ちょうど本棚に「ダンまち」が見えたので、同作を例に話をスタートしましょう。
筆者は「ダンまち」の1巻を初めて読んだとき、スキルやステータス(作中ではステイタス)という概念が登場した点に違和感を抱き、しばらく拭い切れませんでした。こうしたゲーム的な概念がファンタジー世界で所与の設定となっている点に、ピンとこなかったからです。
通常、人間の能力が数値化され、一定以上の経験値を溜めたら自動で上昇する、ということはありません。現実世界ではもちろん、ゲーム以外の創作の世界でも。そもそも人間はそういう存在じゃないからですね。
「ダンまち」はそこを神様たちの恩恵という設定で補うわけですが、ファンタジー世界に「能力の数値化」「自動成長」「レベル」といったゲーム的な構造が持ち込まれている点に、最初は正直、納得感がありませんでした。
スキルも同様で、どうにもしっくりこなかったです。人間にとって戦闘技術や魔法は「身につける」ものであって、一定のレベルを迎えたら自然と「発現する」ものではないので。
こうした経験値ストックによる断続的な成長や、成長に伴うスキルの発現という発想はとてもゲーム的だと感じます。
そして、最近のライトノベルは全体的にゲーム化しつつあるなという気が個人的にはしています。ステータスやスキルという概念が当たり前に登場するようになったのも、その流れなのかなと(いちおう付記しておきますと、それが良い悪いという話ではありません)
この点について、10〜15歳くらい年下の物書きさん何人かに「違和感ないですか?」と聞いてみたら、漏れなく「特には」と返ってきました。
どうやらこうしたゲーム的な世界観も、いまの若い書き手や読み手の皆さんには自然なものとして受け入れられるようです。もちろん人によるのでしょうが、ちょっとジェネレーションギャップを感じて興味深かったです。
ちなみにダンまちは大好きです。全巻読んでいます。過去にこんな(↓)記事も書きましたが、創作上もとても参考にさせてもらっています(特にストーリー構成と表現)
*
話をかなりずらします。
筆者が多感期(思春期)に大量摂取してきた90年代前半のRPGは「SFやファンタジーをゲーム化した作品」が多い印象でした。ステータス、スキル、経験値やレベルといったRPGフォーマットを基盤としつつ、SFやファンタジーなど広義の創作におけるリアリティを一定担保していたとでもいいましょうか。
特にキャラクター設定において、この印象が顕著でした。
たとえば、筆者は小学生時代、ドラクエにはハマれず、FFには熱中しました。
ドラクエにハマれなかった理由は、少年少女が旅に出るという週刊少年ジャンプ的な設定が受け入れられなかったからです。少年少女が凶悪なモンスターに勝てるわけないじゃないかと。
主人公が喋らないのも違和感がありました。「喋らない人なんて、いるわけないじゃないか」と(なんてムカつく小学生だ)。その影響で、なんで冒険してるのか分からなかった(主人公が語ってくれなかった)のも長続きしなかった要因ですね。
また、ビジュアルイメージも大きく影響していました。背が低い、童顔など、少年少女感が強かったんですよね。
とはいえ、実際にプレイしたのは1と2だけで、残りはどんな設定だったのか知らないまま、パッケージなどのキャラクタービジュアルや友達から聞いたストーリーだけでそう判断していました。そのため誤解していた可能性が多分にあります。
対して、FFはRPGとして一定の説得力を感じていました。
たとえば、最初にプレイしたFF4は、セシルもカインも王国の兵士。そりゃ強いよね、たくさん訓練してるんだろうし、モンスターくらい倒せるよねと(この帰結もどうかと思いますが)。ほかのキャラも、リディアやポロム、パロム、シドあたりは少し違和感ありましたが、全体的にはおおむね納得感がありました。キャラクタービジュアルも、その印象を強めていました。
余談ですが、FF4はキャラクターの年齢も全体的に高かったので(リディアやポロム、パロムを除けば、今なら成人)、RPGの登場人物として違和感がありませんでした。
要は、FFは筆者にとって、RPGとしての説得力があったのです。
当時はスクウェア全盛期ということもあってか、世に出たRPGの多くは、FF4的な「SFやファンタジーをゲーム化した作品」といった印象でした。いかに超常的な世界であっても、少なくともその世界におけるリアリティは多少なり担保されていたように感じます。
もっとも、当時は小学生でたくさんのゲームを遊べなかったので、観測範囲が狭かっただけという可能性も否めません。
*
その後、90年代後半〜2000年前後あたりから、その流れが少しずつ変わっていく印象を抱いていました。ゲームの基盤となっていたSFやファンタジーが、どんどんゲーム化していくような気が。
個人的に大きな契機となったゲームは、奇しくもFF7。「マテリア」というシステムの登場に大きな違和感を抱きました。似たシステムであるFF5のジョブは「職業を変えて研鑽を積むと、それに応じたアビリティが身につく」という一定の納得感もあったのですが、武器防具にセットしただけでアビリティが身につくマテリアは、どうにもピンときませんでした。
