『ビジネスエリート必読の名著15』(大賀康史 著、グロービス 監修、自由国民社)の著者は、名著を読むことによって、3つの重要な効果が得られると考えているのだそうです。ひとつひとつを確認してみましょう。
「自分を知る」
まず1つ目は、「自分を知る」こと。
変化の激しい世界を生き抜くためには、自分自身をしっかりと理解することが重要。そこで大切なのは、それぞれの名著の教えから学びを得ようという姿勢。そうすれば、自分自身への理解を深めることができるというのです。
「世の中を知る」
2つ目は、「世の中を知る」こと。たとえば新しい企画を考える際には、世の中の仕組みを押さえておくことが必要不可欠。そして世の中を理解するためには、著者が研究してきたことがまとめられている名著に触れることがもっとも効率的だということです。
「行動を変える」
そして3つ目は、「行動を変える」こと。自分を知り、世の中を知ることができれば、これからの自分の行動にも自信が持てるようになるはず。
つまり私たちは名著を読むことにより、不安に打ち克ちながら歩みを進めることができるというわけです。
さらにいえば望ましいのは、本のなかから“いまの自分”に合うものと合わないものを取捨選択し、前者だけを取り入れていくというスタンスで読書に臨むこと。
本書も、そのような目的を果たすために構成されているのだそうです。
名著それぞれの全体像を把握したうえで、その本の印象的なメッセージを抽出し、さらにその名著からの学びをこれからの時代を生きる人に価値があるように応用していきます。
本書の構成では、取り上げている名著の理解を深めた上で、生きていく中で活かしやすいように解釈を足していくことを目指しています。(「はじめに」より)
著者は、本の要約サイト「flier(フライヤー)を運営する株式会社フライヤーCEO。
ここで取り上げている本も、フライヤーとグロービス経営大学院が共同で主催している「ビジネス書グランプリ」の受賞作品です。
きょうは第2章「ビジネス実務 仕事に活かせる本質に刺さった本に出会えば、毎日の生産性は劇的に変えられる。」のなかから、『1分で話せ』(伊藤羊一 著、SBクリエイティブ)に焦点を当ててみたいと思います。
この本の全体像
人は、こちらの話をすべて聞いてくれていると思っている人は少なくないはず。
多くの場合は心のどこかで、「考えていることをすべて伝えれば、きっとわかってくれるだろう」と考えているわけです。ところが著者は、「人は、相手の話の80%は聞いていない」と考えているのだといいます。
聞き手は、「早く終わらないかな」「眠いな」「退屈だな」というような雑念と闘いながら、話をただの音として消費しているにすぎないということ。
だからこそ、相手に自分の真意を伝え、動いてもらうための「プレゼン力」が必要となります。
長々と話すよりも、ポイントを明確にして、「1分」で伝えた方が、目的を達することができるのです。(59ページより)
「伝える」ための第一歩は、聞き手をしっかりとイメージすること。
そのため聞き手の立場、興味、理解度、感情を想像してから準備を始める必要があるのです。そして、次にすべきはプレゼンのゴールを明らかにすること。
聞き手が理解してくれればいいのか、それとも聞き手に賛成してもらいたいのか、あるいは動いてもらう必要があるのかなど、さまざまなことを定め、そのための最適な話し方を組み立てるべきだというわけです。
ビジネスのコミュニケーションは、なんらかの行動につながってこそ意味を持つもの。そして、ほとんどのケースにおいては「相手を動かすこと」をゴールにすべきだといいます。
したがって、相手が動くためにできることをすべてやり切るつもりで、プレゼン前の準備やプレゼン後のフォローを含めた全体のコミュニケーションを組み立てることが重要だという考え方です。(59ページより)
しびれる一文と解説
本書の「しびれる一文」として、著者は以下を引用しています。
「正しいことだけを言っても人には伝わらないんです。一言ひとことに思いを込めましょう。
そして思いを込めたあとは、『今あなたの話を聞いている、目の前の相手』に『声を届ける』ということを意識しましょう。」(P195) (66ページより)
著者によれば、ここがコミュニケーションにおける最後の一押し。
「正しいことを伝えているつもりでも、なぜか相手が動いてくれない」という場合、最大の原因は「相手の事情に寄り添っていなかったこと」にあるようなのです。
著者自身も、そのことに関連して何度も痛い目を見たことがあるのだといいます。そこで以後は提案する際の主語を「あなたたち」「御社」から「われわれ」「私たち」に変えることにしたのだといいます。
自分がクライアント先の社員だと思って、改革案を提案するように態度を変えたというわけです。その結果、不思議と提案が通って施策が動くようになったのだそう。
しかも、自分が話す改革案自体も変わったというのですから驚きです。
つまりクライアントの歴史的な経緯も配慮するようになり、「施策を動かすためのキーマンは誰で、どう説得するべきか」というところにも意識が向くようになったということ。
言葉に思いを乗せることには威力があります。思いを乗せるためにはその瞬間の努力だけではなく、準備段階の行動も変える必要があります。
その努力を経て、自分の思いを言葉に乗せることができれば、話す内容にも強さや迫力が出て、プレゼンがうまく行き雨ようになるのでしょう。(68〜69ページより)
毎日行うにもかかわらず、コミュニケーションのトレーニングは怠ってしまいがちなもの。
そして注目すべきは、「ロジカルシンキングだけでは仕事にならない」という意見が誤解であるということ。
ほとんどの人にとって、ロジカルシンキングや論理的な伝え方は強力な武器になると著者は考えているのです。
したがって、論理的に伝えられるようになってから、初めてその型を崩すことに挑戦したらいいということ。
そこに到達するためにも、まずは『1分で話せ』で語られていることをそっくり真似てみるべきだということです。
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たとえばこのように、「自己啓発」「ビジネス実務」「政治経済」「イノベーション」「マネジメント」「リベラルアーツ」と6つのカテゴリーに分けられた名著の内容を効率的に理解することが可能。
そのため、時間に追われるビジネスパーソンに最適です。より多くの知見を得るために、活用してみてはいかがでしょうか?
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Source: 自由国民社
Photo: 印南敦史