植物ベースの食生活は、アスリートに限らず誰がしても良い食習慣かもしれませんが、Netflixの『Game Changers』というドキュメンタリー映画は、植物ベースの食生活は他の食生活より優れており、肉食は有害であると主張しています。

一方、ほとんどの栄養の専門家は、これとは別の主張をしています。

ここでは、映画『Game Changers』の主張とビーガンの栄養と運動の関係について知っておくべきことを見ていきましょう。

真実:植物ベースの食事でもタンパク質とその他の栄養素をたっぷり摂取できる

映画が始まると早々に専門家が登場して、ベジタリアンの食生活に関する多くの間違った思い込みを指摘するので、ビーガンやベジタリアンの食生活は健康的であり得ないと思い込んでいた人は、ここは見る価値があります(もっとも、こうした間違った思い込みが実際にはどの程度普及しているのかわかりませんが)。

この映画が指摘している数少ない真実は次の通りです。

  • 持久力を要する運動をするためのエネルギーはタンパク質からは得られません(ただし、タンパク質は筋肉を増強したいときは役立ちます)。
  • ビーガンの食事からもタンパク質をたっぷり摂取できます。
  • 植物から高品質のタンパク質を摂取できます。

上記の項目にはいくつか注意点があるものの、真実であることに違いありません。要するに、大いに活躍しているビーガンのアスリートはたくさんいるということです。

ビーガンのタンパク質源と肉をタンパク質対カロリーの比率で比較するとかけ離れているので、ビーガンがタンパク質を十分に摂取するためには食べる量を増やす必要があります。サイクリストやウルトラランナーなら、ワークアウトで大量のカロリーを消費するので、それでも構いません。

しかし、減量しようとしていたり、低カロリー高タンパクの食事が望ましい筋力トレーニングをしていてカロリー摂取量を減らす必要がある場合は、植物ベースのプロテインパウダーを使うべきかもしれません。

この映画では、ほぼ同量のタンパク質を含有しているとされる4つの食べ物を例として示しています。数字を見て、この4つが比較できるものか考えてみてください(私は、この比較はちょっと不正確だと思います)。

  • 調理したヒラマメ1カップ:18g
  • ピーナッツバターサンドイッチ1個:15g
  • 牛肉85g:22g
  • 大きい卵3個:18g

アスリートにとって効果的な食生活を確立する方法はたくさんあり、植物ベースの食生活を維持することもその1つだというアプローチをとるなら、それはそれでいいでしょう。現に、米国栄養と栄養士の学会米国スポーツ医学会などもこの立場を取っています。

しかし、アスリートにとってビーガンの食生活が肉も野菜も食べる食生活より優れていることを証明する説得力のあるエビデンスはありません

誤:人間は「生まれつき」肉でなく野菜を食べるようにできている

残念なことに、この映画には、人間の身体形成に関して不正確で誤解を招くような発言を繰り返している部分があります。

確かに人間の消化管は肉食動物の消化管より長いのですが、草食動物の消化管よりは短いのも事実です。また、人間の臼歯は肉食動物の臼歯とは異なりますが、草食に特化された臼歯でないことも事実です。

さらに、人間が持つ3色型色覚は、ほとんどの哺乳類は肉食・草食に関係なく持っていません。人間は明らかに植物と動物の両方を食べるようにできており、それに関しては科学者の間でも議論の余地はありません。

ですから、「人間は生まれつき肉でなく野菜を食べるようにできている」という主張はばかげています。

誤:ビーガンの食生活でアスリートのパフォーマンスが向上する

映画は、たとえノンフィクションであっても、注意深く脚本が書かれて編集を施したストーリーです。

リアリティ番組のことを考えてみましょう。番組は「リアル」であっても、視聴者に伝えたいことに基づいてプロデューサーが多大な努力を払ってストーリーの流れを作っていることはご存知でしょう。

ですから、植物ベースの食生活をするアスリートに関する映画のストーリーを見るときは、そのことを思い出してください。

たらふく食べていたフライドチキンをビーガンの食事に切り替えたのかもしれませんが、果たしてそれが彼らの成功の原因なのでしょうか?多分違います。Kendrick Farris氏がオリンピックに出場したのは素晴らしいことですが、肉をたっぷり食べている重量挙げの選手もたくさん出場しました。

アスリートが苦労の末に成功するときは、何か1つだけ変えたわけでなく、生活面でもトレーニングの面でも多くのことを変えた結果だと考える方が妥当です。

食生活を変えるだけのモチベーションがあるなら、おそらくコーチング、トレーニングの時間、休息日、重量のクラス、そして成功に影響を与える可能性のあるその他のすべてのことに関して疑問を抱くだけのモチベーションがあるはずです。

言うまでもなく、未検証のスポーツのアスリートが「より強く、より大きく」なった方法について語るとき、彼らは植物ベースのプロテインパウダー以外のものも摂取している可能性が必ずあります。

誤:スクリーン下部に掲載される研究はナレーターの言うことの裏付けになっている

私は、この映画の科学的な情報源をすべて掘り下げることはできませんでしたが、深堀りしてみたことに関しては、どれも満足のいく根拠が無い主張でした。

たとえば、3人のアスリートが肉ベースか植物ベースのブリトーを食べる(デモンストレーションというよりは)「実験」をしています。これは、肉が血管の内皮機能を阻害することを示す目的で行われています。

ナレーターがこの実験の意味について語ると、スクリーン下部に7つの研究が表示されます。

血中トリグリセリドに対する効果を「牛肉と鶏肉」対「豆とアボカド」で比較するというよりも、むしろぶどうジュースチョークベリージュースブルーベリーフラボノイドココアお茶に関する研究が示されています。

Googleで簡単に調べたところ、似たような研究で、ハムが内皮機能に有益な効果があることを実証しているものがあることがわかりました。

一方、この映画が紹介している研究は、アボカドが血中脂質に良い影響を及ぼすことを示しており、肉を食べる食事と植物ベースの食事の対比でなく、アボカドを入れたハンバーガーとアボカドなしのハンバーガーを比較しています。

ボディービルのコーチで栄養科学の博士号を持つLayne Norton氏は、このデモンストレーションを次のように要約しています。

[このデモンストレーションを行った科学者]は、内皮と血管拡張について長々と話していましたが、血管拡張や内皮機能に関係することは一切測定していませんでした。肉を食べる人から取った血清が濁っていた理由は、ブリトーがより多くの総脂肪を含んでいたからだと思われます。食事から摂取する脂肪はカイミクロンになり、このカイミクロンのせいで、高脂肪の食事をした後は血清が濁って見えるようになります。

もう1つ別の典型的な例として、映画は「古代ローマの剣闘士は、豆と大麦を中心にした植物ベースの食生活をしていた」と主張しています。しかし、その主張の根拠になっている実際の研究は、この研究分析では「当時の剣闘士が食べていた肉の量はわからない」と述べています。

真実:「肉食は男らしい」は不適切な固定観念である

これはいつも私を悩ませてきた固定観念です。

人間は、性別を問わず、肉だろうが野菜だろうが食べていいんです。性別に関係なく筋肉を強化していいんです。ですから、私はこの映画がその固定観念を打ち破り、男性も平和に野菜を食べさせている点を称賛します。

疑わしいと思う人は、代表的マッチョ俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが『Game Changers』でしている発言を聞いてください。そうすれば、きっと納得できるはずです。

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Image: Shutterstock

Source: eat right., ACSM, NCBI, THE STRAIGHT DOPE, npr, Colblindor

Beth Skwarecki – Lifehacker US[原文