政府が「一斉休校望ましい」、諮問委は却下 4月会合で
4月16日に開かれた新型コロナウイルス感染症に関する政府の基本的対処方針等諮問委員会で、学校の全国一斉休校について専門家の「お墨付き」を得ようとした政府提案が、委員の反対を受けて撤回されていた。内閣官房が公開した議事録で明らかになった。
この日の諮問委の主な議題は、新型コロナ対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言の全国拡大。議事録によると、報道機関が退室した後、文部科学省の提案として、諮問委事務局が説明。「5月6日までの間、学校を一斉休業することが望ましいという専門家会議の見解を踏まえ」という文言を対処方針に加え、同省のガイドラインなどを活用して、今後取り組む考えを示した。
だが、専門家会議が一斉休校について意見をまとめたことはなく、厚生労働省の宮崎雅則健康局長(当時)が「いつの専門家会議の見解なのか」と確認を要求。事務局は「専門家会議」を「専門家」に変える修正案を示したが、メンバーの岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長が、いずれの場合でも事実なら明確にすべきだと指摘。押谷仁・東北大大学院教授は「専門家が判断をするのではなく、判断するのは政府であるはず」と主張し、反対に「どうやったら安全に学校を再開できるのか」を議論すべきだと展開した。
西村康稔経済再生相は、学校では患者集団(クラスター)が起きていないとしつつも、人と人との接触の8割削減を求める点などを踏まえ、「休みにしたほうがいいのでは」と萩生田光一文部科学相と話したことを披露した。地域で対応が異なれば勉学の進度に差が出ることも挙げ、「一斉に休校にするのも一つの考えだ」と発言。「専門家の判断を踏まえ」との文言への賛否とは別に、「学校を休ませた方がいいのか、休ませない方がいいのか」と見解を求めた。
メンバーからは、「不公平が生じるから一斉休業をするというのは、ウイルスの流行のコントロールという目的と異なる」(河岡義裕・東大医科学研究所感染症国際研究センター長)、「感染拡大している状況であっても子どもが教育を受ける権利をしっかり保障すべき」(武藤香織・東大医科学研究所教授)などの意見も出た。
諮問委の尾身茂会長は、重点的な取り組みが必要な「特定警戒」の13都道府県を除く34県について「諮問委員会として、一斉に(休校を)やるのは無理がある」と指摘。「専門家がここを認めたとなると、あなたたちは何をやっているのかということになる」「感染症の原則に基づいてやった方が理解は得られやすい」などと述べ、最終的に政府側の提案を退けた。