感受性が強く、他者の感情に非常に共感しやすい人を指す「エンパス」という言葉が注目を浴びています。

世界で5人に1人はエンパスと言われており、よくHSP(Highly Sensitive Person)と一緒にされますが、エンパスはHSPを「さらに敏感にした人たち」で、しばしば生きづらさを感じながら生活を送っています。

世界の5人に1人は「エンパス」

日本ではまだ馴染みがないですが、米国の精神科医ジュディス・オルロフの著書『LAの人気精神科医が教える共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』(桜田直美 訳、SBクリエイティブ)によって、少しずつ知られるようになりました。

もし自分がエンパスだったら、人生の質を高めるためにはどんな方法があるのでしょうか? 本書をもとに、かいつまんでご紹介します。

エンパスには長所も短所もある

エンパスは、その繊細さからどうしても「生きづらさ」とセットで語られがちですが、長所も多いとオルロフ医師は述べています。

とても思いやりが深く、困っている人の気持ちを敏感に察知することができる」というのもその1つ。創造性が高く、物事を広い視野から眺めることができる人も多いし、動物とのつながりを持つのが得意で動物保護や動物とのコミュニケーションを仕事に生かす人もいます。

他方、孤独や寂しさを感じたり、刺激に敏感すぎて燃え尽きた状態になりやすく、たとえパートナーであったとしてもある程度の距離を保たないと耐えられないといった短所も持ち合わせています。

加えて、ストレスの大きさからくる副腎疲労症候群に罹りやすいアルコールや買い物に依存しやすいといった傾向も抱えています。

ですが、エンパスの気質は、治療すべき病気や障害ではないとオルロフ医師は断言します。「エンパスもまた、“普通”の人たちであり、ただ感受性が平均より強い傾向にあるというだけ」だからです。

そして、エンパスの敏感さは病的なものではなく「一種の才能」だと、オルロフ医師は考えています。

依存体質への対処法

エンパスは、強すぎる感受性をもてあまして何かに依存しやすい傾向があるとオルロフ医師は指摘します。依存対象は、アルコールギャンブル買い物などさまざま。

そうした依存傾向に対処する方法についても、本書で説かれています。その1つが食べ物への依存(主として糖分の摂りすぎ)からの脱却方法。

「10のティップス」としてまとめられていますが、例えば次のような方法があります。

・呼吸でストレスを吐き出す:

ストレスを感じたら、すぐに自分の呼吸に意識を集中する。ゆっくり呼吸しているうちに、ネガティブなエネルギーが吐き出されていく。恐怖で息を止めると、毒素が体の中にとどまってしまう。

・水を飲む:

衝動的に何かを食べそうになったら、浄水器の水か、天然のミネラルウォーターを飲む。水はあらゆる毒素を洗い流す効果がある。1日に最低でもコップ6杯の水を飲む。シャワーやお風呂にもネガティブなエネルギーを洗い流す効果がある。

・野菜をたくさん食べる:

食べすぎて体重が増えがちな人は、野菜をたくさん食べて食欲を紛らわせる。全粒粉を食べるのもいいが、食べすぎると炭水化物の依存症につながるので注意すること。

(本書130ページより)

エンパスが幸せな恋愛をするためには

恋愛において、エンパスは「親密なパートナーを求めている一方で、親密な関係を怖がってもいる」という、相反した思いを抱えやすいという特徴があります。

これは、「相手に愛され、大切にされることで心が落ち着き、本来の自分でいられる」という恋愛の正の側面を享受できると同時に、距離が近すぎると「関係の重さに耐えきれなくなり、逃げ出したくなる」という思いにも囚われるからです。

そんな難しい課題に対処する方法が、「エンパスが恋愛で成功するための12の秘密」として本書で提示されています。

たとえば、「定期的に1人になれる時間を確保する」。精神を落ち着かせエネルギーを回復するために1人でいる時間を持てるよう、パートナーと話し合います。1人でいるまとまった時間とは別に、1日に何度かのミニブレイクも設けると効果的です。

関係を良好に保つ方法として、サンドイッチテクニックというのもあります。

苦言や要求など、相手に何か言いにくいことであってもそれを言わずにいられい場合は、最初にポジティブな言葉で切り出し、苦言・要求を伝え、最後にまたポジティブな言葉で締めくくるやり方です。

エンパスの理想的な働き方

向いている仕事

オルロフ医師は、「エンパスにとって理想的な仕事は何ですか?」という質問をよく受けるそうです。

それに対する答えは「ストレスが少なく、少人数か1人で働く仕事が向いている」というもの。

これには、満員電車で通勤し、騒々しいオフィスで1日中勤務するスタイルだと「知覚のオーバーロード」が起きやすいという理由があります。

また、ストレス耐性の低さから、仕事で嫌なことがあると立ち直りに時間がかかるというエンパスの特性を踏まえた見解です。

具体的な職種として、「自営業、フリーライター、フリー編集者、アーティスト、その他のクリエイティブな職業」を挙げていますが、これに限りません。

環境保護など自然を守る職業や、人を助ける仕事なども出てきますが、仕事とプライベートの区別をしっかりつけるなど注意点が出てきます。

1人で働く場合に注意したいのは「孤独にならないこと、そして頑張りすぎないこと」。会社勤めでなくとも、ワークライフバランスの配慮は必要です。

既に会社勤めをしているエンパスには、自宅勤務の日を設けられないか会社に相談することがすすめられています。

向いていない仕事

一方、エンパスには向いていない仕事というもあります。

職種で言えば、営業を筆頭に「広報、政治、大きなチームを率いる管理職、法廷弁護士」。

職場環境で言えば、「定期的なミーティングや、野心家の同僚、何かと張り合ってくる同僚の存在」がある所は、エネルギーを奪うため向いていないとされています。

すべてが理想にかなった仕事に就くのは難しいかもしれません。今の仕事は理想的でなくても、おいそれとは辞められない人もいるでしょう。

本書でも、その点に言及があり、自分なりの工夫によって対処が可能だとしています。以下は、アロマテラピーというエンパス向きの仕事に就きながら、出張(車の移動)が多いというエンパスの言葉です。

「私にとっては、運転中とホテルの部屋に戻ったときが1人になれる時間です。出張にはいつもロウソクを持っていって、ホテルの部屋で灯すの。同じホテルに何泊かするときは、花も買って飾るようにしています」

(本書296ページより)


ここでは割愛しましたが、本書には周囲のストレスを吸収しないためのテクニック、子育ての労苦を乗り越えるコツなど、エンパスとして幸福な人生を歩むために必要な知識が盛り込まれています。

もし「自分はエンパスかもしれない」と思い至り、生きづらさを感じているなら、本書から得るものは大きいと思います。

一度読まれてみてはいかがでしょうか。

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