業界人向けだけど、手が届きやすいのが魅力!
パイオニアが新しいDJモニタースピーカー「VM-80s」を発表したとき、これはうちのデスクオーディオのセットアップにピッタリだ...!と直感的に思ったんです。パイオニアといえば、硬派なスピーカーの名門ですし、この「VM-80s」は300ドル以下のスタンドアローンスピーカーで、どんな構成でも設置することができるといいます。
いざ蓋を開けてみると、私の直感が半分合っていて、もう半分は間違っていたことがわかりました。デスクトップスピーカーではなく、DJブースにふさわしいような巨大なスピーカーだったんです。
Pioneer VM-80

これは何:DJ、音楽プロデューサー向けの巨大なスピーカー
いくら:(1台あたり)289ドル(日本では税込み3万7400円)
好きなところ:低コストで音質が素晴らしい!
好きじゃないところ:とにかく巨大!
まず、「誰のためのスピーカーなのか」という疑問にアプローチしてみたいと思います。パイオニアはこの製品を"パワードスタジオモニター"として販売。アンプのほか、ちょっとしたデジタル処理能力を内蔵しています。スタジオモニターとは、音楽制作用に設計された頑丈で無駄のないスピーカーのことで、伝説のヤマハ「NS10M」のように、完全にフラットで正確な音を再生することを前提としています。
このスピーカーは明らかにスタジオモニターで、8インチのウーファーやスタンダードなトゥイーターを装備しています。低音域のレスポンスは素晴らしく、ミキシングデスクやコンピュータの近くに2台設置したときのステレオ投影も優秀なのがわかります。
こういうタイプのスピーカーは、大量の空気を動かします。それも、デスクが振動するのがわかるくらいに! テクノやジャズなど、さまざまなジャンルの曲を流してテストしてみたのですが、特にFleetwood Macの『Everywhere』は興味深かったです。というのも、これは高音と低音が絡み合った曲で、「タラタラタラタラ」というきらめくチャイム、リズムに疾走感のあるベース、シンセサイザーのホーンやスチールドラムなど、他のスピーカーでは(各レイヤーをうまく分離するのに苦戦して)コーラスに紛れてしまうような音も絶妙でした。
それに「VM-80」を使って音楽を流すと、我が家の屋根裏オフィスにDJブースを構えたような気分も味わえました。ほぼどの音量レベルでも素晴らしく、最大音量でも音が濁るようなことはなし。ニアフィールド用のスピーカーとして、小型のDJ用スピーカーと兼用することもできそうです。おそらく理想的な設置場所は、壁や窓から離れたスタンドの上で、頭の高さくらいの高さに置くことです。キーボードの近くや1.5m内の距離に置くと、結構な衝撃を感じることになります。個人的には中程度の音量にして近場で聴くのも好きでしたが、このままだと鼓膜が持たないぞとか思ったりしました。
このスピーカーがどんな人に向いているかというと、やはりDJやエレクトロニック系のミュージシャンといった業界人だと思います。ステージ用のスピーカーとしても使用できますが、ライブからライブへと持ち運ぶには(デザインやパッドの関係で)耐久性が危ぶまれるところかもしれません。ただ、ミキシングステーションの横に置いてオーディオマスタリングに使用したり、友人たちと即席の音楽ナイトを楽しんだりするといった使い方はできそうです。

「VM-80」はサウンドプロファイルをガラッと変えることができるのもポイントです。デジタルサウンドプロセッサー内蔵で、低音と高音に4つずつ設定があるので、完全にフラットにしたり、低域や高域を強調させたりすることができます。個人的には、フラットな高音と低音にグッときました。
最後に、注意すべきことがいくつか。たとえば「VM-80」はペアで販売されていないため、購入する際には左右のスピーカーにそれぞれ289ドルずつ支払うことになります。プラス、スタンド(ペアで約160ドル)を買うとなると、あっという間に800ドルという出費に...。
またXLR、PHONO、RCA対応で、アンプやパソコンに接続するには別途ケーブルが必要になります。アンプ内蔵なので、追加で何か気にする必要はないかもしれませんが、私はSchiit社のプリアンプに接続したのが最高に楽しめました。とはいえおそらく、この製品をチェックしている方はもうすでにセットアップを決めているというケースが多いかもしれませんね。
上記を踏まえたうえでもやはり、「VM-80」はリアルなスタジオモニターのように(そしてRadioheadを大音量で鳴らしても最高に気持ち良いほど)素晴らしく、手を伸ばしやすいスピーカーになっている印象があります。またパイオニアからは「VM-50」などの小型スピーカーも発表されていて、米Gizmodoでも近々レビューする予定です。