ニュースの衝撃から数カ月。
昨年9月に、Nvidiaが400億ドル(約4兆円)でARMを買収します!というニュースを聞いた時は、衝撃が走りましたね。が、ここまでの買収規模となると、一筋縄ではいきません。この買収が市場の非競争化に繋がる可能性があるとして、イギリスの公正取引委員会(CMA)が調査することが明らかになりました。
市場競争にどれほど影響があるか
そもそも大手テック企業には、昨今、風向きが厳しいですからね。NvidiaとARMとくれば目をつけられて当然。ARMのCPUアーキテクチャといえば、消費者の多くが毎日使うたくさんのガジェットに採用されており、一方のNvidiaといえばGPUの王様。厳密には、ARMはチップを使ってはいないものの、AppleしかりIntelしかり、Samsung、Qualcomm、Huaweiと多くの企業がライセンス使用しているので、むしろ公正取引委員会の横やりなしでARMを買収できる会社なんてごく一部しかないわけですけれど。
CMAは、Nvidia/ARMの買収について、英国内での市場競争にどれほど影響があるのかをまず調査する考え。CMAが特に目をつけているのは、買収前にNvidiaのライバル企業に対して、ARMが知的財産サービスにおいて値上げや、撤退、品質低下を行なっていなかったかどうか。Nvidiaも手を打っており、買収前には、「ARMの本社はイギリスに残すこと、オープンライセンスのモデルや世界中の顧客への中立性は約束する」と英当局に申し出てはいたのですが、それでは不十分だったようですね。
CMAのAndrea Coselli氏は、プレスリリースにてこうコメント。「チップテクノロジ業界は、何十億という規模があり、私たちが日々使うたくさんのプロダクトに大きな影響があります」「今後、世界の関連機関と密接に連携をとり、買収の影響を考慮するとともに、消費者が手にするプロダクトが高額、低品質なものにならないよう確認する必要があります」。
ARM買収にあたり、Appleも候補に挙がったけど
ARMが2016年にソフトバンクグループに買収された時は、ソフトバンクが通信業者だったこともあり、問題視はされず。今回、ARM買収にあたり、Appleも候補に挙がったという報道がありましたが、ライバル他社にライセンス提供しているという点でNO(そもそもAppleは興味なかったらしい)。Nvidiaはメイン事業がGPUだけに、ARMと関連する多くの企業への影響は比較的少ないという見方もできますが、まぁ当局は甘くなかったと。
昨年10月には、The Guardianの取材にて、 ARM共同創設者のHermann Hauser氏が買収を批判。いわく、Nvidiaの買収によってARMの中立性は失われ、アメリカによる巨大モノポリーが増えるだけだから、政府はこれを阻止すべきだと。政府以前に、ARMの周りにも反対していた人はいたわけですね。
9月の買収発表時には、買収完了時までに18カ月を要すると言っていたNvidia。イギリス以外にも、中国、EU、アメリカ当局からの承認を得る必要があり、なかなか大変な道のりとなりそうです…。
Source: GOV.UK