飛び方は鳩センパイに聞け。「鳥はなぜ飛べるのか」を追究して生まれたハトボット

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
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  • Rina Fukazu
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飛び方は鳩センパイに聞け。「鳥はなぜ飛べるのか」を追究して生まれたハトボット
Photo: Lentink Lab / Stanford University

この再現性は、もはや美しい...!

鳥はなぜ空を飛べるのか...。飛行の仕組みを研究してきた科学者らが新たに開発したのは、ハトの羽根40片などの素材を使ったハトロボット「PigeonBot」。

「PigeonBot」は基本的に、鳥の羽根の動きを再現したモデルに、小さな飛行機械を統合させたもの。「最初は、ひとつの質問から考えはじめたんです。個々の羽根はどうやって一緒に機能しているのか」と語るのは、スタンフォード大学院生のLaura Matloff氏。もともと動物への関心が高かったという彼女は、子供の頃から野生動物病院でボランティア活動に取り組み、さらに生物学の知識を工学に取り入れることにも意欲的でした。

彼女は今回の研究で高解像度のモーションキャプチャシステムを用いながら、食用ハトの死体で骨を動かす際に羽根がどう動くのか測定を行ないました。(なお、ハトロボット開発には博物館に数多く貯蔵されている死体のハトのみを使用し、研究ではいかなる動物にも危害を与えていないそうです。)

航空宇宙技術者らは当初、個々の羽根を制御できるような、ハトの羽根を使った飛行体の完成を想定していました。ところが測定によるとハトの羽根は意外と単純であることがわかり、翼全体の角度と翼の中間の指関節の角度の2つの変数のみを操作するハトの飛行モデルが作成されました。ゴムバンドのように柔軟な腱によって、すべての羽根の角度がそろうようになっています。

では、耐風性はどうでしょう? マイクロCTスキャナーや電子マイクロスコープを使って羽根を観察すると、風が吹いてもハトの羽根どうしがくっついているのには、羽根を広げたとき羽枝がマジックテープのように作用するためであることが明らかになりました。サイエンス誌に詳述があります。

研究者らはさらに、骨格と指の関節の2箇所で動くことができる人工骨格に本物のハトの羽根40片を配置して、羽根の角度を制御するゴムバンドを使ってハトの動きを再現。それをプロペラ、人工尾翼、舵、コントローラー、センサーと組み合わせ、リモートコントロールを使いながらテスト飛行を行ないました。研究者のEric Chang氏(スタンフォード大学院生)は、飛行が成功して地面に無事着陸したのを初めて見たとき、安堵から地面に崩れ落ちたといいます。この研究の詳細はScience Roboticsで紹介されています。

論文の責任著者で機械工学助教のDavid Lentink氏は、企業が新たなマジックテープを開発したり、航空宇宙技術者がよりシンプルな飛行モデルを考案したりするなど、今回の研究があらゆる業界で幅広く役に立つと考えています。しかし彼は、何よりも教育や研究分野で活かされていることを望んでいるようです。たとえば、今ある標本をもとにロボットを作り出すことで鳥の飛行に対する理解は深まると考えているのだとか。

またハシボソタイランチョウやハクトウワシ、そして絶滅危機に瀕するカリフォルニアコンドルなどの種が耐えられるような人工羽根の測定結果も残してあるといいます。「コンドルをロボットで再現して飛行行動を理解し、その知見から種を助けることもできるかもしれません」と、Lentink氏。研究者らは今後、ハトロボットを使ってさらなる測定やロボットの改良を行なう意向を明かしています。