あえて削除せず、ラベルで注意喚起します。
Twitterが、これから「合成や改ざんされた投稿動画に対して新たな対策を講じる」と発表しました。彼らはルールの変更案に関して調査や、#TwitterPolicyFeedback のハッシュタグを使い、6,500件以上の回答を得た意見をまとめて、フェイク動画に新たな表記を追加することになりました。
具体的には、大幅に合成/改ざん/捏造されたコンテンツで、個人やグループ、そして世間に誤解を招く可能性を秘めていれば、動画の下に「操作されたメディア」とラベルが記載されるというもの。また表示をタップすれば、信頼度の高いソースからの情報が見られるようになります。開始は3月5日から。
Twitterはアカウント主が何でも自由にツイートできるため、デマやフェイク・ニュースでも世界に発信できてしまいます。オマケに画像も動画も投稿できるので、それらも偽物だと余計タチが悪くなってしまうんですよね。
かつてバズったフェイク映像
たとえば2019年6月、家族が雪崩から逃げる映像がバズり、世間では好き勝手なコメントが乱発されました。ですがその映像は、その5年前に公開されたフランス映画の1シーンだった、ということがありました。
Me watching a bad situation and doing nothing till the final hour: pic.twitter.com/C4HC58sD7y
— Dirty Diana (@zama_mdluli) 2019年6月4日
投稿者に悪意はなさそうですが、画質の粗さや、気候変動、登場人物が自分勝手なアメリカ人(だと勝手に判断された)といった要素が、絶妙な信憑性を醸し出してしまったのでした。騙すつもりはなくとも、早とちりした人の意見に尾ヒレが付いて、どんどん拡散されていった例ですね。
もうひとつ、悪意のない例はAmazonの飛行船動画も話題になりました。
午後のネタバレ。信じてる人は皆無だろうけど一応。thetaVでHDRI作ってそのままライティングした。後ろに余計なものも入れてみたけどあまり気づかれてない模様。 pic.twitter.com/o4P8z5agz9
— zozi(厳島神社の人) (@zozi009) 2019年4月1日
これはエイプリルフールのネタで、投稿から数時間後に作者がネタばらしをしています。とはいえ実際にAmazonが飛行船の特許を申請したことや、飛行船が実在するものをモデルにしていることから、これまた信憑性が高かったのでした。「信じてる人は皆無だろうけど」と書かれていますが…いやいやすっごいリアルですよコレ。
政治利用されかねないディープ・フェイク
またフェイク動画といえば、AIを使ったディープ・フェイクがあります。今では人の声を解析し、好きなセリフを思いのままに喋らせる技術が確立しており、オバマ前大統領に任意のセリフを話させるデモ動画がありました。
この動画には「人工的に作られた映像です」といった注意書きがありますが、このままトリミングしてTwitterに投稿すればフェイクになりますし、もちろんこの技術で選挙候補者に有利/不利になる動画を制作することも不可能ではありません。
ジョークとして作られたフェイク動画
エイミー・アダムスが、何かとネタに使われるニコラス・ケイジに変えられたディープ・フェイクや、赤ちゃんの顔がイーロン・マスクにすげ替えられたジョーク系のフェイク動画なんてのも作られたことがありました。
不気味の谷すぎます。
フェイクを見分けるコツ
こちらの記事はフェイク写真についてですが、動画でも同様のコツが適用されると思います。それはたとえば、合成されたであろうオブジェクトの陰の方向や明るさのミスマッチ具合を判断したり、事実確認をしてみたり、検索したり、はたまた動画なら動きや声が妙にぎこちない、という場合もあったりします。
Twitterはおそらく、上記のような確認方法やフェイク動画についた反応、そしてマシーン・ラーニングなどを駆使して判断するのかなと思われます。
これらの例は悪意がないものばかりですが、もしもその意図を持って個人や不特定多数を混乱させて楽しみたいという人がいれば、それが可能になってしまう時代になっています。動画ではないものの、日本では東日本大震災のときに結構なデマが拡散されたこともありましたもんね。ヘタしたら人命に関わります。だからこそ、Twitterが捏造動画を削除するのではなく、「フェイクですよ、気を付けて」と注意する方向をとったのかなと思います。
さて3月5日以降、初めてフェイク認定されるのはどんな動画なのでしょうか? そして人々の反応やいかに?
Source: Twitterブログ, Twitter (1, 2), YouTube (1, 2), gfycat