よくFFは「6までがファンタジーで、7以降はSF」という意見を耳にしますが、個人的には「6までがファンタジーやSFのゲーム化、7以降はゲームのファンタジー化あるいはSF化」といった印象です(9までの話。10以降はプレイしていません)
キャラクター面でいくと、もうぜんぜん端点を覚えていませんが、どんどん弱年齢化が進んだなという印象だけは間違いなく持っていましたね。そもそも「若い世代も戦って当然」といった世界観なら、しっくり来るんですけど、現実世界=普通の中高生が戦う感じの作品は、受け入れられるようになるまで、けっこう時間がかかりました。
ただ、このあたり上手く作られた作品もたくさんありました。ペルソナなんかは代表例ですね。それまで普通に生活していた高校生がいきなりペルソナ覚醒して、あれやこれやに巻き込まれていきますが、その設定・流れに違和感がなくてすごいなぁと感じたのを覚えています。
*
この頃はプレイステーションなどの登場で容量の制約が小さくなり、できることが増えた影響なのか、さまざまな挑戦的なゲームが登場した気がしていました。特にストーリーとは別の面、映像面(プリレンダムービーの登場など)やゲームシステムに凝った作品が増えたなぁと。
そして、RPGのゲーム化が進み(いやそもそもゲームですけど)、リアリティがどんどん削られていくのを複雑な気持ちで眺めていました。特に、この頃のスクウェア〜スクウェア・エニックスのRPGは、その方向へ大きくシフトしていったように感じていました。
特にムービーシーンの登場は、個人的にけっこう大きな転換だった気がします。というのも、ムービーではキャラクターの武器や格好がデフォルトのままなので、「装備どうしたんだよ」「ダメージ負ってたのに傷ないの?」とか思ってしまうんですよね。性格が悪いので (苦笑)。ドット絵はそのあたりを想像力で補えたので、むしろリアリティがあって楽しかったです。
いちおう補足しておきますと、筆者は当時のゲームが大好きです。スクウェア(・エニックス)のゲームでいくと、FF7〜9は各5周はしましたし、クロノ・クロスやゼノギアスや聖剣LOMも同じくらいハマりましたし、キングダムハーツも大好きでしたし、すばらしきこのせかいやミンサガなんかも熱中しました。
ただ、ゲームとして好きではあっても、その設定やゲームシステムなどに納得していたかはまた別の話、ということです。
そうした違和感に悩まされることなく純粋に楽しめたゲームは、どんどん減っていった気がします。当時だとメタルギアソリッドくらいでしょうか。
MGSは、かなりリアルでしたよね。スネークは外見的にも設定的にも強くて当然ですし、ストーリーにも説得力がありました。ステルスゲームというジャンルも世界観にピッタリ。個人的に「リアルをゲーム化したゲーム」の代名詞的存在でした。
*
数年前から、ライトノベルにも上記と似たようなゲーム化の変化が起きてきたように感じていました。
ステータスやスキルといった概念の一般化もそうなのですが、異世界転生・転移やチート、ハーレムといったフォーマットも、個人的にはその延長にある気がしています。
これらのフォーマットは基本、世界が主人公にとって都合の良いルールで設計されています。言い換えれば、作品世界とルールが分離しています。ゲームをファンタジー化・SF化したRPGにおいて、ストーリーや世界観(=作品世界)とゲームシステム(=ルール)が分離しているのと同様に。
こうした「作品世界の所与の条件として何を設けられるのか」は、理解しておくと作品づくりの幅が広がりますし、流行りを踏まえる上でも必須の知識です。感性的に「受容するかしないか」は置いておくとして、少なくとも「理解」はしておかないといけません。おっさんにはそれがけっこうキツいんですけどね。特に時間的な意味で。
2016年、ニート終了と同時に再びゲームを再開したのも、そのあたりの感覚を磨くためなのですけど、ザナドゥ、ブルリフ、イース8をやって以降は、BBCP、BBCF、BBTAGといっさいリアリティと無縁の格ゲーばかり遊んでて、おいおいという感じ (笑)
ただ、筆者は(ほとんど)ライトノベル系のファンタジーしか書かないので、特にこのあたりは意識していかないといけません。自分の作品に使う使わないは別として。
というわけで、とりあえず2月20日にペルソナ5がswitchで出るので、それを機にRPGもちょこちょこ再開しようと思います。いや最初から買う予定だったんですけどね。メガテン・ペルソナ大好きなんで(今更感すごいですけど)
特にペルソナ系は、昔から作品世界とゲームシステムがうまくシンクロしてる見事な作りなので、このあたりの感覚を把握・参照する上でとても参考になります。今から楽しみです。
なんかまとまりがありませんが、とりあえずそんなところです。寝る前の寝ぼけ頭で、気の向くまま勢いに任せて書いてるので、後で書き直すかもしれません。
眠いので、寝ます。