私たちは幼い頃から、他者を助けることを教えられます。小学校に入る前から、人と分かちあうことと同じく、人を助けるレッスンが始まります。
しかし一方で、他者との間に健全な境界線を引くことの必要性や、相手を助けることが「イネーブリング」になってしまう可能性については、ほとんど教えられることがありません。
イネーブリングとは?
「イネーブリング」とは何でしょうか?
臨床心理学者のJade Wu博士は、「イネーブリングにはさまざまな形がありますが、基本的にはすべて、相手の悪い行動を後押ししてしまう行為、相手を現状に留まらせるような行為であると言えます」と説明しています。
もちろん、イネーブラー(イネーブリングをする人)も、意図的にそうするわけではありません。誰だって大切な人に問題行動を続けさせたり、正当化する手助けをしたいわけではありません。
今回は、自分が誰かが悪いことをしているのに黙認したり、手助けしたりするイネーブリングをしていないかをチェックし、健全な境界線を引く方法を紹介します。
イネーブラーになっていないかをチェックする
ほとんどの場合、人がイネーブラーになってしまうのは、相手を心から愛し、気遣い、相手にとって最善のことをしたいと願うからです。
しかし、善意からであっても、愛する人の悪い行動や習慣を許し、後押しすることは、その人を助けることにはなりません。
Wu博士は、イネーブラーの特徴的な行動を4つ挙げています。
1. 尻拭いをする
イネーブラーは、「当人が自らの行動によって引き起こした悪い結果から、当人を守ろうとする」とWu博士はPsychology Todayで語っています。
たとえば、ギャンブル依存症の人にお金を貸し続けたり、薬物問題がばれないように当人の家族に嘘をついたりすることなどが挙げられます。
こうした「救済」は、一度ならまだしも、それが日常的に行われれば、因果関係のパターンを学習する機会を大切な人から奪うことになる、とWu博士は指摘しています。
2. 当人が目標を達成するのを阻害するような「支援」(たとえばお金)を与える
相手を常に助けてばかりいれば、当人が問題を自分で解決することを学べなくなる、とWu博士は指摘しています。
3. 境界線をうやむやにする
せっかく引いた相手との境界線を、自らうやむやにしてしまうのも、イネイブラーによくある行動です。
境界線を守るのは、あなた自身のためだけではありません。
あなたが助けたい相手にとっても、あなたが約束を守る人であることを信じられるほうが、最初は抵抗したとしても、最終的には安心感を得られるのです。
「また、境界線をうやむやにしないことで、一貫性のある行動をとれる人としての良いロールモデルになることもできます」とWu博士は説明しています。
4. 相手を侮辱したり、甘やかしたりする
Wu博士は、侮辱と甘やかしを行ったり来たりするのは危険だと言っています。
「侮辱するのも、甘やかすのも、相手の行動を変える助けにはなりません。また、その2つの間を行ったり来たりするのはさらに良くありません」と博士は語っています。
イネーブラーになるのをやめる方法
上記の行動に身に覚えがある人は、イネーブラーになっている可能性があります。ありがたいことに、Wu博士が、イネーブラー的な行動をどうやって修正すればいいかを教えてくれています。
1. あるがままを認め尊重する
相手を批判したり、侮辱したり、罪悪感をもたせたりせず、ありのままのその人を受け入れ、一人の人間としての本質的価値を認めてあげましょう。Wu博士は、次のように言っています。
相手に、自分の考えや感情について話せる十分なスペースを与えてください。あなた自身の意見やアドバイスを差し挟んではいけません。
相手が話し終えたあと、当人の行動について異を唱えることはかまいませんが、当人の感情を否定してはいけません。
何をどう感じるかは人それぞれです。相手の立場に立って感情を尊重してあげてください。
2. 自分の行動に責任を持たせる
相手に罪悪感をもたせたり、恥をかかせるべきではありませんが、悪い行動を続けさせるべきでもありません。
Wu博士によると、ここでポイントとなるのが、相手に主導権を与えることです。当人の目標をあなたが決めてしまってはいけません。
相手に、何が必要かを尋ねて、耳を傾けてください。
そして、当人が、自分が決めた目標を達成するためにあなたの助けが欲しいと言ってきたら、そうしてあげましょう。
3. ともに勝利を祝う
正の強化が助けになります。
相手が目標の一つを達成したら、あなたがその人を誇りに思うこと、そして、行動を変えることがどれほど難しいかを理解していることを伝えてあげてください。
4. 後方支援を与える(合理的な範囲で)
Wu博士の言うように、相手の悪い行動や習慣を支え続けるのがイネーブラーの特徴です。
一方で、人が目標に向かって真剣に取り組み始めるとき、実践的な援助を必要とするのも、また事実です。
相手が目標に向かって歩み始めたら、悪い習慣に逆戻りしないよう手助けすることは悪いことではありません。
Wu博士は、支援とイネーブリングの違いを見分けるには、以下の質問をすえると良いとアドバイスしています。
・当人は、不健全な行動を変えるべく意欲的に取り組んでいますか?
・あなたが貸すお金や、与える支援の目的が明確に定義されていますか?
・当人があなたの助けを得て、差し迫った危機を乗り越えたあと、何をするか合理的な計画を持っていますか?(または、計画をつくることに意欲的ですか?)
Wu博士は、「結局のところ、思いやりを持ちながらいかに境界線を守るかの問題です」と言っています。
あわせて読みたい
Image: Shutterstock
Source: Psychology Today
Elizabeth Yuko - Lifehacker US[原文]