。例えば、最近の私の下記のツイートについたブコメを見てみよう。

ツリーを追わない

id:tokyotokyotokyotokyo いや、女性の給料が上がったら、自然に主夫も増えると思うが。

このブコメ、ツリーにぶら下がっている下記ツイートを全く見ていないことが分かる。クリック一つすらできない、知の体系化に何の興味もない人なのだろう。

なお、この根拠になっている統計は、ツリーのさらに下に挙げた記事で馬(2007)や 山口(2015)の研究にたどり着けるようになっている。

反駁を考慮しない言い逃げ

id:myaoko リーンインのサンドバーグ氏はゴリゴリのパワーカップルだっただろ……。子育てにあたって家族にサポートしてもらったとは書いてあるが主夫になってもらう必要があるとは全く言ってない。勝手に読み替えんな

サンドバーグは普通に主夫の必要性を説いている。サンドバーグの"Lean in"では第8章がパートナー選びと男性の家事参加の重要性ついての記述になるが、彼女自身がパワーカップルでナニーと交通費に大金を払う対等な夫婦であると同時に、その先に主夫があることは当然のように書いている。

仕事を完全に辞めて家事と育児に専念する父親は、社会の非常にネガティブな反応に直面することになる。現在のアメリカでは、父親がいわゆる主夫をしている世帯は全世帯の四%に満たない。そして多くの報告が、こうした父親は阻害され孤立すると指摘している。
――シェリル・サンドバーグ「Lean in」

この後、クリスティナ・サレンと彼女を支える主夫の夫と、サレン流の家事をしてくれる相手選びについて紹介される。"Lean in"が主夫を否定しているかのような書き方は全くしていないし、当然あるべきで増えるべきものとして書かれている。

"Lean in"では主夫論と対等夫婦論の区別が厳格ではないが(著者は男性の家事参加がシームレスに増えるような書き方をしている)、そこを煮詰めたのがスローター"仕事と家庭は両立できない?"であり、こちらではスーパーウーマンをより明確に否定し、その結果として家事参加が「五分五分では足りない」=主夫型が必要と明瞭に指摘している。スローターまで追いかけられるかと言われそうだが、ツリーを追えば先ほど挙げた拙記事にはたどり着けるはずであり、そこでサンドバーグと並べて書いている。

よくわからん上から目線

id:IkaMaru この手の「論客」にかかるとアメリカ流リバタリアンモデルか日本モデルかの二者択一になってしまう。北欧モデルなどは検討にすら値しないらしい

とうの昔に検討してますが、とこれお出しされたらこの人どういう顔するんでしょう。反論されることがないゆえの尊大な物言いという印象。


id:yoko-hirom 学会に所属して専門家相手に論じないのは知的怠惰では。

専門外の経済学で、ワーキングペーパー(論文化を前提とした途中経過報告、未査読の紀要みたいなもの)に対して査読みたいなことをしてますよ(この後著者本人とDMで連絡がついて査読に近いやりとりがあった)。twitterはそのくらいのことが出来るメディアです。

知の体系化への拒否

最近私は、いくつか続けて記事を書き、ジェンダーギャップ解消、男女格差解消に向けた情報の体系化を試みている。いくつかの記事に分散しているが、相互にリンクを張り、読む気があれば体系が見えてくる形になっている。

ただ、はてなブックマークの傾向を見ると、問題点の一部分だけ切り抜いて、そのページのリンク先を見ない限りよくある反論へのディフェンスが見れないページにはよくブックマークがつき、こちらではリンク先でディフェンス済みであるようなブコメに星がたくさんついている。一方、体系化を精緻にするほど(反論の余地がつぶされているほど)ブックマークされない傾向にある。

私の中でのはてなブックマークの印象は、twitterで公式アカウントにクソリプを付ける人と同様、反論を受けない環境でうわごとのように勝利宣言するのが好きな人が過半数なのだろうなと思っている。そのスタイルは、チャレンジ&ディフェンスで知を体系化し理論を精緻化しようとする私の志向とは合わない。



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