Star Trekにまた一歩近づいた!数十秒で3Dプリントできる新技術

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
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Star Trekにまた一歩近づいた!数十秒で3Dプリントできる新技術
Image: EPFL

レプリケーターまで後もう少し?

転送装置、光速で移動できる宇宙船... Star Trek(スタートレック)は私たちに、23世紀が待ち遠しくなるような素晴らしい未来の技術を見せてくれました。しかし、そのすべてが私たちが白骨になった後まで登場しないとは限りません。というのも、3Dプリンタがレプリケーターの実現に向けて大きな一歩を踏み出したからです。

製造業やプロトタイプ制作では何十年も使われてきたツールですが、MakerBotのような企業が3Dプリンタを小さく、安くして家庭でも使えるようにするまで、何もないところからパーツや食べ物を作り出す、Star Trekのレプリケーターと比較されることはありませんでした。しかし、実際の3Dプリンタはレプリケーターというには程遠いのが現実です。現在は3DCGのモデルをプラスチックの物体に変えることができますが、サイズ次第では数時間から何日も待たないとプリントが完成しません。

しかし、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のLaboratory of Applied Photonics Devicesは、光造形法によって、小さくてディテールも細かい3次元の物体を、数時間ではなく数十秒でプリントできるプリンタを開発しました。

3Dプリンタの課題

MakerBotなどの企業から販売されている3Dプリンタは、液状のプラスチックをノズルから押し出し、特定の形の薄い層を作ります。これを何度も重ねていくことで長い時間をかけて形を作り出すわけです。この方法は安価で行なうことができますが、物体につけられるディテールが制限されてしまいます。光造形法(SLA)を採用しているプリンタは少し違います。モデル自体は相変わらず一層ずつ作成されますが、液状のプラスチックを押し出すのではなく、高精度の光を照射して液状レジンを固めます。この方法だと、光の精度のおかげで、モデルには細かいディテールを施すことができるようになります。しかし、それだけではまだかなり時間がかかってしまいます。

複数のレーザーを同時に照射、短時間かつ高精度に

Video: EPFL/YouTube

EPFLの研究者たちは、1本のレーザーではなく、複数の位置から同時にレーザーを照射することを考えたのでした。ビームの角度や強さを注意深く調節することで、あたかも何もないところから3Dの物体が、ものの30秒ほどで現れるように見えるのです。

現在主流の方法は、人工臓器や人工筋肉など柔らかいものには不向きです。長い制作プロセスの間に壊れてしまうことが多いからです。しかし、EPFLの新しい方法はそういったことに最適です。さらに、物理的に接触しながら作るのではなく、心臓や筋肉組織などを密閉された空間で作るので、そこから汚染される心配も大幅に減ります。

現在の状態では、大きさ2センチで80マイクロセンチメートルまでのディテールを再現可能です。研究者は、マシンの開発を進めることで、最大で15センチまでのモデルを1分以内に作ることができると自信を見せています。まだレプリケーターとは言えませんが(熱いお茶まで作ってくれる訳ではないですからね)、この3Dプリントへの新しいアプローチは、技術を医療関係の場でより有用にしてくれるでしょう。