大半のビジネスパーソンにとって、メールのやりとりは、日常業務の中でもそれなりの手間・時間を要するものでしょう。

定型的な連絡のみであっても、

「『お世話になっております』は毎回必要なのか」

「『お願いいたします。の繰り返しはかえって失礼ではないか」など、ふと疑問がよぎって、手が止まってしまうこともあるはず。

ましてや、初対面の人への依頼やお得意様への謝罪といったイレギュラーなメールだと、書く内容を確定するのに小一時間かかったりなど、手間暇は馬鹿になりません。

こうしたメールの御作法のA to Zを簡潔にまとめたのが、新書『あなたのメールは、なぜ相手を怒らせるのか? 仕事ができる人の文章術』(光文社新書)です。

この種の書籍は、新社会人向けの入門書が多い中、中堅社員でも目から鱗の内容が盛りだくさん。

仕事上、メールのやりとりが多い方には特におすすめしたい1冊です。

今回は、本書から「アポイント」と「お断り」のメールをうまく書くコツについて紹介しましょう。

遠慮がメールの回数を増やしてしまう

相手と直接会うためのアポイントのメール。

会ったことがない人とか、目上の人宛てだと、依頼が遠慮がちになりやすいのですが、これがいたずらにやりとりの回数を増やす原因に。

本書には【市場調査の協力を仰ぐため、著名な研究者にアポを打診するメール】の1例が掲載されています。

最初のメールでは、終わりのほうで「お時間をいただくことは可能でしょうか」と記しています。

それに対して相手は、

「ご依頼の件、ご協力できると思います。打ち合わせは、研究室まできていただければ対応できます。いつごろがいいですか」と快諾の返信を寄こします。

そこで「できましたら今月中にと思っておりますが、年度末ということでお忙しいようでしたら、来月に入ってからでも結構です。ご都合のいい日をお知らせいただければ幸いです」と、丁寧な問いかけをしました。

そのあとも、訪問日時に関するメールのやりとりが繰り返され、最終的にこちらからの「承知いたしました。3月22日(木)午後2時に研究室にお伺いします。よろしくお願いいたします」というメールで日取りが確定します。

その間のやりとりでは、研究者からの日時指定に対し、先約があって行けないと答える一幕もありました。

メールのやり取りを増やす問題点

一連のやりとりの問題は、メールの回数が増えて、互いに書いたり読んだりする手間が無駄にかかってしまったというのが1点。加えて、次の3点を著者の中川路亜紀さんは指摘します。

  1. 最初のメールで訪問希望の時期について何も書かなかった。
  2. 自分の方から都合のいい日を聞いたのに、先方から提示された日時にNGを出してしまった。
  3. 先方が提示してくれた選択肢に「どちらでもいい」と答えてしまった。

丁寧さを優先したはずが、もしかすると逆の印象を与えてしまったかもしれませんね。

最短アポ取りのフレーズをおさえておく

このようなやりとりを防ぎ、双方が気持ちよいアポの日程を確定するため、中川路さんはおさえておくべきフレーズを提示しています。

その1つがこちらです。

「20日の週でご都合のつく時間がございましたらお伺いしたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

なお、誠に勝手ながら、20日(火)午後、21日(水)午前は予定が入っておりますので、それ以外でお願いできましたら幸いです」

最初の段階で、緩やかなアポの日程候補を出しておくこと。

自分の都合の悪い日時はあらかじめ知らせておくことで、手戻りなくやりとりを進めることができます。

日程変更したいときの表現

ところで、万が一、確定した日時に伺うことができなかった場合は、お詫びした上でリスケジュールをしますが、これにもスマートな表現があります。

「お願いしておりました6月5日の打ち合わせですが、日程の変更をお願いできないかと思っております。たいへん勝手なことで申し訳ありません」

続けて別の日程を記しますが、変更の理由は相手から聞かれないかぎり、書かなくてもよいそうです。

書くのであれば「緊急に対応しなければならない事態が発生し、どうしてもお伺いできなくなってしまいました」というふうに、「相手ファースト」の姿勢をにじませつつ記します。

日程が空く場合はリマインダーメールを

また、アポの確定から実際の訪問日まで日数が空いて、多忙な相手がちゃんと覚えているか不安な場合、「明日2時にお伺いします。お忙しいところ申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します」などと、直前にリマインダーのメールを送ります。

難しい「お断り」メールはこう書く

仕事の現場では、相手の意向に沿えないことをメールで伝えねばならない場面もしばしばあります。

中川路さんは、相手を怒らせたり、気まずさを避けようとするあまり、言い訳やなぐさめの言葉で乗り切ろうとすると、かえって相手に不快感を与えるリスクもあると言います。

本書では、それを防ぐメールの書き方の例もケース別に紹介されています。

例えば、交流会やセミナーなどのお誘いの断り方。次のように、さらっと書くのが基本です。

・あいにくその日は先約があり、ご一緒できません。

・残念ながら、その日はどうしても都合がつかず、お供できません。

理由を詳しく述べる必要はないのですが、そっけない返事に見えて気を悪くするのではないかと思ったら、フォローも入れて。

せっかくお誘いいただきましたのに、とても残念です。また機会がございましたら、ご一緒させていただきたいと思います。

もし、その種のお誘いへの参加に今後も乗り気ではない場合、その旨を意思表示したほうがベターです。例えば、

プライベートも何かと忙しくしておりますので、このようなお誘いは遠慮したく存じます。申し訳ありません。

というふうに。

提案や協力要請の断り方

提案や協力要請については、自分個人の判断でなく部署・会社の決定であることが多いでしょう。

その場合は、次のような内容でかまわないそうです。

・社内で検討した結果、残念ながら、本企画の実現は難しいとの結論になりました。

・お申し越しの件、諸事情により、本年度はご協力できない見通しとなりました。

差出人であるあなたが、今回は断るけれど個人的に本意ではない意味合いを含ませたければ、以下の表現が使えます。

・今回はお役に立てず、誠に申し訳ありません。また機会がありましたら協力させていただきます。

・弊社の事情でご協力がかなわず、たいへん残念に思っております。何かほかの形でお役に立てる機会がありましたら、よろしくお願い致します。

また、中川路さんは、どのようなことであれ、(相手にとって)悪い知らせは早いほうがいいと述べています。

気持ちとしては、ずるずる引き延ばしたくなるものですが、「返事を待たされた挙句に断られたというのは、最悪の印象」を残すから。

ただ、社内での検討に日数を要するなど、返信の遅れが不可抗力になることもあるでしょう。

そんなときは、このようにお詫びの言葉を添えます。

もっと早くお返事すべきところ、社内の検討に時間がかかってしまい、誠に申し訳ありませんでした。

こうした表現で、相手の心証を害する可能性が最小限におさえられます。


本書にはこのほか、依頼のメール、逆上している相手へのメールなど、さまざまなケースに応じてふさわしい内容を記すためのヒントが詰まっています。

特に「もしかしてメールの書き方で自分は損している?」と思っている方は、学ぶところが大。一読をおすすめします。

Source: 『あなたのメールは、なぜ相手を怒らせるのか? 仕事ができる人の文章術』光文社新書

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