俳優の東出昌夫と女優の唐田えりかの不倫に対し厳しい反応を見せている日本。しかし愛の国・フランスでは、「不倫よりもセックスレスのほうがタブー」であるという興味深い考察が、2018年に発刊されたフランスの社会学者ジャニーヌ・モシュ=ラヴォの著書『フランスの性生活』(未邦訳)に記されている。

 

モシュ=ラヴォは、2000年と2017年に調査をそれぞれ1年かけて実施し、フランス全土のさまざまな社会階層の男女65人(19~85歳)にインタビューした。調査の結果によると、2000年から2017年にかけて人々はセックスについてよりオープンに話すようになり、「不倫もあって当然」という認識が広がり、「1人が同時に2人を愛する権利を求める」声もあったという。

こうしたことを踏まえ、本著では、フランス人にとってはセックスレスのほうが不倫よりも受け入れがたいという結論が導きだされているわけだが、実際にそうなのだろうか? フランスのとあるホームパーティーに潜入して、みんなの本音を聞いてみた。

「一生同じ人を愛する」ことに懐疑的

話を聞いたのは、30代~50代の男女それぞれ4人の計8人。皆、パートナーと同棲しているが、「ユニオン・リーブル(事実婚)」「パックス(婚姻同様の法的権利をもつが締結も破棄も婚姻より簡単)」「婚姻」とカップルの形式はさまざまだ。

まず、8人のうち事実婚なのは、一番若い30代の幼い子どもが一人いる女性と、3人の子供をもつ離婚歴のある50代女性の2人。フランスではまず子どもを作ってからパックスや婚姻に移行することを考えるのが主流だというが、事実婚である2人の女性にその形式を選んだ理由を聞くと、以下の答えが返ってきた。

 

「私もパートナーもまだ若いし、子どもも1歳になったばかり。この先、仕事やお互いの関係も変わるかもしれないから、今はまだ事実婚でいたい。何も不自由を感じないから」(34歳・女性・事実婚歴7年・子ども1人)

「私はすでに一度結婚しているし、子供たちも大きく、結婚願望もない。今の彼といつかは結婚するかもしれないけれど、先のことは分からないから」(53歳・女性・離婚歴1回・事実婚歴1年・子ども3人)

どうやら、同棲や子育てをはじめた時点では、「一生同じ人を愛する」ことに懐疑的なようだ。“カップルの関係は変わりゆく”というのがフランス人の常識なのだろう。

ちなみに、戸籍制度のないフランスは婚外子の法的・社会的差別もなく、政府の育児支援も手厚い。その上、両方の親に共同親権が与えられるから、子供ができたからといって結婚する必要はなく、できちゃった結婚という概念もフランスにはないのだ。