「真剣に話を聞いてもらえない」
「会議で発言すると、場が凍りついてしまう」
「重要な仕事にかぎって、任せてもらえない」
たとえばこのような悩みは、誰しも少なからず持っているものではないでしょうか?
しかし、そんなことも、「仕事に関するちょっとしたコツ」を知ってさえいれば解決できると主張しているのは、『「あなたにお願いしたい」と言われる仕事のコツ88』(佐々木順子 著、ぱる出版)の著者。
日本IBMやMicrosoftの役員を歴任した実績を持つ女性リーダーです。
真剣に話を聞いてもらうには、こちらも真剣な態度で伝えるのがコツ。
発言するときは、「クッション言葉」を使うのがコツ。
重要な仕事を任せてもらうには、自信があるようにふるまうのがコツ。
「こんなちょっとしたことで何か変わるの?」と思うかもしれません。これが、思いっきり変わるんです。
なぜなら、ビジネスで最も大切なのは、信頼感。見た目も発言も、プロフェッショナルな人こそが、認められます。
そんな人こそが、「あなたに仕事をお願いしたい」と言われる人です。(3〜5ページより)
著者によれば、そのために必要なのは、ちょっとした仕事のコツを積み重ねていくことだけ。そこで本書では、そんな仕事のコツを88項目にわたって紹介しているのです。
「意識の持ち方」「ふるまい方」「見せ方・書き方」などさまざまなカテゴリーに分けられた、すぐに応用しやすい内容。
きょうは第3章「伝え方聞き方のコツ」のなかから、「聞き方」と「伝え方」に関するポイントをひとつずつピックアップしてみたいと思います。
コミュニケーションは資質ではなくスキル
メッセージを伝えたい相手に対し、いかに効果的かつ確実に伝えるか。いうまでもなく、それがコミュニケーションのスキル。
ただし、「伝える」と「伝わる」は別ものでもあります。「伝えたかどうか」ではなく、「伝わったかどうか」だけが大きな問題になるということ。
伝わったかどうかは、「伝えるためにどれだけ努力をしたか」にかかっているものだと著者は主張しています。したがって、伝わらなかったなら、それは自分の努力不足だということになるわけです。
だとすれば気になるのは、「伝わるコミュニケーション」を実現するためにはどうすればいいのかということであるはず。その点について、著者は次のように考えているそうです。
徹底的にロジカルに説得してくる人には、ロジカルに対応する。情熱的に訴える人にはこちらも感情をこめて説得する。
こんなふうに、相手のキャラクターを見極めて、コミュニケーションの手段や方法を検討する練習が必要です。(91ページより)
とはいえそこには、忘れてはいけない重要なことも。
練習を重ねてスキルが上がったとしても、決して独りよがりにならず、「伝わったかどうか」をその都度相手に確認するべきだというのです。
なぜなら、話すことだけに一生懸命になってしまうと、相手の反応に気がつかないこともあるから。
途中で、「ここまで大丈夫ですか」とか、「いままでのところでわからないところはありませんか」などと、適切なタイミングで確認をはさんだり、話しながら相手のボディランゲージを読み取ったりすることも大切です。(91ページより)
いわば、きめ細かく相手の反応を見ながら伝えるのも、コミュニケーション技術のひとつだということ。
よりよいコミュニケーションを実現するために、練習を重ねていくことが大切だというわけです。(90ページより)
不満をぶつけてくる相手には「聞き切る」
相手がこちらに不満を持っていて、それをぶつけてくるようなことがあります。そんなときには、まず相手の思っていることをすべて吐き出してもらうことが必要。それが、「聞き切る」という技術だそうです。
不満をぶつけたくなるということは、その人のなかのコップが不満でいっぱいになっているということ。だとすれば、一度それを空っぽにしない限り、それ以上はなにも入っていかなくて当然。
聞き切って、空っぽにする前になにかを伝えたとしても、相手はまったく聞く耳を持たないわけです。そのため、相手の話を途中でさえぎったり、コメントしようとしたりする態度は厳禁なのです。
私が以前、コールセンターのクレーム担当をしていたときも、この「聞き取る」技術をよく使っていました。
お客様からクレームを受けたとき、まずは、「それはお困りでしたね。申し訳ありません」とお詫びをしてから、相手の話を徹底的に聞き続けます。
その間は、ひたすら相槌を打ち、共感とともに相手の言葉を繰り返すなどの対応をしながら、じっと聞く態度に徹します。
どんなお客様も、そんなふうに20分も話すとすっきりして、怒りの感情のほとんどが収まってしまうので、こちらも落ち着いて、その後の対応についてご相談することができます。(93ページより)
そういう意味では、「聞き切る」ことは次の会話へ移行するためのステップであると言えそうです。
逆にいえば、本来であれば重要なポイントであるそこをないがしろにしてしまうと、こちらの言い分を伝えようとしても伝わることがないわけです。
他者の話を聞くときは、すぐに解決しようと思わず、最後まで聞くことが大切。会話が始まるのは、そのあとだということです。(92ページより)
著者のキャリア、あるいは表紙のイラストからもわかるように、基本的に本書は女性のために書かれています。とはいえ、その内容は男女を問わず生かせるものばかり。
そういう意味では、すべてのビジネスパーソンにとって有効な内容であると言えるでしょう。
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Source: ぱる出版
Photo: 印南敦史