Bagel Labs「Pie」レビュー:身体測定用スケールをスマート化するとこうなるのか

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  • author Victoria Song - Gizmodo US
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  • Rina Fukazu
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Bagel Labs「Pie」レビュー:身体測定用スケールをスマート化するとこうなるのか
Photo: Victoria Song (Gizmodo)

これは問題作かもー。

スマートガジェットが増えゆく今、「まさにイノベーション!」と呼べるようなよいプロダクトもあれば、「やっぱりいらなかったかも…」なんてものも正直ありますよね。後者の場合、多くはハードウェアが悪いというより使用感とかエクスペリエンスのほうに問題があったりして。

最後にスケールを使ったのはイケア」という人たちからすると、身体測定用巻き尺のスマート化…と聞いても、どこかパッとしない印象を受けるかもしれません。普段からオーダーメイドの洋服を作る機会があれば魅力的かもしれませんが、そうでなければ非常にニッチなところを攻めてきたな、と。

でも、巻き尺ってじつは結構便利なんです。たとえば体重計に乗って増えた数字を見つめながら、果たしてこれが脂肪なのか筋肉なのか水分摂りすぎたのか…と悩んだことのある人は、具体的にどの部分が太く/細くなったのかわかるようになります。

このロジックで行けば、記録から測定、さらに適性体格の計算までデジタルでできるなんてグッドアイデアなんじゃないかと思うかもしれません。実際はどうなんでしょうか? 米GizmodoライターのVictoria SongがBagel Labsの「Pie」を使ってみた正直な感想をレビューしています。


Bagel Labsは以前、Kickstarterを通じて「Bagel」というデジタル巻き尺をリリースしました。家具のサイズなどを測るのに使えるジェネラルな巻き尺です。

一方、新たに登場した「Pie」は身体測定用に特化しています。「Bagel」にはボイスメモやレーザーポインターなどの機能があったのに対して、「Pie」はBluetooth対応で小さなスクリーンの窓付き。比較するとかなりシンプルになったのがわかります。

Pie

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Photo: Victoria Song (Gizmodo)

これは何?:スマート身体測定用の巻き尺。

いくら?:80ドル(約8,900円)。

好きなところ:手動で結果を記録するよりもラク。単位の変換が簡単なところ。

好きじゃないところ:コスパ感、アプリ。

デジタル vs アナログで比較

スマートな「Pie」をレビューするにあたって、非スマートな巻き尺「MyoTape」と比べてみることにしました。

まず、測定値に関してはどちらもほぼ同じ結果が出ました。アナログだと細かい目盛りを見て、覚えて、記録するという流れですが、そういう意味でデジタルな「Pie」のほうが早く、確実だと思います。

個人的にいいなと思ったのは、チェックマークボタンを押したままにすると、ミリメートル、センチメートル、インチを切り替えることができること。

ただ、片手で測定するには「MyoTape」のほうがはるかに使いやすいと感じました。「Pie」は、簡単に測定できるようにとフックが付いていますが、たまにサッと外れちゃうのが難点。


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たまに外れるフック。
Photo: Victoria Song (Gizmodo)

いくつか気になったこと

初めて「Pie」を使って測定しようとしたときは、Bluetoothの接続問題に引っかかりました。しばらくはペアリングを解除して、接続して、解除して、接続して…の繰り返し。それ以後は特に問題なかったんですけどね。

アプリのインターフェイスは、正直イマイチ。何がって、測定値を記録するには、特定の身体部位(左腿など)を画面上でタップするんですけど、タップするのを忘れて測定しちゃうとそのまま上書きされるんです。もちろん修正することはできますが、このプロセスがパパッとできるものではなくやや面倒でした。本来、手作業で記録するよりスムーズであるべきなのにね。

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アプリはシンプル。でも、間違って入力したところを直すのがややこしい。
Photo: Victoria Song (Gizmodo)

肥満扱いされた

でも、もっと気になったことがあります。アプリによると、体脂肪率から判断して私は太りすぎとのこと。数年前、多嚢胞性卵巣症候群が原因で増量してからというものの、病院に通いながら食事や運動で健康的な体重を取り戻したんです。というか、今が人生で一番健康的な自分だと思っています。

かかりつけ医によれば、私は肥満じゃない。でも、アプリによれば「私の肥満」を改善する唯一のソリューションはウエストサイズを細くするという目標を設定すること。またアプリによれば、ウエストーヒップの比率は正常な範囲内にあるとのこと…。これにはダブルで混乱しました。

私はこのアプリよりも自分の医者のほうを確実に信頼していますが、自分の体重やサイズを気にしすぎたり、そのせいで摂食障害の気があったり...という自覚がある人は、使わないほうが安全な気もします。アプリでは日ごとの測定値の推移をグラフで確認できますが、体の組成を変えるには数週間かかることを考えれば、ほぼ意味がないような…。

体脂肪率から太りすぎと判断されたわけですが、アプリによれば私の体脂肪率は34.9%。体脂肪率を測れる体重計によると、私の体脂肪は長らく27%をキープしています。アプリがどのように体脂肪率を計算したのかは謎のまま…。たとえば、うちにあるスマートスケールは足から生体インピーダンスで測定するため全身の情報を得るのが不得意だとわかっています。少なくともスマートスケールでは筋肉、骨量、水分が考慮されていますが、「Pie」が体脂肪計算にどのような基準や式を使用しているのかは不明です。

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手動のボディ巻尺MyoTapeは5ドル。Pie by Bagel Labsは80ドル。16倍ってどうなの?
Photo: Victoria (Gizmodo)

減量にフォーカスしすぎている傾向あり

単純に、デジタルで測定できるスマートスケールの機能が必要という人やアプリのインサイトはまったく気にならないという人にとって、上記は大した問題じゃないかもしれません。

ただ、すべての人がダイエットしているわけではないのに、減量にフォーカスしすぎている傾向があるのは偏りすぎかなとも思います。増量して筋肉をつけたい人だっていますよね。特定の身体部分のサイズを大きくする目標を設定することもできますが、筋肉量を増やしたい人向けのオプションセットは用意されていないようです。

本体はよくできている。けれど高い

「Pie」のアプリには多少注意する必要がありますが、巻き尺本体に関してはよくできていると思います。身体測定以外にも使いたい場合、最大59インチ(149.86センチ)までなら測れます。

これらすべてを吟味すると、80ドルという価格設定はやはり高いと感じてしまいます。基本的に同じことがアナログでできる「MyoTape」は、アマゾンで4〜6ドル。普段なら有料アプリだって必要に応じて使いますが、80ドルの価値があるアプリはなかなかないと思います。1ヶ月に1回測定するにしても、実際に得られるものを考えるとやはりオーバープライス感が否めません。

スマート巻き尺というアイデア自体は、非常に優れたものです。でも、同じ金額を費やすならおそらくジムや安価なフィットネストラッカーのほうが結果的に良い投資になるかもしれません。

まとめ

・スマートだからって身体測定用の巻き尺で80ドルは高すぎる。

・巻き尺本体はよくできていて、ちゃんと機能してくれる。

・アプリは一見シンプルだけど、改善の余地が大いにアリ。

・自分は醜形恐怖症っぽいところがある...って人は使わない方がよし。

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