音楽は単に数学的な組み合わせであり、椅子取りゲームである。
未使用のメロディーはいつか誰かが作曲してしまい、他のミュージシャンたちが自由に作曲する機会が日に日に奪われてしまう。という危機を回避するべく、多才な弁護士が将来の音楽家達が盗用で訴えられないよう、作曲されていない全メロディーをアルゴリズムで作曲し、それらを公開してパブリックドメインにしました。
それらを参照すれば、今後は「俺の曲パクっただろ!」と訴えられることが(もしかすると)激減するようになります。
訴訟が起これば莫大な額がフっ飛ぶ
毎日のように新しい音楽が生まれていますが、作曲家が美しいと感じるメロディーには限りがあるようで、リズムや歌詞が違うだけで実は過去のミュージシャンが書いた曲とソックリだった! と訴訟で法外な金額を請求される現代社会。聴いたこともない曲なのに、似ているからという理由で著作権を請求され、共同作曲者として記載するハメになることもしばしばあるようです。
音楽・法律・プログラミングに精通した救世主現る
そこで音楽の学士号を持ちソフト開発も手掛ける弁護士ダミアン・リールさんが、音楽家でプログラマーの友人ノア・ルービンさんに頼み、ふたりで12拍までの中で考えられる1オクターブの組み合わせをすべて、アルゴリズムに割り出させました。ちなみにアルゴリズムは、1秒間で30万種のメロディーを作る処理能力を誇ります。
リールさんがTEDxに登壇し、その過程を説明しています。
曲の作り方は12音全部がド、次は12音目だけがレ、などひとつずつズレるよう総当りですべての可能性を抽出しました。その結果、作ったメロディーは687億曲を超え、ハードディスクを占める容量は601GB以上になるそうな。
著作権を放棄するクリエイティブコモンズ ゼロ
VICEいわく、ふたりがGitHubで公開したMIDIファイルのメロディーは、著作権を持たない「CC0」で登録した、と説明しています。リールさんが冒頭で話していますが、彼らは決してすべてのメロディーを抑えて、片っ端から訴訟を起こしてボロ儲けしてやろう! という魂胆で始めたわけではないのです。
理屈としては、もしパクリ疑惑で誰かが訴えられても「これはパブリックドメインで、GitHubに公開されてるぞ!」と証明すれば、敗訴することはない筈。ですがこれが効力を持つか否かは、実際に登録されたメロディーで訴訟が起こってみないとわからない…のだそうです。実験的な試みですが、やってみることに価値があると思いますし、音楽の著作権およびメロディーが出尽くしつつある、という問題提起にも一役買っているかと思います。
もっとも、彼らが作ったメロディーは12拍で1オクターブに限られているので、2オクターブ内を飛び跳ねるようなメロディーを作れば、その曲はアナタが著作権を申請できるようになる…かもしれません。
Source: YouTube, creative commons, GitHub, INTERNET ARCHIVE via VICE