衝撃事件の核心

「ズボン姿の女性」を後ろから撮り、県職員は「盗撮」で逮捕された…どこから盗撮にあたる?広がるグレーゾーン

平成26年10月、静岡県御殿場市のアウトレットモールで、県職員の男性(53)がスマートフォンで女性(24)の下半身を盗撮し、県迷惑防止条例違反で逮捕された。両者の間で示談が成立し、男性は起訴猶予となり、県は減給6カ月(10分の1)の懲戒処分を下して事件は幕を閉じた-。よくある盗撮事件のようだが、当時、女性はスカートではなく、ズボンを着用。事件に対し、「どこが盗撮なのか?」と疑問の声も上がった。最近は服の上からの撮影でも盗撮行為として逮捕されるケースが急増。どこからが盗撮行為にあたるのか。境界線を探った。

「卑わいな言動」とは

事件が起きたのは、平成26年10月26日、買い物客で混み合う昼下がりの「御殿場プレミアム・アウトレット」だった。男性は細身のズボンをはいた女性に目を付け、スマホを腰辺りに構えて、5メートルほど後ろからついて回り、数十秒間にわたって動画撮影を行ったという。この男性の不審な行動に女性の友人らが気づき、110番通報。男性は、駆けつけた御殿場署員に県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の現行犯で逮捕された。

捜査関係者によると、男性は当初、「富士山を撮っていた」と容疑を否認。しかし、目撃者が複数いたことや動画記録がスマホに残っていたことが決め手となり、男性は「仕事のストレスがあった。スタイルのいい女性を見つけたので撮りました」と認めた。しかし、一方で「スカートの中を撮っていたのではない。犯罪だという認識がなかった」と弁解していたという。

一体、男性はなぜ逮捕されたのか。

今回、男性の行為は、県迷惑防止条例が定める「卑わいな言動」に該当するとされた。同条例第3条では、「正当な理由がなく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない」としており、その1つとして「公共の場所又は公共の乗物にいる人に対して卑わいな言動をすること」と明記。違反した場合は、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科される。

平成20年11月の最高裁判所の判例によれば、卑猥(ひわい)な言動とは「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」と定義されている。

同署の捜査関係者は、今回の逮捕のポイントについて「まず、撮られた女性が被害を訴えている。次に動画記録という客観的証拠があった。そして最後に本人が容疑を認めた。この3つがそろったので逮捕は妥当と判断した」と説明。「男性は、女性のお尻をアップで長時間撮影していた。たとえ下着が写っていなくても、羞恥心を与える行為、すなわち卑猥な言動と認められる。もし女性の全身を写していたのなら、逮捕は難しかったかもしれない」と話した。

つまり、たとえ服の上からの撮影でも、撮影した部位や撮影時間、被写体との距離などによっては、条例違反となる場合があるというのだ。

窮屈な社会に?

「服の上からの盗撮」の摘発は、他県でも相次いでいる。

今年8月、川崎市職員の男性が電車内でUSB型カメラを手の中に隠して、隣に座っていた女子大生の全身を撮影したとして逮捕された。相模原市では平成24年9月、文化祭でチアダンス中の女子高生の太ももなどをデジタルカメラで撮影したとして男2人が逮捕。いずれの事件も、神奈川県迷惑防止条例違反(卑猥な言動)が適用された。

会員限定記事会員サービス詳細