五輪、船内隔離、移送中の感染…米国立アレルギー・感染症研究所所長が語るコロナウイルスQ&A

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五輪、船内隔離、移送中の感染…米国立アレルギー・感染症研究所所長が語るコロナウイルスQ&A
下船のときは陰性だったのに…

チャーター機も大変。

ダイヤモンドプリンセス号の感染者が医療従事者3人、死者2人を含む計621人となって水際作戦の難しさが叫ばれる中、「隔離は失敗」と判断してチャーター機を派遣したアメリカも下船後に14人が陽性に転じて大わらわ。非感染者のみ帰国させる方針を急きょ変え、機内にプラスチック壁を設けて移送を断行し、最大の感染クラスタを抱え込むことになってしまいました。

移送断行の判断に関わったアメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が、国民に向けてコロナウイルスの素朴な疑問に答えていましたので、日本に関連するところだけ拾って訳しておきますね。

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目の下にクマをつくって取材に答えるアンソニー・ファウチ所長
Image: USA Today

Q. 日本のダイヤモンドプリンセス船内隔離は失敗だったと思いますか?

A. 当初の方針は、船内で感染予防策を施して安全に隔離するのが一番というもので決して不合理ではありませんでした。ただ結果的に船内の感染拡大防止には至らなかった。その意味では失策と言えます。どうオブラートにくるんで外交辞令を言っても、現に船内で感染者が出てしまったわけですから、船内隔離の何かが間違っていたと考えるほかありません。それが何かはわかりませんが、大勢の人があの船の中で感染したことは事実です。

Q. 下船時に陽性反応が出た乗客14人をなぜチャーター便で米国に帰国させたのですか?

A. これは部内でも意見が割れました。最善の安全策をめぐってかなり激しい議論が深夜まで交わされましたが、文字通り毎時4~5人の勢いで感染者が出ている状況を鑑みて、感染者が454人になった時点で下船させる判断を下した次第です。

Q. 症状が現れていなかったから帰国を許可したのですか?

A. いいえ。深夜に下した苦渋の決断です。目の下にクマができてるのは、そのため。難しい状況でした。陰性だと思われたのですが、バスに乗って、いざ出発という段になって陽性反応が出たんです。さてどうするか。みなさんならどうしますか? バスから降ろして日本に留めるか、機内で隔離するか。この隔離環境については海の向こうとこちらを結んで細かく説明を受けましたが、隔離ラボ顔負けのものでした。

Q. それで決定に踏み切ったと?

A. 問題は、みなとにかく日本を出て自国の設備で治療を受けたいと強く要望していたことです。滞在のストレスは想像を絶するものでした。シニアで、持病のある方も多く、みな国に帰りたいと願っていたんですね。また、ほかの人たちに感染を広げずに機内で安全に移送できる体制もありました。

Q. ほかの器官疾患と比べたCOVID-19の致死率は?

A. 2002年のSARSは今回ほど広まりませんでした。1年で8,000例であるのに対し、今回は2か月でSARSの10倍近く感染しています。ただ致死率ではSARSが9~10%、MERSが36%でコロナより上です。一概には言えませんが、気管系のウイルスは通常、感染力が高いほど致死率は低く、致死率が高いほど広まりにくいですからね。

Q. パンデミックなんですか?

A. WHOは世界のパンデミックとは宣言していません。中国次第。

Q. 症状が現れていない人からもうつる?

A. 気管系の病気は通常症状が出ている人からうつります。無症状感染の規模はわかりませんが、症状が出る前にうつる初期の事例も出始めています。

Q. ほかにも謎な点は?

A. 気管系の病気なのに、なぜ子どもにうつらないか、ですね。15歳未満の発症例がまだないので、妙な理由で感染しないのか、それとも症状が現れにくいのか…。感染中間年齢は56~59歳。それははっきりしているのですが。

Q. 中国産の製品からうつるという不安の声もありますが?

A. 流行り病が広まるとみな、あることないこと言って怖がりますからね。人が梱包して海外に貨物輸送したものから感染するということはありません。

Q. 風邪のほうが怖い?

A. インフルエンザが第2のピークを迎えていますからね。今年亡くなった子どもの数は過去10年かそれ以上を上回っています。それが一段落ついたらH1N1の第2波がきて子どもへの影響が深刻です。みな中華料理店に行くのを心配していますが、脅威は国内で猛威を奮っているものです。今季のインフルエンザはかなりひどい。特に子どもが危ないです。 こまめに手洗いして、せきする人が集まる場所は避けることですね。

Q. 武漢の魚市場からCOVID-19が広まったという説は本当ですか?

A. 最初の12月31日に報告された27の症例の感染源が武漢の魚市場ということはわかっていますが、ウイルスの変遷を調べると、SARSとほぼ一緒なんです。SARSはコウモリからジャコウネコにうつって、 2002年に中国国内の祝宴で供されて人に広がりました。基本的にコウモリに好んで住み着くウイルスです。

Q. つまり、あの市場が発生源ではないと?

A. 市場以外の場所で、何らかのかたちでコウモリから間の動物が感染し、そこからヒトに広まったことはほぼ確実です。疫学の見地からは、市場は広まる途上にあるものであり、かならずしも発生源とは言えません。かといって市場で売られている動物から全員感染したということでもなく、人混みの中で人から人に感染したと考えられます。

Q. 武漢近郊の細菌兵器研究所が絡んでいるという陰謀説は?

A. 武漢に細菌兵器研究所なんてありません。流行病の拡大予防を研究する生物学研究所があるだけです。そこから意図的またはミスで漏れたと疑う向きもあります。その可能性は限りなく低いですが、現在その線でも調査中ですので、もうじき答えがわかるはずです。

Q. 日本の夏季オリンピックも危ないと思いますか?

A. いや、それはないと思いますけど、わかりません。要は世界のパンデミックになるかどうかですが…なんとも言えません。

Q. みなマスクつけてますが、あれは効くんですか?

A. マスクは感染した人が周りの人にうつさないようにする面では効果的ですが、薬局で市販のマスクを見ると、結構周りから空気が入るので予防にはあまり効き目はありません。「マスクつけたほうがいいですか?」って聞かれることも多くなっていますけど、米国では今のところマスクつけなきゃならない理由はないです。


以上です。

恐ろしいグラフィックスで感染者数をリアルタイムで眺めていると、あたかもパンデミックみたいで怖いですけど、あの統計についても「検査薬不足で、湖北省が症状だけで症例として報告する方式に13日切り替えた結果、ひと晩で感染者が9倍になって、それをマスコミが煽るタイトルで伝えて不安が広まっている」とNY Timesは報じています。なんか熱と咳が出るだけで風邪とごったになってるようなので、あんまり数字に振り回されないようにしましょうね、はい。

Source: USA Today, YouTube