90年代初頭あたりに、するっとタイムスリップ。
PS5やらXbox Series Xやら、メインストリームの次世代ゲーム機が出そろってきましたが、レトロゲームエミュレーターだって着々と進化しています。中華ゲーム機PocketGoシリーズの最新世代・PocketGo S30を米GizmodoのAndrew Liszewski記者がレビューしてます。
PocketGoは中華ゲーム機としては初めて、安定したレトロゲーム体験を実現した端末のひとつでした。でもNew PocketGo発売から1年ほど経って古さが目立ってきた今、新たにPocketGo S30が発売されました。それでもまだパフォーマンス的には1年遅れ感がありますが、デザインや価格、使いやすさといった意味で、レトロゲームの頼れる選択肢となりそうです。
ちなみに米Gizmodoでは、レビューにあたってRetromimiからサンプル機の提供を受けています。
PocketGo S30

これは何?:New Pocket Goの後継となる待望のアップデート。デザインとインターフェースが大きく改善。
価格:60ドル(約6,300円)
好きなところ:古めのハードウェアにちょうどよくプリセットされたソフトウェア、他のエミュレーターに比べて使えるまでのハードルが低い。
好きじゃないところ:初代PlayStation時代までのレトロゲームしか遊べない、アナログジョイスティックの配置が使いにくい。
スーファミのコントローラー風デザイン
中国発のハンドヘルドエミュレーターは、過去1年で急増してきました。Anbernicなどは数カ月単位の頻繁なアップグレードで完成度を高めてきましたが、PocketGo S30は去年のNew Pocket Goから一気にリデザインし、往年のスーパーファミコンのコントローラーを思わせるデザインを打ち出しました。また全然関係ないって言われたんですが、名前的にもデザイン的にも8BitDo SN30 Proインスパイア風味でもあります。
プロセッサはクアッドコアの1.2GHz、RAMは512MBで、スペック的には1年前くらいな感じです。それでも全体で見ると、PocketGo S30はNew Pocket Goに比べると大きく進化しています。


PocketGo S30のカーブは、手になじむデザイン。スクリーンサイズはNew Pocket Goと同じ3.5インチ(解像度は480 x 320に向上)ですが、なんでか若干大きく見えます。
ジョイスティックが大進化



十字キーとアクションボタンも任天堂純正かと思うくらいナイスにアップグレードしましたが、最大の進化はアナログジョイスティックです。New Pocket Goのときは、スペックに「アナログジョイスティック搭載」と書くために付いてるだけみたいな代物で、ものすごく動かしにくいし、グリップはほとんどなく、小さすぎて、まともなゲームプレイが不可能でした。一方PocketGo S30のアナログジョイスティックは上質なレトロゲーム機と同じようなデザインになり、ニンテンドースイッチのジョイコンみたいに反応が良く、しっかりしています。唯一不満なのは配置がちょっと低く、ジョイスティックとショルダーボタンを両方多用するゲームでは指が疲れることです。

ショルダーボタンといえば、PocketGo S30のそれは良い具合に大きくて、この手のエミュレーターとしては一番大きいくらいです。ただし大きいほうのR2・L2ボタンに関してはまっすぐ押し込むんじゃなくて、角を斜めに押して動かす感じで、ちょっと違います。でも悪い意味で違うんじゃなく、むしろこのほうが大きく動かせるので良いと思ってます。
厚いけどポケットには入る

ショルダーボタンが大きい分、持ち運びやすさは犠牲になってます。PocketGo S30は、この種のゲーム機では見たことないような独特の角度の付いたデザインで、そういえばだいぶ昔のTiger Electronicsの液晶ゲーム機Tiger Electronicsの液晶ゲーム機がこんな感じだったなー…ってくらいです。一番薄い部分でもNew Pocket Goより厚く、厚い部分はAnbernicのゲーム機より厚いです。それでもポケットにはなんとか押し込めますが、スマホみたいにスルッとはいきません。でも、厚すぎて全部台無しってほどじゃないです。


PocketGo S30はゲームプレイ以外のボタンもすっきり配置していて、電源ボタン・音量ボタンはUSB-Cポートとともに上側面に、ヘッドホンジャックとROMファイル読み込み用のmicroSDカードスロットは下側面にあります。

3.5インチスクリーンはきれいで、New Pocket Goと比べると間違いなくステップアップしてますが、今あるエミュレーターの中で最高というにはほど遠いです。2020年だったらもっと高評価だったかもしれませんが、Aubernic Retro Game 350Pと違ってディスプレイにスクリーンがラミネートされてません。つまり微妙なすき間があるので視野角が狭まり、シャープさも落ちます。でも色はきれいだし、他のもっときれいなディスプレイと並べない限り、画質の違いもわかりません。
とにかく使いやすいインターフェース

PocketGo S30の最大の特長は、使いやすさです。立ち上げるとすぐに、フレンドリーでとっつきやすいユーザーインターフェースが表示され(知的財産権的な問題はありますが)、使いたいエミュレーターを選択できます。
他の中華ゲーム機に比べると、PocketGo S30のインターフェースはだいぶ敷居が低いです。それでもROMファイルをmicroSDカードにコピーしたり、コンソールごとにフォルダを分けたりといったハードルはあるので、Evercadeみたいなカートリッジ式ゲーム機ほどわかりやすくはないです。僕が試したときは、サブフォルダを追加しても完全にスルーされてイラっとなりました。でもテクニカルなハードルは、それくらいです。あとはROMファイルを使うのは法的にグレーな部分があるのと、ROMファイルをどう入手するかってところは、人によっては敬遠したいかもしれません。
PocketGo S30はシンプルに使えるとはいえ、シンプルすぎでもありません。プレインストールされたエミュレーターの設定メニューには素早くアクセスできるので、それぞれのパフォーマンスを好きなように変えられます。レトロゲームが画面に合わせて引き伸ばされるのがいやだと言う人もいれば、両サイドに黒いバーが表示されることを嫌う人もいます。PocketGo S30のカスタマイズ性に制限はなく、ただカスタマイズ性をメインに据えてはいないだけです。
遊べるのはPS1あたりまで、でも入門にはナイス

この1年半ほど中華ゲーム機市場をフォローしてきた人にとっては、PocketGo S30は新しいアイデアをもたらしています。ショルダーボタンの付け方は、他のハンドヘルドでも採用してほしいくらいです。それでもPocketGo S30は、最新にして最高のレトロゲームエミュレーターとはいえません。RAMが512MBしかないので、うまく扱えるゲームはファミコンからゲームボーイ、スーパーファミコン、メガドライブ、初代プレステくらいまでで、もっとパワフルなコンソールはエミュレートしきれません。他のエミュレーターはすでに、ドリームキャストやPSP、NINTENDO64までを取り回せるようになっています。
ROMファイルとかエミュレーターに抵抗がない人には、やっぱり価格と性能、プレイしやすさ、デザインのバランスが取れたAnbernic Retro Game 350Pをベストとしてお勧めします。でも60ドル(約6,300円)のPocketGo S30は、入門編としてはすごく良い選択肢です。使いやすさは大きな特長だし、これからもっと進化してパワフルになっていけば、次世代エミュレーターが出てくる中でも競争力を高めていけると思います。